2026年10月14日水曜日

黒田長政と古代怪獣ゴモラ


     こんにちは! 博物館総館長の中野です。今度こそまじめにこのコーナーをやっていこうと思っていたのですが、なんと前回から半年以上も経ってしまいました。一旦書き始めるとどうしても長くなるので(根がお喋りなもので・・・)、それをやめて短めな文章を数多くアップするほうがいいのでは、というご意見もあります。そこで今回の「ひとりごと」は短く抑えて、あまり時間をかけずに次につなげたいと思います。 

    さて、この間に「楽史の集い(総館長の歴史講座)」も4回実施しているのですが、その報告も無しでした。申し訳ありません。言い訳にもなりませんが、ざっと整理しておくと、3月には「人名」は社会のかがみという関心から日本社会における「人名」の歴史を、5月には秀吉自筆の書状が企画展示室で紹介されることに因んで、文書のなかの「豊臣兄弟」、7月は特別展「幽霊・妖怪画コレクション」の会期中ということで、日本史上の幽霊や妖怪、特に鬼の話をしてみました。
7月25日開催の「楽史の集い」の様子(テーマ:江戸落語のなかの幽霊・妖怪)  

    そして、つい先頃が9月26日の「楽史の集い(総館長の歴史講座)」です。ここでは、国指定重要文化財の黒田長政着用「銀箔押一の谷形兜」をとりあげて、話をしてみました。博物館の企画展示室には旧藩主黒田家の名宝を紹介するコーナーがありますが、10月18日までここで長政の「銀箔押一の谷形兜」と「黒糸威胴丸具足」が展示されることを踏まえてのことです。黒田長政着用の兜としては、もう一点「大水牛の兜」として知られる「黒漆塗桃形大水牛脇立兜」が有名ですが、こちらも年明けに展示される予定ですので是非お見逃しなく。
9月26日開催の「楽史の集い」の様子(テーマ:黒田長政)、ガーデンテラスでの初開催となりました。 

    さて、この二つの兜には有名なエピソードがあります。一ノ谷形の兜(銀箔押一の谷形兜)はもともと、秀吉の子飼いとして知られた福島正則のものでした。或ることで福島正則と黒田長政は仲違いをしてしまうのですが、結局は和解することとなり、その証として互いの兜を交換することとなりました。こうして一ノ谷形の兜が長政に贈られ、長政は正則に大水牛の兜(黒漆塗桃形大水牛脇立兜)を贈りました。もっとも、オリジナルはそれぞれの手許に置かれ、精巧な写しが交換されたようです。それはともかく関ヶ原の戦いでは、福島正則が大水牛の兜で、黒田長政は一の谷形の兜で戦陣に臨んだようです。 

    今回の講座では「銀箔押一の谷形兜」の構造を簡単に紹介し、ついで朝鮮出兵時期や関ヶ原合戦前後の二人の関係について、思いつくままに話をしてみました。実は朝鮮出兵の時期、福島正則と黒田長政とはあまり接点をもっていません。兜の交換があったとしても、それは別の時期の可能性はなかったのだろうか、といった話題です。
重要文化財 銀箔押一の谷形兜
 
    それはそれとして、皆さんが意外に思われたのが、表題にあげた話題だったようです。古代怪獣ゴモラとは、テレビシリーズの「ウルトラマン」第26話・27話に登場する怪獣で、大阪城天守閣を粉砕するシーンがよく知られています。もちろん架空の怪獣ですが、無駄のない造形で人気を博し、以降のウルトラマンシリーズにも数多く登場しています。一億五千万年前の古代生物(ゴモラザウルス)の生き残りという設定で、長く強力な尻尾と頭部の左右に生えた角が特徴的です。名前の由来は旧訳聖書において神に滅ぼされた町の名に由来するという説と、ゴジラとモスラとラドンから一文字ずつとって付けられたという説があります。我々世代の人間からすると、理屈抜きに後者を推したいですね。最強感炸裂です。 
    横道にそれて怪獣ネタに進みそうなので、ここいらで表題の件に戻ります。その世界(どんな世界?)では結構有名な話なのですが、このゴモラの頭部は黒田長政の兜に着想を得たものといわれています。最近は大水牛の兜がモチーフになったという書かれ方をしているようですが、初期の資料には長政の兜というだけで、どちらの兜ということは書いてなかったように思います。確かに、左右二本の角ということで、大水牛の兜がベースになったのでしょうが、ゴモラの角が丸くなくむしろ平板であることは注意していいように思えます。これは勝手な妄想ですが、大水牛の兜と一の谷形の兜の合体アレンジによって、ゴモラの頭部が出来上がったのでは・・・ないでしょうか? 


重要文化財 黒漆塗桃形大水牛脇立兜

    いずれにせよ、黒田長政が着用した兜のデザインが怪獣のキャラクターデザインに影響を与えたことは事実ですし、その怪獣が大阪城天守閣を粉砕するわけです。黒田長政は大坂冬の陣には参戦していませんが、夏の陣には参加しており、その巡り合わせには興味尽きないものがあります。

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