2023年3月3日金曜日

【別冊シーサイドももち】〈027〉開局!よかトピアFM(その3)今日のゲスト 3~4月

埋め立て地にできたニュータウン「シーサイドももち」の、前史から現代までをマニアックに深掘りした『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』(発行:福岡市/販売:梓書院)。


この本は、博多・天神とは違う歴史をたどってきた「シーサイドももち」を見ることで福岡が見えてくるという、これまでにない一冊です。


本についてはコチラ


この連載では「別冊 シーサイドももち」と題して、本には載らなかった蔵出し記事やこぼれ話などを紹介しています。ぜひ本とあわせてお楽しみいただければ、うれしいです。



過去の記事はコチラ。

1(「よかトピアに男闘呼組がやってきた!」)
2(「ダンスフロアでボンダンス」)
3(「よかトピアの「パオパオ・ロック」とは。」)
4(「開局! よかトピアFM(その1)KBC岸川均さんが育てた音のパビリオン」)
5(「思い出のマッスル夏の陣 in 百道」)
6(「最も危険な〝遊具〟」)
7(「開局! よかトピアFM(その2)1週間の全番組とパーソナリティー」)
8(「ビルの谷間のアート空間へようこそ」)
9(「グルメワールド よかトピア」)
10(「元寇防塁と幻の護国神社」)
11(「よかトピアのストリートパフォーマーたち」)
12(「百道地蔵に込められた祈り」)
第13回(「よかトピアのパンドールはアジアへの入り口」)
第14回(「あゝ、あこがれの旧制高校」)
第15回(「よかトピアが終わると、キングギドラに襲われた」)
第16回(「百道にできた「村」(大阪むだせぬ編)」)
第17回(「百道にできた「村」(村の生活編)」)
第18回(「天神に引っ越したよかトピア 天神中央公園の「飛翔」」)
第19回(「西新と愛宕の競馬場の話。」)
第20回(「よかトピア爆破事件 「警視庁捜査第8班(ゴリラ)」現る」)
第21回(「博多湾もよかトピア オーシャンライナーでようこそ」)
第22回(「福岡市のリゾート開発はじまりの地?」)
第23回(「ヤップカヌーの大冒険 よかトピアへ向けて太平洋5000キロの旅」)
第24回(「戦後の水事情と海水浴場の浅からぬ関係」)
第25回(「よかトピアへセーリング! オークランド~福岡・ヤマハカップヨットレース1989」)
第26回(「本づくりの裏側 ~『シーサイドももち』大解剖~」)


※ 2023.4.28 一部タイトルを変更しました。





〈027〉開局! よかトピア(その3)今日のゲスト 3~4月


アジア太平洋博覧会の会場につくられたオープンスタジオのFM局「よかトピアFM(MOMO)」。

このブログでは、これまで(その1)で開局までを、(その2)で番組とパーソナリティーを紹介しました。


↓〈004〉「開局! よかトピアFM(その1)」


↓〈007〉「開局! よかトピアFM(その2)」



いろいろなゲストを迎えることで、番組が毎回違った楽しさを聴かせてくれるのが、ラジオの魅力のひとつですよね。

というわけで、今回はゲスト編です。


よかトピアFMにもたくさんのゲストが出演されたようです。

なかでもミュージシャンの出演が多く、これは作品リリースのプロモーションとして来福されて、在福メディアの1つとしてよかトピアFMを訪れたのだろうと思います。


なにせ、当時の福岡の民放ラジオ局はKBC・RKB・エフエム福岡くらいでしたし、よかトピアFMはイベント放送局とはいえ、多くの人口を抱える福岡都市圏で聴くことができて、番組の多くは若者や音楽好きをターゲットにしていました。

博覧会場のなかにある放送局という話題性もあって、プロモーション効果は大きかったのでしょう。

そうしたことからは、博覧会への注目ぶりや広告媒体としての期待度も見えてきそうです。


そういうわけで、今回ミュージシャンを中心にゲストを全部調べてみました(ちょっと詳しい番組名までは分からなかったのが多くて、そこは残念だったのですが…)。

ではさっそく。


(福岡市博物館蔵)
「よかトピアFM」のタイムテーブル(7~9月)


