2021年7月5日月曜日

社会科への恩返し /『わたしたちの福岡市』はこんな本

 市史編さん室の宮野です。今回は、先日から店頭に並び始めた『新修 福岡市史 ブックレット・シリーズ① わたしたちの福岡市 –歴史とくらし–』(以下 『わた福』)について、ご購入を検討されている方のご参考になればと思い、編集意図や活用方法について簡単にご紹介させていただきます。


※『わた福』の概要や目次についてはこちらを、販売元の梓書院のサイトはこちらをクリックしてご覧ください。

※福岡で活躍される著名人の方々にもご紹介いただきました。ありがとうございます。

 ・福岡テンジン大学の岩永学長によるご紹介はこちら

 ・『福岡路上遺産』などの著者・Y氏によるご紹介はこちら


1、子どもに地域の歴史を伝えるのは誰?

 市史編さん室では、当初、「市史ブックレット」の第一弾として、子ども向けの歴史本を考えていました。そこで、取り掛かりとして子どもたちと日常的に接している学校の先生の意見を聞くため、市教育センターを訪ねました。編さん室としては、歴史に対する子どもたちの関心度合いや表現上で気をつけた方が良いポイントなど聞こうと思っていたのですが、先生たちからは予想外の答えが返ってきました。それは、福岡市の先生たちが、近年は市外出身の人も多く、また、忙しいこともあり、郷土の歴史について、教材研究を十分に行えていないというものでした。子どもたちに福岡の歴史を伝える前に、先生をはじめとする大人の皆さんに知ってもらう必要があると私たちは痛感しました。こうして、ブックレットの第一弾は、子ども向けの本を作るという当初の方向性を改めて、学校の授業や家庭教育で使ってもらえるような内容を目指すことになりました。



先生たちに地域の歴史を知ってもらう方が先なのでは? 

た、たしかにそうですね。



2、学校での学習内容と市史の成果を結びつける

 まず、最初に取り掛かったのは学習指導要領の再確認です。近年の改訂で郷土教育の比重が高まったことは知っていましたが、具体的に各出版社の教科書と照らし合わせながら、各学年で学ぶ内容をおさらいしました。おおまかにいえば、3年生で市町村のこと、4年生で都道府県のこと、5年生で国のこと、6年生で政治や歴史のことを学ぶので、市史編さん室としては3、4、6年生で学ぶことの、歴史に関わる部分にターゲットをしぼって素材集めを始めました。例えば、「市の様子の移り変わり(3年)」では、『新修 福岡市史 特別編 自然と遺跡からみた福岡の歴史』の成果を使うことができました。また、「地域にみられる生産や販売の仕事(3年)」、「地域の安全を守る働き(3年)」、「県内の伝統や文化、先人の働き(4年)」、「県内の特色ある地域の様子(4年)」については、『新修 福岡市史 特別編 福の民』『新修 福岡市史 民俗編二』が大いに参考になることが分かりました。このようにして、社会科で活用できる内容を市史の過去の成果から抽出、整理する作業を続けていきました。


 

『民俗編二 ひとと人びと』大活躍の予感?



3、一般の読者の方にとっても分かりやすい工夫を

 今回の『わた福』は学校現場での活用を第一義的に考えていました。そのため、学校の先生たちにとっては何年生のどの単元なのかを素早く理解できるようにページの左側に学年と単元名を入れ、目次でも総覧できるようにしました。しかし、『わた福』は一般書籍としても流通させるため、書店で普通に手に取られた方にも楽しんでいただけるような構成にする必要もありました。そこで、学年・単元にとらわれない組み換えを行い、最終的な構成は、第1章「福岡らしさとは?」で市の対外的なイメージを、第2章「福岡という空間」で空間と時間的な移り変わりを、第3章「土地に刻まれた記憶」で地名、石碑、高低差、埋蔵文化財などについて、第4章「くらしといとなみ」では、生活インフラ、産業、様々な生業に携わる人びとの言葉を、第5章「興し、伝え、守る」では、過去・現在にわたって福岡をもり立ててきた人びとの事績を紹介し、第6章「福岡のあゆみ」で、人びとが暮らし始めてから現在にいたるまでの福岡の出来事を年表にまとめました。




アレをこっちにして、ナニをそっちですね。



4、「One more thing」を忘れずに

 一通り話を聞いたあとに、「実はもう一つとっておきがあるんだ」というオマケはとてもうれしいものです。『わた福』での「もう一つ」は、巻末付録の「ふくおか調べ物案内」のページです。この本だけでは紹介しきれなかった情報へ読者がアクセスできるように、福岡市の歴史を調べる上での参考文献を網羅的に集めました。調べてみて分かったのは、福岡市には地域単位で発行された記念誌類が思いの外多かったということです。ただ、これらの本は部数も少なく、関係者に配布されて終わりというものもあるので、新しくその地域に来られた方にも分かるように、図書館で閲覧できる本を中心に校区やジャンルごとにまとめました。ちょっとマニアックかも知れませんが、便利な資料集にしたつもりです。



 

      「One more thing…」 「Yeah!!!!!」



5、社会科への恩返し

 小学校で習う主要な教科の中で、社会科は地域のことやそこで暮らす人びとの営みを学ぶので、教材が全国一律にはならないという点で少し特殊です。だからこそ先生たちにとっては教材研究のやりがいのある面白い教科といえるかもしれませんが、負担が大きい教科であることも否定できません。今回の『わた福』は校区単位の細かいお話までは触れることはできませんでしたが、先生たちの授業の一助やご家庭での学習のお役に立てたらうれしいです。この本をきっかけとして、掘り起こされた地域の歴史が大人から子どもたちへと引き継がれ、将来の福岡のまちづくりの担い手が育っていくことを願います。歴史に携わる者として自分たちを育ててくれた社会科に少しでも恩返しができれば本望です。




おまけ

自主学習や自由研究のテーマ選びにこんな活用例はいかがでしょうか?

 ・「ふくおか校章マップ」(第1章)→ご近所の会社のマークを調べよう

 ・「昔の人が考えた未来」(第2章)→市の都市計画を調べてみよう

 ・「言い伝えのある樹木」(第3章)→ご近所の古い木のいわれを調べよう

 ・「地域のモニュメント」(第3章)→ご近所の石碑マップを作ろう

 ・「地名と歴史」(第3章)ご近所の電信柱に書かれた地名を調べよう etc.


本書を活用した子どもたちの研究成果がございましたら、市史編さん室までお気軽にお知らせください。