2023年6月23日金曜日

【別冊シーサイドももち】〈042〉〔世界水泳2023福岡大会応援企画①〕スリルを楽しむ~百道の飛込台とハイダイビング~

    

埋め立て地にできたニュータウン「シーサイドももち」の、前史から現代までをマニアックに深掘りした『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』(発行:福岡市/販売:梓書院)。


この本は、博多・天神とは違う歴史をたどってきた「シーサイドももち」を見ることで福岡が見えてくるという、これまでにない一冊です。


本についてはコチラ


この連載では「別冊 シーサイドももち」と題して、本には載らなかった蔵出し記事やこぼれ話などを紹介しています。ぜひ本とあわせてお楽しみいただければ、うれしいです。



過去の記事はコチラ。

1(「よかトピアに男闘呼組がやってきた!」)
2(「ダンスフロアでボンダンス」)
3(「よかトピアの「パオパオ・ロック」とは。」)
4(「開局! よかトピアFM(その1)KBC岸川均さんが育てた音のパビリオン」)
5(「思い出のマッスル夏の陣 in 百道」)
6(「最も危険な〝遊具〟」)
7(「開局! よかトピアFM(その2)1週間の全番組とパーソナリティー」)
8(「ビルの谷間のアート空間へようこそ」)
9(「グルメワールド よかトピア」)
10(「元寇防塁と幻の護国神社」)
11(「よかトピアのストリートパフォーマーたち」)
12(「百道地蔵に込められた祈り」)
第13回(「よかトピアのパンドールはアジアへの入り口」)
第14回(「あゝ、あこがれの旧制高校」)
第15回(「よかトピアが終わると、キングギドラに襲われた」)
第16回(「百道にできた「村」(大阪むだせぬ編)」)
第17回(「百道にできた「村」(村の生活編)」)
第18回(「天神に引っ越したよかトピア 天神中央公園の「飛翔」」)
第19回(「西新と愛宕の競馬場の話。」)
第20回(「よかトピア爆破事件 「警視庁捜査第8班(ゴリラ)」現る」)
第21回(「博多湾もよかトピア オーシャンライナーでようこそ」)
第22回(「福岡市のリゾート開発はじまりの地?」)
第23回(「ヤップカヌーの大冒険 よかトピアへ向けて太平洋5000キロの旅」)
第24回(「戦後の水事情と海水浴場の浅からぬ関係」)
第25回(「よかトピアへセーリング! オークランド~福岡・ヤマハカップヨットレース1989」)
第26回(「本づくりの裏側 ~『シーサイドももち』大解剖~」)
第27回(「開局!よかトピアFM(その3)今日のゲスト 3~4月」)
第28回(「まだまだあった! 幻の百道開発史」)
第29回(「開局!よかトピアFM(その4)今日のゲスト 5~6月」)
第30回(「百道の浜に舞いあがれ! 九州初の伝書鳩大会」)
第31回(「開局! よかトピアFM(その5)今日のゲスト 7月」)
第32回(「聞き書きの迫力~西新小学校100周年記念誌を読む~」)
第33回(「開局!よかトピアFM(その6)今日のゲスト 8~9月」)
第34回(「百道を駆け抜けていった夢の水上飛行機」)
第35回(「開局!よかトピアFM(その7)ここでも聴けたよかトピア」)
第36回(「幻の「百道女子学院」と須磨さんの夢」)
第37回(「開局!よかトピアFM(その8)『今日もリスナーさんからおたよりが届いています』」)
第38回(「西新町209の謎を解け!~建物からたどるまちの歴史~」)
第39回(「「地球をころがせ」を踊ってみた ―「よかトピア」オリジナル音頭―」)
第40回(「映える写真が撮りたい!~百道とカメラとモデルの雑史~」)
第41回(「よかトピアでアジア旅 ― 三和みどり・エスニックワールドのスタンプラリー ―」)