まずは開局した1989年3月から。


【3月】

01日 THE ALFEE

13日 勝誠二

21日 THE PEPPER BOYS

22日 ボーイ・ボーイズ

23日 松山千春

24日 麗美

26日 森高千里

28日 MICA


開局日の3月1日には、THE ALFEE(アルフィー)がご出演。よかトピア自体は3月17日開幕ですから、まだ会場に観客は誰もいない、それどころか、まだ会場づくりでFM局の周囲はバタバタだったころです。そんななかに、いきなりの豪華ゲストでした。このときのTHE ALFEEは、3月21日にアルバム『DNA  Communication』を出す直前(シングル『19 (nineteen』」「FAITH OF LOVE」を含む全13曲。LP盤は2枚組)。さらには、コンサートツアー「THE ALFEE with Jean Paul GAULTIER」を控えていました。このツアーはジャンポール・ゴルチエとコラボした異色のツアー。その初日は福岡国際センターでした(4月5日。全9か所で千秋楽は4月21日の東京ドーム)。


13日の勝誠二さんは福岡県のご出身。子供ばんどのベーシストをつとめられたのち、ソロデビューされました。デビューソロアルバム『YO-YO-YO』は1989年3月21日に発売されていますので、よかトピアFMへのご出演は、その1週間ほど前だったことになります。勝さんは今も作曲・編曲家やウクレレ奏者としてご活躍です。


THE PEPPER BOYS(ペッパーボーイズ)は80年代らしいポップバンド。ご出演の翌年にリリースしたアルバム『BREAK』は、強めのビートとギターサウンドにポップな歌詞がうまく乗っていて、個人的にはバンドブーム時代の隠れた名盤だと思っています(セカンドアルバム『PLEASE』もタイトでかっこいいですねー)。


ボーイ・ボーイズはよかトピアで活躍したアイドルグループ。連日のイベント・パレードで大人気でした。その活躍ぶりはまた今度あらためてご紹介しましょう。


23日にはまさかの松山千春さんがご登場。当日はFM局の前にたくさんのファンがつめかけて大変だったそうです。1989年だとALFAレコード時代。ご出演は4月25日にシングル『抱きしめたい』とアルバム『STANCE』の同時発売が近付いていたころでした。『抱きしめたい』はしっとりとした、おしゃれなアレンジの曲ですよね。


麗美さんは1988年に全曲英語のアルバム『SMOOTH TALK』を発売。これに収録された「SPEED OF LIGHT」でアメリカでもデビューされました。よかトピアFM出演時は、その次のアルバム『言葉のない友情』をリリース(3月1日)したばかり。その後、岩井俊二さんが監督した映画作品など映画・ドラマ音楽の制作でも有名です。


26日は森高千里さん。森高さんは俳優・タレントとあわせて、1987年にシングル『NEW SEASON』で歌手デビューされました。1989年2月25日に発売されたシングル『ストレス』は、ご自身で書かれたオリジナリティあふれる歌詞が話題に。印象的なCDジャケットやMVとも重なって、これ以降の作品の方向性を示すものになりました。ご出演は、この『ストレス』と次のシングル『17才』(5月25日発売)のあいだ。オリコン2位だったアルバム『非実力派宣言』の発売が7月25日ですから、どんどん注目度があがっているさなかのゲスト出演でした。


MICAは現在ジャズシンガーとしてご活躍の奥土居美可さん。奥土居さんは1988年にアルバム『MICA』でデビューされ、1989年4月には2枚目のアルバム『HOT COLORS』を発売されました。吉田拓郎さんの『人間なんて』をポップにカバーしたことでご記憶の方もいらっしゃるかもしれないですね。


(福岡市博物館所蔵)
『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』にも載せた、よかトピアFMのTシャツ。



では続いて4月です。


【4月】

03日 スターダストレビュー

05日 鈴木雄大

06日 MINNE

07日 NIGHT HAWKS

13日 横山輝一

14日 今井麻起子

17日 ZIG ZAG

18日 The TOYS

19日 蛎崎弘+"r"project

20日 CHAR(ピンククラウド)

21日 飯島真理

22日 リリー&スージー

23日 アンジー

24日 T-SQUARE

28日 加藤登紀子

30日 夏木マリ


4月3日はスタレビ。1981年デビューの人気・実力を兼ね備えた有名なグループですよね。出演されたのは、ツアー「Lookin’For You RENDEZ-VOUS」を3月に終えられ(福岡公演は1988年10月11日の福岡サンパレス)、シングルの『Northern Lights─輝く君に─』(2月25日発売)と『夏のシルエット』(5月25日発売)のちょうどあいだのころです。『Northern Lights─輝く君に─』はストレートなポップソング、『夏のシルエット』は夏らしい軽快なアレンジの曲でした。


鈴木雄大さんは1980年にシングル『ゴーン・ザ・サマー』でデビューされたシンガーソングライター。出演されたときは15枚目のシングル『君のハートが聴こえる』(3月1日発売)、アルバム『君のハートが聴こえる』(3月25日発売)を出されたころ。今聴くと、懐かしい音色とアレンジに、鈴木さんのさわやかな声がのっていて、とてもかっこいいです。まさに今再評価されているシティポップで、よかトピアFMの番組の雰囲気ともよく合ったのではないかと思います。


