2022年10月14日金曜日

【別冊シーサイドももち】〈009〉グルメワールド よかトピア

埋め立て地にできたニュータウン「シーサイドももち」の、前史から現代までをマニアックに深掘りした『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』(発行:福岡市/販売:梓書院)。


この本は、博多・天神とは違う歴史をたどってきた「シーサイドももち」を見ることで福岡が見えてくるという、これまでにない一冊です。


本についてはコチラ


この連載では「別冊 シーサイドももち」と題して、本には載らなかった蔵出し記事やこぼれ話などを紹介しています。ぜひ本とあわせてお楽しみいただければ、うれしいです。


過去の記事はコチラ。


1(「よかトピアに男闘呼組がやってきた!」)

2(「ダンスフロアでボンダンス」)

3(「よかトピアの「パオパオ・ロック」とは。」)

4(「開局! よかトピアFM(その1)KBC岸川均さんが育てた音のパビリオン」)

5(「思い出のマッスル夏の陣 in 百道」)

6(「最も危険な〝遊具〟」)

7(「開局! よかトピアFM(その2)1週間の全番組とパーソナリティー」)

8(「ビルの谷間のアート空間へようこそ」)

※ 2023.4.28 一部タイトルを変更しました。




〈009〉グルメワールド よかトピア


福岡はラーメン・水炊き・もつ鍋・海鮮・うどん・焼き鳥(とり皮や豚バラ)・パン・餃子などなど、グルメのまち

福岡の味を求めて観光に訪れる人も多いですよね。


最近ではカレー店の激戦区にもなってます。

ひと昔(ふた昔?)の福岡のカレー店といえば、ナイル・湖月・Kサムソンが定番の人気店でしたが(3店とも閉店してもなお、いろいろな形で味が継承されています)、ここ数年でスパイスカレーを出すお店がどんどん増えて、まちでカレー待ちの行列を見かけることも珍しくなくなりました。

カレーに限らず、市内には各国のエスニック料理店もたくさん。


よかトピアをやっていた1989年だと、市内にエスニック料理店はまだ少なく、本場の味を楽しみによかトピアを訪れる人も多かったようです。

会場ではほかにも当時の福岡グルメがたくさん並んでいました。

おでかけの楽しみの1つといったら、食べ物ですものね。


というわけで、今回はそんなよかトピアのグルメについて調べてみました。


よかトピアの会場には、食堂街ともいえるグルメワールドに約1000席があって、そのほか各パビリオン内のレストラン、ホットスナックやジュース類のテイクアウト店もあわせると、約1950席で食事が楽しめました(1日3万食の供給力)。


グルメワールドは人工の川に面した2つの横長い建物。

目立つ屋根の形は、インドネシアやタイの建物をイメージしながらつくったものでした。

場所はここ。

(市史編さん室作成)
赤い部分がグルメワールド。


(福岡市博物館所蔵パネル)
川に面していて、なんとなくアジア感も増します。


(西日本新聞社編『アジア太平洋博覧会―福岡'89公式記録』
〈アジア太平洋博覧会協会、1990年〉より)

建物はこんな感じ。


このグルメワールドには14店舗が入っていました。

どのお店に入ろうかなとメニューを眺めてる感じで、主な料理と値段をざっと見てみます。



エスニックレストラン・スリランカ(60席)

ここは『シーサイドももち』の「誌上よかトピア体験」(当時の記録にもとづいて、よかトピアで1日遊んでみたコーナー)でも紹介したお店です(125ページ)。野菜以外の食材はスリランカから輸入したもので、厨房スタッフもスリランカ出身の方々。カレーは本場の辛めの味付けで、ルー・肉・野菜が分けて盛りつけられているのが当時は珍しがられたのだとか。まだあまり知られていなかったゴダンバが人気になりました。

 カレーセット 800円~ ゴダンバ 300円など


ナーナック(60席)

ナーナックは当時福岡市内では数少ないエスニック料理を味わえたインド料理店(今も親不孝通りの入り口の目印になっています)。よかトピアで提供されていたタンドリーチキンなどは、どれも本場インドの味で大人気でした。店長のグルビール・シンさんはパビリオン「アジア館」のなかにもお土産店を出されていて、その流ちょうな日本語で来場者を迎えていらっしゃいました。エスニックレストラン・スリランカとならんで、アジア太平洋をテーマにかかげたよかトピアを象徴するレストランです。

 タンドリーチキン 1000円 ニューデリーセット 1500円など

(福岡市博物館所蔵)
ナーナックの半券です。
ニューデリーセットを食べたんですね~。
(多分、博覧会のスタッフ……)

そうそう、言い忘れました。

よかトピアの最中に、消費税(3%)が導入されています(1989年4月1日)。

なにしろはじめての消費税、それも会期の途中からということで、事前に会場内の営業店が集まって講習を受けたり、対応に苦労されたようです。

ただ混乱を避けるために、実質値下げをして内税扱いにした店が多かったとのこと。

そういうわけですので、ここでの値段もちょっとずれがあるかもしれませんが、どうかお許しください。



韓国料理 食道園(60席)

カルビにライス・えごまの葉のみそ漬け・キムチ・ナムル・わかめスープがついた焼肉定食が人気でした。ランチの時間だけはバイキング形式だったそうです。食道園といえば、大阪万博(1970年)に出店していたお店をすぐに思い出すのですが、残念ながら同じ店かどうかまだ確認ができていません(どなたか教えてください…)。

 焼肉定食 1000円 韓国定食 1000円 チゲ鍋 500円 クッパ 600円など


ロイヤル・フード・コート(260席)

