2018年11月5日月曜日

浄土九州展ブログ 西方に極楽あり その25 阿弥陀空港の話

9月15日に始まった浄土九州展もようやく最終日を迎えました。


おかげ様で2万人を越えるお客様にご覧いただき、感謝の気持ちでいっぱいです。個人的には奈良から両親が見に来てくれて少しばかり親孝行ができたのがよかったのですが、博多駅から博物館まで来るバスが分からず、よたよたの珍道中だったという話を聞くにつけ、父も母も老いたなあ・・としみじみ感じます。

今回は、人の死と直接関係する浄土教美術がテーマでした。お客様も両親と同じ年代の方が多く、やがてあの世に旅立つことを意識して見に来られた方も少なくなかったのではと思います。ギャラリートークでもそれを前提にいろんな話をしましたが、阿弥陀来迎図(らいごうず)の前では人を飛行機にたとえたこんな話をしていましたので、最後にご紹介しておきます。

人間は生まれたときは自分と他人の区別がつきません。だから世界と自分は一体で幸福なのです。でもやがて「パパ」「ママ」という言葉を覚えた瞬間に、おそらくは自分と他人との区別ができ、成長するとさらに多くの言葉を覚え、世界と自分はどんどん離れていきます。つまり存在として寂しくなるのです。寂しいから家族や恋人や友だちと関係(愛情でも憎しみでも)をつくらないと不安で生きづらいのです。スマホが手放せないのも、スポーツ観戦に熱狂して一体感を味わうのも同じことかもしれません。

生きるということは飛行機が離陸して大地と離れるようなものだから、そもそも不安定でいつ墜ちるかわからないような危険を潜在的に抱えていることになります。そして飛ぶ距離や高さは人それぞれでも、必ずその飛行機は燃料がつきて再び着陸するときがきます。
♪「当機はまもなく高度を下げ、最終の着陸態勢に入ります。いまいちどシートベルトをご確認ください・・」

そのとき暗闇や霧の中でも手動操縦で着陸できるといいのですが、誰もが初めての経験だし普通の人はそんなこと無理でしょう。そこで飛行機を空港に導く誘導灯や管制レーダーが必要になってきます。

念仏によって阿弥陀如来と結ばれるという浄土思想は、結局のところ「阿弥陀空港」の管制にすべてを任せて自動操縦で安全に着陸する、つまり安心して人生を終える一つの方法だと思うのです。もちろん空港は阿弥陀空港だけではなくキリスト国際空港や観音空港、ご先祖様空港などいろいろあるわけですが。

いずれにしても安全に着陸できることが分かっていれば、フライト(人生)も楽しくなりますよね。
てなわけで、5月から続けてきたこのブログもこれで最後です。恥をさらしていろいろ書きましたが、同業者をはじめ多くの方々から応援の声をいただきました。この場を借りてあつくお礼申し上げます。 m(_ _)m

Posted by: 末吉(浄土九州展担当学芸員)

2018年10月29日月曜日

浄土九州展ブログ 西方に極楽あり その24 とりあえず回るやつお願いします

浄土九州展では会場入口に奇妙なアイキャッチを設置しています。

西光寺の五趣生死輪図(ごしゅしょうじりんず)を立体化したもので、人が死んだあと5つの世界(天道・人道・畜生道・餓鬼道・地獄道)に生まれ変わるとする仏教の考え方、輪廻(りんね)をあらわしています。

たぶん日本初、自分で回せる五趣生死輪図
今回は、その輪廻を体験してもらおうと、無常大鬼(むじょうだいき)が持つ生死輪(しょうじりん)をお客さん自身に回してもらうことにしました。輪の下にはさりげなく赤い矢印が付いていて、自身の来世が占えるという趣向です。

「縁起でもない・・」と眉をひそめる向きもあるかと少し心配したのですが、皆さん案外明るく楽しんでいただいているようで、ギャラリートークでも「年末ジャンボ宝くじ!」とか言って笑いをとれるので重宝しています。

施工した某社長によれば新幹線で使うような高級ベアリング軸を仕込んだそうで、それはもう滑らかに回ってなかなか止まらないのが難点ですが(笑)、高速で回転する生死輪だけをじっと見つめたあと不意に視線を鬼の顔に向けると、こんなぐあいに鬼の顔がぐにゃりと歪む目の錯覚も楽しめます。

シュールな目の錯覚も味わえます
ところで、ギャラリートークで「自分が死んだらどうなると思いますか?」とお客さんに質問してみると、意外にも「生まれ変わる」より「すべて消えてなくなる」と答える方が多いようです。例えるなら台風がそのうち温帯低気圧になって雲散霧消するようなイメージでしょうか。輪廻は「人が死んだらどうなるの?」という問いに対する仏教側のひとつの答えですが、日本人の死生観も昔と今ではずいぶん変わってきているのを感じます(お坊さんも大変でしょう)。

ただ、思想信条的にはいろいろあっても人はいつか必ず死んでしまうのだし、いざというときに焦らないよう心の準備をしておくに越したことはないと思います。死から目を背けている人は夏休みに宿題を最後までほったらかして遊ぶ子どものようなものかもしれません。

浄土九州展もあと1週間を残すのみとなりました。まだご覧になっていない方は、とりあえず生死輪をぐるぐる回して「人生の宿題」について考えてみてはいかがでしょうか。
次回はいよいよ最終回!