6日に出演されたMINNEさんは詳細が分からないままです…。CBSソニーに所属されていたと思うのですけど、もし詳しくご存知の方がいらっしゃいましたら、どうか教えてください。


NIGHT HAWKS(ナイト・ホークス)は1989年デビューのハードロックバンド。この年発売のアルバム『NIGHT HAWKS』は、雄大なハードロックサウンドと親しみやすい歌メロが特徴の作品です。


13日の横山輝一さんは1986年のデビュー。ご出演前の1989年2月1日にはシングル『BREAK OUT』とアルバム『YOU GOT IT!』をリリースされていました。この『BREAK OUT』はファンキーでタイトな名曲で、とてもかっこいいです(途中のピストル音が印象的)。このあと渡米されて、2年ほど活動を休まれたので、貴重な出演の機会になりました。


今井麻起子さんは1988年に松任谷正隆さんプロデュースでデビューされた歌手。ご出演の少し前には、アルバム『CANDY A GO GO!!』(3月1日発売)を出されています。このアルバムは、いっけんアイドルっぽいのですけど、楽器の細かいところまで行き届いたアレンジに、聴きやすいボーカルが心地よくて、今聴いても古さを感じない曲ばかりです。文化放送のラジオ番組『Teens'ブリブリCLUB』では、大西結花さん・中村由真さん・小沢なつきさんのあとをうけて、渡辺満里奈さんと一緒にパーソナリティをつとめられたので、当時はアイドル・タレント的な活動だったのだと思うのですけど、歌手としてもっとお声を聴きたかった方です。


17日のZIG ZAG(ジグザグ)は1985年にデビューしたバンドですが、1989年5月21日にアルバム『』を発売したあと、惜しまれながら解散してしまいました。歌詞をしっかり聴かせるバンドという印象があります。4月には最後のシングルになった『望郷』を出されていますが、こうやって振りかえると、よかトピアFMへの出演は活動末期の貴重な時間だったことになります。

ちなみにこの日は、ドラマ『ゴリラ・警視庁捜査第8班』の撮影日。よかトピアFM前での撮影もあって、いつにもまして賑わいました。ロケに来られた舘ひろしさん・仲村トオルさんは番組にもゲスト出演されています。

↓〈020〉「よかトピア爆破事件 「警視庁捜査第8班(ゴリラ)」現る」




18日ご出演のThe TOYSはロックバンド。5月1日にシングル『Do It All Again』とアルバム『The TOYS II』を控えたタイミングでの出演です。ボーカル・ギターの本田恭章さんがとても人気だったバンドでした。


蛎崎弘+"r"projectは、ソロでデビューされていた蛎崎弘さんと、安全地帯のギターリスト武沢豊さんが組んだグループです。1988年3月25日発売のシングル『邪魔はさせない』は、フジテレビのアニメ『F』(原作は六田登さん)のエンディングテーマにもなりました。出演の直前にはシングル『ノアールブルーの涙』をリリースされていて、吸い込まれるようなボーカルが印象的な曲でした。


(福岡市博物館所蔵)
「よかトピアFM」のシール。


20日はCHARさんがご登場。番組は平日13時の「NAGISA MUSIC PAVILION」でした(→007)。ご出演は自身が設立されたレーベル「江戸屋レコード」時代になります。1988年12月にアルバム『PSYCHE II』を発売され、次にミニアルバム『WHEN I WAKE UP IN THE MORNING』(1989年8月)を発売するあいだでのゲスト出演でした。


21日にご出演の飯島真理さんは、1983年デビューのシンガーソングライター。近年のシティポップ・ブームのなかでも必ずお名前があがる方です。デビュー前に、アニメ『超時空要塞マクロス』でアイドル歌手のリン・ミンメイ役の声優をつとめられ、主題歌『愛・おぼえていますか』を歌われたこともあって、デビュー時にはすでにそのお名前がよく知られていました。1987年には山下達郎さん・竹内まりやさんのレーベル「MOON RECORDS」に移籍され、アルバムを出されます。よかトピアFM出演時は、この「MOON RECORDS」からシングル『Still』を出される直前でした(4月25日発売)。ストレートで軽やかなサウンドと、それとは対照的な歌詞(男女の別れ)が心に残る曲です。このご出演の翌月には、アルバム『My Heart in Red』(5月10日発売)をリリース。このアルバムは、TOTOのジョセフ・ウィリアムズさん(ボーカル・キーボード)とジェフ・ポーカロさん(ドラム)、ネーザン・イーストさん(ベース)を迎えた意欲作です。出演番組は平日13時の「NAGISA MUSIC PAVILION」でした。