福岡の老舗レストラン、ロイヤルは、よかトピアのためにエスニックメニューを用意しました。サテは、ラムなら2~3時間、チキンなら5~6時間タレにつけ込んでから焼いたもので、本場と同じようにピーナッツソースがついてきました。ただ味は本場に比べると甘めに仕上げられていたそうです。「アセアンプレート」は、マレーシアのサテ、フィリピンのヒープンギサド、インドネシアのナシゴレンのセットで、ランチの人気メニューでした。マレーシアの副国王も来場の際に、ここに立ち寄られたのだとか。

 サテ(チキンorラムの2本) 300円 アセアンプレート 1300円 ガイヤーン 900円など


洋麺屋 ピエトロ(120席)

これまた福岡の老舗レストラン、ピエトロ。トマト・しょうゆ・クリームの3種類からソースを選んで、それに好きな具材を組み合わせるパスタが人気でした。

 パスタ 650~1200円 サラダ 300円~など



ここまでが海外の味。ここからのお店は福岡と日本の味です。



博多一番(150席)

福岡のうどんに加えて、梅ヶ枝餅も出していました。うどんが300円から食べられるのはうれしいですよね。ただ「祭うどん」が名前からして謎メニューでして…、現在調査中です(具だくさんでワッショイってことなのでしょうか??)。

 うどん 300円~ 祭うどん 800円 梅ヶ枝餅 100円など


そば茶屋文六(40席)

天神・西新など福岡市内にいくつかお店を出していた文六そば。よかトピアでも、文六のうどん・そば・丼物を食べることができました。白いつるつるしたそばが人気のお店です。このブログを書くにあたって、博多駅のデイトス店が2022年8月20日に閉店したと知って驚いています…。

 うどん 330円~ 丼物 500円~ 割子そばセット 600円~など


まあちゃんうどん(40席)

会場の最寄り駅、地下鉄西新駅近くのうどん店。よかトピアの地元、西新中央商店街で長年愛されていたお店でした。

 うどん 300円~など


蔵前(40席)

うどん・丼物・カレー・かき氷などを提供していたお店です。人気だった「ちゃんこうどん」はえび・牛肉・ミンチボール・椎茸・白菜・ねぎ・かまぼこが入った、ボリューム満点でした。蔵前は、1975年に大濠公園で開催された「新幹線開通記念 福岡博」にも出店したことがあります。

 ちゃんこうどん 600円 うなぎ丼 800円 天丼 600円 かき氷 200円など


すみ田(40席)

豚骨ラーメン1杯400円という値段の安さが1989年を感じさせますよね。西中洲の国体通り沿いのお店でした。

 ラーメン 400円など


名代(なだい)ラーメン亭(40席)

漫画『クッキングパパ』や小説『君の膵臓をたべたい』にも登場する福岡の有名店。学生時代に天神でバイトしていたときには、今はなきビブレ店に毎日のようにお世話になりました…。ちなみに、『君の膵臓をたべたい』の映画版では、主人公は箱崎の屋台「花山」でラーメンを食べていました。こちらも美味しいお店です。

 ラーメン 350円 チャンポン 500円など


ソーセージハウスWai Wai(40席)

ハンバーガーやソーセージのファストフード店。ソーセージはホワイトソーセージ(プレーン?)やエスニックソーセージ(カレー味)をチャパティに包んでいたようです。

 ソーセージ 値段不明 ステーキバーガーランチ 1000円など


カレーやさん(20席)

カレー専門店なのですが、詳細が不明で調査を継続中です…。

 カレー 600円など


第一玉家寿し(20席)

現在は福岡空港国内線旅客ターミナルビルにある老舗。飛び立つギリギリまで長浜の市場直送の海鮮を楽しめる人気店です。よかトピアのときの特別メニューは「鴻臚館ちらし」。エビやイイダコなど具だくさんで、容器は鴻臚館跡出土の青磁花文碗をイメージしたものになっていました。このお店も1975年の「新幹線開通記念 福岡博」に出店した、博覧会経験のあるお店でした。

 鴻臚館ちらし 1100円 にぎりずし 900円 はかたキャビア(大) 1100円など



あらためてこう見てみると、値段は思ったよりもリーズナブルです。

ただ、今ならもっとエスニック料理のバリエーションが増えそうですよね。

ちょっと物足りない…。

でもよかトピアから福岡とアジアとの交流がさかんになっていくことを考えれば、これがいろいろな国の食が集まる1つのきっかけだったのかもしれませんね。


福岡の味もそうで、このときはうどん・ラーメン・海鮮が中心。

今なら絶対並ぶだろう最初にあげたような福岡グルメが見当たらないのですが、もつ鍋でさえ全国で流行って流行語にノミネートされるのが1992年のことですから、1989年だと無理もないのでしょう。

まだまだこのときの福岡グルメは出張先の楽しみの1つで、観光の目玉になるのはもう少し後ということなのでしょうね。


(福岡市博物館所蔵)
事前に共通の食事券(ミールクーポン)を買うことができました。


今回はグルメワールドだけでしたが、よかトピアのグルメは、パビリオン内のレストランやテイクアウト店など、ほかにもユニークなものがたくさんありました。

パビリオン・食べ歩き編はまた今度に。



【参考文献】

・『アジア太平洋博ニュース 夢かわら版'89保存版』((株)西日本新聞社・秀巧社印刷(株)・(株)プランニング秀巧社企画編集、(財)アジア太平洋博覧会協会発行、1989年)

・『アジア太平洋博覧会―福岡'89 公式記録』((株)西日本新聞社編集製作、(財)アジア太平洋博覧会協会発行、1990年)


#シーサイドももち #アジア太平洋博覧会 #よかトピア #グルメ #うどん多すぎない?

 

Written by はらださとしillustration by ピー・アンド・エル]


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