Posted by 末吉(浄土九州展担当学芸員)

2018年10月26日金曜日

浄土九州展を見てお地蔵さんファンになった話

浄土九州展、11月4日(土)をもって終了となります。仏教に全く造詣の深くなかった私ですが、地獄の恐ろしさ、極楽の美しさ、心安らぐ仏の表情の魅力に触れ、仏教は面白い!もっと知りたい!という欲求がむくむくと・・。これも煩悩の一つでしょうか?

以前なんとなくわずらわしく思っていた仏事のあれこれも、展覧会を見てそういうことだったのか!と腑に落ちる部分が多くあります。

見所は様々ですが、もっとも印象に残っているのがみんな御馴染みお地蔵さまのことです。
地蔵菩薩坐像 福岡市 聖福寺蔵

道で良く見かけることからも、仏教美術界の中では親近感抜群のお地蔵様。子どもの守護尊としてあがめられています。親より先に死去した子どもは三途の川を渡れずに賽の河原で石を積むと言われ,地蔵菩薩は鬼から子供たちを守り、徳を与えて成仏へ導くとされています。

このことから、地獄絵の中にはお地蔵様の姿が描かれていることが多いです。

地獄図 佐賀県唐津市 浄泰寺蔵

その多くは、上図のように袖口を目元に当て、大変慈悲深い表情をされています。幼くして命を落とした子どもたちを憐れんでいらっしゃるのでしょう。

普段はこんな優しい表情のお地蔵様ですが、実はこわーい閻魔大王様と同一人物だという説があるのです!

浄土九州展では、勝福寺の閻魔王坐像と観世音寺の地蔵菩薩坐像を並べて展示しています。どちらも1メートルを超える大きな像で、実際に観ると圧巻です!


これが同一人物!?

弱きを助け、強きをくじくなんて、まるで遠山の●さんのようですね!ギャラリートークでこのことを聞いてから、お地蔵様を道で見かけるたび思わずじーっと見入ってしまうようになりました。

勝福寺の閻魔王坐像と観世音寺の地蔵菩薩坐像。この二体を同時に鑑賞できる機会も、これを逃したらなかなかないと思いますよ?会期終了目前!浄土九州展是非お見逃しなくご観覧ください♪

Posted by:たかむら(福岡市博物館広報)

2018年10月23日火曜日

【朗報!】福岡市博物館ミュージアムショップでLINE Payをご利用いただけるようになりました♪

みなさま、LINE Pay使っていますか?スマホ一つで買い物できて、大変便利な機能ですね。本日からついに、福岡市博物館1階ミュージアムショップでもLINE Payがご利用いただけるようになりました!



当館スタッフが、早速ショッピングにチャレンジ!購入するのは、人気の刀剣と金印の絵ハガキ。さて、無事に買うことができるのか?


“LINE Payをはじめる”から、支払開始!

お?1000円しか入ってない!
あれ?あまりにスムーズでうまく手順を追えませんでした・・・「簡単ですね・・!」とショップスタッフさんのコメント。


初心者でもこんなにお手軽に使いこなせるLINE Payは、常設展示室・企画展示室の入場料のお支払いにもご利用いただけます♪現在50%還元キャンペーン(10月末まで)も実施中ですので、是非この機会にご利用ください!



※半額分の残高は11月末頃にLINE Payアカウントに付与されます。

また、福岡市博物館のLINE@はもうご利用いただきましたでしょうか・・?プレゼント企画や、展覧会情報、キーワード応答等、徐々に追加していきますので是非友達追加よろしくお願いします♪

https://line.me/R/ti/p/%40fxa1414z
キーワードで話しかけてみてね♪

Posted by 広報

2018年10月22日月曜日

浄土九州展ブログ 西方に極楽あり その23 BOY MEETS HANIWA

個人的な思い出でたいへん恐縮ですが、この道(博物館業界)に進んだのは小学生の頃、家の近くの造成地で古墳時代の円筒埴輪(えんとうはにわ)の破片を拾ったのがきっかけでした。

考古学少年だったというのは人文系の学芸員としてはありがちですが、埴輪片を手に取ってみたときの印象が鮮烈で、家に持ち帰ってドキドキ(土器だけに・・)しながら毎日眺めていました(※考古遺物は法的には遺失物扱いなので勝手に持ち帰ってはいけません)。その後、近くの奈良県立橿原考古学研究所附属博物館にも通うようになり、12歳の時に初めて買った展覧会図録『特別展 葛城の古墳と古代寺院』(昭和56年10月発行)は、50歳が目前となった今でも大切に手元にとってあります。