〈042〉〔世界水泳2023福岡大会応援企画①〕スリルを楽しむ~百道の飛込台とハイダイビング~


「世界水泳2023福岡大会」の開催がいよいよ近づいてきました。

中継するテレビ朝日の「応援団」にはおなじみ博多華丸・大吉のお二方とともに、福岡出身の橋本環奈さんが就任され話題になるなど、段々と盛り上がりを見せてきています。

※ 世界水泳2023福岡大会についてはコチラをご覧ください。



今回の世界水泳2023福岡大会は、市内4か所の会場で開催されます。シーサイドももちもそのうちの1つで、ハイダイビングとオープンウォータースイミングという、屋外競技の会場となっています。

そこで、【別冊シーサイドももち】でも勝手に「世界水泳応援企画」をお届けしたいと思います。


* * * * * * *


着々と準備が進む地行浜

世界水泳2023のシーサイドももち会場は、主に地行浜にあります。ちょうど都市高速百道ランプ入口の裏あたりです。

現在は工事のために一部の海岸が閉鎖されていますが、その様子は周囲からも見ることができます。


○印の辺りで工事が進んでいるのが分かります。
そして周辺の人工海浜もだいぶ後退させているようですね。

会場の準備も徐々に整いつつあるようですが、まず目に付くのは何と言っても中央にある巨大な建造物です。

近づくとこんな感じ。
近くにいる人と比較すると、その大きさがよく分かると思います。


これは、ハイダイビングで使われる飛び込み台。「台」というか、もはや「塔」です。


近くで見ると、その高さがより実感できます。

工事現場に設置された看板より。
クレーンがある側が現在飛込台が建っている所です。


飛び込む先にはプールが掘ってあり、そこに着水します。このような高所から飛び込むのですから、安全のためにもある程度の深さが必要なんですね。

こうした工事が可能であることも、埋立地であるシーサイドももちが会場に選ばれた一因なのかもしれません。



ハイダイビングとはクレイジーな高飛び込み

皆さん、そもそも「ハイダイビング」ってご存知ですか? ここでちょっと競技についてご紹介したいと思います。

ハイダイビングとはその名の通り、高所から水中に向け真っ逆さまに飛び込む採点競技です。屋内プールで行われる「板飛び込み」や「高飛び込み」とは違う、もう一つの飛び込み競技で、基本的には屋外で行われます。

ほかにも既存の建造物(橋など)や断崖から飛び込む「クリフダイビング」という競技もあり、これはハイダイビングよりもさらにエクストリームスポーツとしての要素が強いものです。

ちなみにこれら2つの競技は主催するのは別の団体です(ハイダイビングは世界水泳連盟、クリフダイビングはあの「翼を授ける」レッドブル!)。

クリフダイビングの方は、2016年に和歌山県で日本で初めての世界大会が開催され、今年は「レッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2023」として、なんと宮崎県の高千穂峡で開催されるのだそうです。高千穂峡から命綱なしのダイブ…どう考えても怖い!!!


いずれの競技も常に危険が伴うので、選手の皆さんのトレーニングや技術、また運営の安全確保が他の競技よりもさらに大事になってくる競技といえそうです。

※「レッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2023」で盛りあがる高千穂町についてはこちらをご覧ください。

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レッドブル・ジャパン株式会社が主催する「レッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2023」、高飛び込みの世界選手権...
https://takachiho-kanko.info/news/15/



今回の世界水泳2023福岡大会では、先ほどの写真にあった地行浜の特設飛び込み台でハイダイビングが行われます。

その高さ、規定では女子は20m、男子はなんと27m!

しかも高飛び込みとは違い、飛び込んだ際の負傷を避けるために「足から着水する」のが決まり。知らなかった!