リリー&スージーはスウェーデンの姉妹デュオ。「Oh Mama」がヒットしました。1989年にはアルバム『LET US DANCE!A Remix Retrospective』を発売したり、『Robert And Marie』など数枚のシングルも発売しているのですが、この時なぜ来福されていたのか、事情が分からないままです(ひきつづき調査します…)。出演番組は土日の13時から放送していた「よかトピア Music Heat Wave」でした(→007)。


23日のアンジーはボーカルの三戸華之介(水戸華之介)さんがご出演。番組は土日13時の「よかトピア Music Heat Wave」でした。アンジーは山口県出身で福岡で活動していたバンドです。福岡市内のレコード店「JUKE RECORDS」の松本康さんのプロデュースのもと自主制作盤を発表したのち、上京してインディーズアルバムを発売。1988年5月21日にシングル『天井裏から愛を込めて』でメジャーデビューを果たしました。この時のご出演は、シングル『素晴らしい僕ら』(1988年12月16日発売)を経て、1989年4月21日にシングル『銀の腕時計』をリリースしたばかりのタイミングでの凱旋となりました。個人的には、JUKE RECORDSから発売された自主制作盤をカセットテープが伸びるまで聴きましたので、懐かしいお名前です。

※松本康さんが2022年9月28日に鬼籍に入られました。松本さんがいらっしゃらなければ、今福岡が音楽のまちと言われることはなかっただろうと思います。私のCD棚も1/3はJUKE RECORDSで買ったものです。心からご冥福をお祈りします。


T-SQUARE(スクエア)はインストゥルメンタルバンド。時期によってメンバーチェンジがありますが、ご出演時のメンバーは、安藤正容さん(ギター)・伊東たけしさん(サックス)・須藤満さん(ベース)・和泉宏隆さん(キーボード)・則竹裕之さん(ドラム)でしょうか。このときは1989年3月21日にアルバム『WAVE』を発売されていました。サックスの伊東さんは百道中学校・西南学院高校のご出身で、よかトピア会場の目の前で育ったという特別なご縁がありました。なお、出演されたのは平日13時の「NAGISA MUSIC PAVILION」でした。


28日は加藤登紀子さん。日本を代表するシンガーソングライターのお一人です。大ヒットしたシングル『百万本のバラ』は、1987年4月25日の発売(1986年発売のシングル『海辺の旅』のB面にも収録)。ご出演はシングル『18の頃―Chaz Maria―』を4月21日に発売されたタイミングでした。この年に紅白歌合戦出場、1988年と1990年にはニューヨークのカーネギーホールでコンサートもおこなわれていますので、充実した活動時期のなかでのご出演でした。出演された番組は、平日16時の「よかトピア Music Sky Walker」です。


30日は夏木マリさんがご出演。実は夏木さんは、よかトピアの開幕を飾ったミュージカル「HIMIKO」の主役でもあります。卑弥呼をモデルにしたオリジナルストーリーで、約1000人のキャストが出演した大がかりなこの舞台には、3月17日~30日の14日間(全25公演)で3万5400人の観客がつめかけました。この日は夏木さんの1か月ぶりの福岡へのお帰りを迎えた日になりました。夏木さんは今も斉藤ノヴさんとご一緒に精力的に音楽活動をされていて、かっこいいですよね。最近では橋本環奈さん・上白石萌音さんが主演された舞台『千と千尋の神隠し』の湯婆婆役が印象的でした。



数えてみると、3~4月だけでも24組のゲストを迎えています。

それもほとんどが、実は博覧会の別のステージに出演されるついでというわけではなく、ラジオ出演だけのために来場されていたようなのです。

どなたも大事なリリースのタイミングで、よかトピアFMをプロモーションの場に選ばれているように見えます。

そしてこれはミュージシャンだけですので、各番組へのゲスト自体となると、もっと多かったはずで…。


とてもすべてはご紹介しきれなかったので、5月以降はまた今度に。


【参考文献】

・『アジア太平洋博ニュース 夢かわら版'89保存版』((株)西日本新聞社・秀巧社印刷(株)・(株)プランニング秀巧社企画編集、(財)アジア太平洋博覧会協会発行、1989年)

・『アジア太平洋博覧会―福岡'89 公式記録』((株)西日本新聞社編集製作、(財)アジア太平洋博覧会協会発行、1990年)

・『radio MOMO よかトピアFMの記録』(FMよかトピア事務局、1989年)

・『よかトピアFMタイムテーブル』VOL1~3((財)アジア太平洋博覧会協会)


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Written by はらださとしillustration by ピー・アンド・エル


※ 2023.4.28 タイトルを変更しました。

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