『葛城の古墳と古代寺院展』と『浄土九州展』の図録

ちなみに、手元にとってあると言えば自分が小学3年頃から書いていた短編小説がいくつか残っています(母が断捨離で捨てそうになったので引き取ってきました)。
  
末吉武史作 短編小説集
その一篇『ふしぎな動物ミニミニ』には、末吉少年がダチョウのような動物ミニミニを追いかけて二上山(にじょうさん)の地下にある埴輪の王国に迷い込み、もぐらの穴から脱出し、埴輪たちと協力して考古博物館で展示されている(捕われている)埴輪を逃がす、というインディジョーンズみたいな物語がつづられています。しかし、いま読み返してみてもプロットがしっかりした生き生きとした短編で、この頃の才能は一体どこへ消えたのか?と悲しくなりますが、当時の末吉少年はよほど古墳とか埴輪にのめり込んでいたことがわかります。

それにしても、埴輪を手にしたあの時の不思議なトキメキの正体は何だったのでしょうか?たぶんそれは埴輪に触れることで1600年前の人々と繋がった、という驚きなのでしょう。今は興味の対象が考古遺物ではなく仏像に変わりましたが、「触れる」という直接的な体験は「見る」以上に人に大きな影響を与える場合があるようです。

浄土九州展でもそうした驚きを体験してほしいと思い、エピローグに日田市大超寺の「百万遍大念珠(ひゃくまんべんおおねんじゅ)」をさわれる展示にしています。1008個のクス珠を連ねた巨大な数珠を、10人で100回「南無阿弥陀仏」を称え(となえ)ながら回すと108万回念仏を称えた効果があるとされます。

江戸時代から現在までずっと使い続けられてきたもので、一珠ずつ江戸時代の念仏僧、徳本上人(とくほんしょうにん)の手になる六字名号(南無阿弥陀仏)と、寄進した人の名前が彫られています。会場に来られた方は、ぜひ静かに目を閉じてそっと触れてみてください。

日田大超寺の「百万遍大念珠」(撮影:松原社長)

一粒ずつ彫られた六字名号
Posted by 末吉(浄土九州展担当学芸員)

2018年10月15日月曜日

浄土九州展ブログ 西方に極楽あり その22 ギャラリートーク

今回の浄土九州展では毎週2回ギャラリートークをしています。週2でやると正直キツイし、何もそこまでやらんでもと思うのですが、見た目の無愛想さからは想像できないサービス精神と自分を追い込むMな性格をいかんなく発揮している仏像学芸員、といったところでしょうか。

ギャラリートーク中の仏像学芸員
ギャラリートークのいいところはお客さんに直接話すので、反応がダイレクトに伝わってくるところですね。こちらが面白いと思う学術的なことを語ってもポカーンとされるのですが、そこから少しピントをはずして話すと異様にウケたりする場合があります。

学芸員「何と、この阿弥陀様には歯があるんですよ!いいですねえ~。」というと、年配のお客さんたちは明るくゲラゲラ笑ってくださいます。歳をとらねば分からないことがいかに多いことか・・

そもそも学芸員はモノ(資料や作品)と、ヒト(社会)をつなぐのが仕事なので、人生で初めて博物館に来たというお客さんに対しても楽しんでもらえるよう、自分と社会のギャップを意識しておかねばなりません。特に、今回は人の死という問題に関わる浄土教美術がテーマ。お客さんの中には、がんで余命宣告を受けた方や大切な家族や友人を喪った方がいらっしゃるかも知れません。そんなお客さんにも来てよかったなあ、と思ってもらえるよう、あと6回展示室に立ちます。

僕は本来人前に出てしゃべるのが得意ではないし(緊張するんです!)、もちろん人間だからテンションが高いときも低いときもあって、トークの出来にはばらつきがあります。先日もお客さんから、「あのブログを書いているご本人ですか?」と尋ねられてしまいました。どうやらトークの内容が思ったより真面目でこのブログが醸し出すイメージとギャップがあったようです。

まあ、そういう逆のギャップも含めて楽しんでいただければ幸いです。。((^_^;)

Posted by 末吉(浄土九州展担当学芸員)

2018年10月10日水曜日

ふくおか歴史お宝カード:約120人が全種類コンプリートしたってよ!

ちょっと報告が遅くなってしまいましたが、4月末にスタートした「ふくおか歴史お宝カード」は、終了した8月までの約4ヶ月間でなんと約120人の方が全28枚をコンプリートしました!製作したカードは各1,000枚なので、なんと1割以上がコンプリートされている計算になります‼️😳

コンプリートした方には、博物館の特別展に1年間入場できる「ハイパー往来手形」を記念にお渡ししました。



この手形をお渡しするときにコンプリートされた方に話しを伺うすると、「ゴールデンウィークからこつこつ集めました」とか「最後の1枚がなかなか見つからなくて...」、「バスに乗っていくのが大変だった」といった熱心に取り組んでいただいた感想を聞くことができました。

この歴史お宝カードには、実際に史跡や関連の施設に足を運んでもらうという目的に加え、史跡周辺のバス路線の利用を促進するという目的もありましたので、ある程度目的は達成されたのかな?と思います。市内に散らばった史跡を探して歩くことで、参加された方の健康づくりにも役立ったのでは???

現在配布中の博物館広報誌facata112号にも関連記事が掲載されていますので、ぜひそちらもご覧くださいね。