ちなみに27mという高さがどのくらいかというと、およそビルの9階くらいに相当します。

当福岡市博物館のグランドホールの天井高が約28mなので、ご来館になったことがある方は、それがどれほど高いか想像できるかと思います(伝われ!!)。


このように30m近い高さの飛び込み台が必要なことから、世界中でも常設の飛び込み台はオーストラリア(夏季のみ)と中国(通年)のわずか2か所。世界大会も国内ではほぼ行われていません。

今回の世界水泳2023でも日本からの出場は、招待枠として荒田恭兵さんただ1人です。

荒田さんは「日本で唯一のハイダイビング選手」として活動されています。

※ 荒田さんについてはコチラをご覧ください(ハイダイビング動画もあり!)。






百道にもあった飛込台

かつて、大正から昭和にかけて存在した「百道海水浴場」にも飛込台はありました。

ここに設置された遊具はどれも大型でちょっとスリルが過ぎるのですが、これについては以前こちらの記事でご紹介しました。

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なかなか旅行や里帰りなどが難しい昨今だけに、最近では屋外施設であるアスレチックやレジャープールの人気が高いようです...
http://fcmuseum.blogspot.com/2022/09/006.html



中でも飛込台は、開場当初から閉場するまで形を変えながら存在した人気遊具です。


(絵葉書「海水浴」より一部、福岡市史編集委員会所蔵)

上まで昇って何をするかって? もちろん飛び込むんだよ!!

これは浜からおよそ30mほど沖合に建てられたやぐらで、よく見ると上の方が飛込台になっています。

当時の新聞記事によれば、その高さは48尺(約14.5m)、36尺(約10m)、20尺(約6m)と種類があったとか(大正13年7月4日『福岡日日新聞新聞』朝刊3面「陸海の新装全く成って 百道浴場開く」より)

もちろん手すりも命綱もなく、しかも掴まるところもこんなに細い鉄筋では、実際昇ってみると写真で見るよりも高さを感じそうです。


そしてこのやぐらから飛び込む様子を捉えた写真がこちら。

(福岡市博物館所蔵)
美しいフォーム!

これは大正11(1922)年8月4日の『福岡日日新聞』夕刊に載った写真です。怖い物知らずがやぐらから勢いよく飛び込んでいますね…。

現代の感覚ではちょっと心配になる高さと無防備さなのですが、手前の人物は桟橋にでも腰掛けて、その様子をこともなげに眺めています。

このスリルもまた、人気の一つだったのでしょう。

ここまで高い飛込台はさすがに戦後には作られませんでしたが、それでも戦後の閉場まで、百道の沖合には飛込台が作られて、来場する海水浴客に人気の遊具だったようです。


* * * * * * *


今回はシーサイドももちで開催されるハイダイビングと、そのはるか昔に百道の夏の風物詩となっていた飛込台をご紹介しました。

ハイダイビングやクリフダイビングの歴史は古く、「ハワイの王たちが戦士たちに勇気を示すため、自ら崖に飛び込んだのが起源」(世界水泳2023福岡大会公式ホームページより)とのこと。別名「最古のエクストリームスポーツ」とも言われているゆえんです。

バンジージャンプがそうであるように、やはり「高い所から飛び込んでみたい、勇気を見せたい」という好奇心と、その恐怖を乗り越えた向こうにある(という)快感を求める心理は、今も昔も変わらないのかもしれませんね。


荒田さんのYouTubeより、東尋坊でダイブする荒田さん(上)と
大正10年、百道でダイブする様子(下)が完全に一致!!



【参考】

・ウェブサイト
 ・世界水泳2023福岡大会公式サイト(https://www.fina-fukuoka2022.org/)
 ・レッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2023(https://www.redbull.com/jp-ja/events/red-bull-cliff-diving-world-series-takachiho-japan)
 ・高千穂町観光協会「2023年3月27日 レッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2023 高千穂大会開催について」(https://takachiho-kanko.info/news/15/)
 ・荒田恭兵Twitter(https://twitter.com/i/events/1243829851305328640)

・新聞記事
 ・大正10年8月12日『福岡日日新聞』朝刊7面「水泳練習(昨日の百道海水浴場にて)」
 ・大正11年8月4日『福岡日日新聞』夕刊2面「百道海水浴場にて」
 ・大正13年7月4日『福岡日日新聞新聞』朝刊3面「陸海の新装全く成って 百道浴場開く」


#シーサイドももち #百道海水浴場 #飛込台 #世界水泳 #ハイダイビング #荒田恭兵 #レッドブル


Written by かみねillustration by ピー・アンド・エル  

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