2022年10月28日金曜日

【別冊シーサイドももち】〈011〉よかトピアのストリートパフォーマーたち

埋め立て地にできたニュータウン「シーサイドももち」の、前史から現代までをマニアックに深掘りした『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』(発行:福岡市/販売:梓書院)。


この本は、博多・天神とは違う歴史をたどってきた「シーサイドももち」を見ることで福岡が見えてくるという、これまでにない一冊です。


本についてはコチラ


この連載では「別冊 シーサイドももち」と題して、本には載らなかった蔵出し記事やこぼれ話などを紹介しています。ぜひ本とあわせてお楽しみいただければ、うれしいです。


過去の記事はコチラ。

1(「よかトピアに男闘呼組がやってきた!」)

2(「ダンスフロアでボンダンス」)

3(「よかトピアの「パオパオ・ロック」とは。」)

4(「開局! よかトピアFM(その1)KBC岸川均さんが育てた音のパビリオン」)

5(「思い出のマッスル夏の陣 in 百道」)

6(「最も危険な〝遊具〟」)

7(「開局! よかトピアFM(その2)1週間の全番組とパーソナリティー」)

8(「ビルの谷間のアート空間へようこそ」)

9(「グルメワールド よかトピア」)

10(「元寇防塁と幻の護国神社」)

※ 2023.4.28 一部タイトルを変更しました。



〈011〉よかトピアのストリートパフォーマーたち


よかトピアでは、毎日会場のいろんな場所で同時にイベントをおこなっていました(その数の多さから、当時はイベント博と呼ばれたほど…)。

その時間・その場所だけの体験を大事にしていたよかトピアでは、一見通路や空地に見えるような場所も、イベントを楽しむメーンパビリオン「ひろば」として設計されています。


主な「ひろば」は3つ。

大きな駐車場側につながる東ゲート前の「東広場」、福岡タワー前の「であいの広場」、観覧車があるプレイゾーン近くの「こども広場」です。

(市史編さん室作成)

この3つの「ひろば」では、朝から晩まで、入れかわり立ちかわりショーがおこなわれていて、パビリオンを移動する途中に偶然通りがかり、つい足をとめて見入ってしまう人も多かったようです。


なかでも、「東広場」「であいの広場」でのストリートパフォーマンスが人気でした(いっぽうの「こども広場」はこどもが楽しめるショーが多かったのですが、この話はまたの機会に)。

今回は会場を毎日盛り上げていた、よかトピアのストリートパフォーマーたちのご紹介です。



スパークルズ(3/17~3/19)

よかトピアのスタートを盛り上げたアメリカのパフォーマーです。お客さんからのリクエストにこたえて、風船で動物などをつくるバルーンアートを披露しました。



ロバート・ネルソン さん(3/17~5/14)

アメリカのサンフランシスコからやってきたネルソンさんは、お医者さんなのですが、インターナショナル・ジャグラーズ・アソシエーション(IJA)に参加するほどの技をもつプロのパフォーマー。「人をハッピーにするのが好き」というネルソンさんのジャグリングショーは、観客を巻き込んで、毎回ユーモアにあふれたものでした。


(西日本新聞社編『アジア太平洋博覧会―福岡'89公式記録』
〈アジア太平洋博覧会協会、1990年〉より)



メルビン・プラマー さん(4/12~5/14)

プラマーさんはイギリスのご出身。ブレイクダンスでこどもたちの人気者になりました。なかでもヘッドスピンは、大拍手間違いなしの得意技でした。

(西日本新聞社編『アジア太平洋博覧会―福岡'89公式記録』
〈アジア太平洋博覧会協会、1990年〉より)



ダニー・ヒグネット さん(4/29~6/4)

イギリス出身のヒグネットさんは、黒いハットとジャケットに、ハイカットのオールスターを履いたスタイリッシュな出で立ち。一輪車の世界チャンピオンであるヒグネットさんの技には、誰もが驚きました。そのいっぽうで、熊のぬいぐるみを使ったかわいいショーも披露するなど、緩急のある構成で観客を飽きさせないパフォーマンスでした。

(西日本新聞社編『アジア太平洋博覧会―福岡'89公式記録』
〈アジア太平洋博覧会協会、1990年〉より)


ストリートパフォーマンスの時間はだいたい1回30分弱なのですが、それを1日に3~4回やっていました。

たとえば、このブログの第1回で紹介した男闘呼組のコンサートの日(→〈001〉よかトピアに男闘呼組がやってきた!)、5月6日(土)の「であいの広場」のスケジュールはこんな感じです。

 ロバート・ネルソンさん 11:00 13:00 14:30

 メルビン・プラマーさん 11:30 13:30 15:00

 ダニー・ヒグネットさん 12:30 14:00 15:30

3人が次々と入れ替わりながら常にショーがおこなわれていて、その頻度にびっくりします。

ちなみに翌日の5月7日(日)は、場所を「東広場」にかえ、さらに1人1回ずつ増やして、1日4回(×3人)もパフォーマンスしています…(今さらながらですが、パフォーマーのみなさん、本当にお疲れさまでした)。



ロブ・ソロフィア さん(6/6~6/18)

ソロフィアさんはアメリカのご出身。ナイフやクラブを使ったジャグリングに加えて、パントマイムタップダンスマジックも披露する多彩なプログラムでした。6月12日(月)には、リゾートシアターでもその技を見せてくれました。



バラエティ・イン・モーション(6/30~7/12)

アメリカ出身のマーディーンさんとリックさんのコンビです。覚えたばかりの博多弁で観客の笑いを誘いながら、コンビならではの迫力のある合わせ技を見せてくれました。

(西日本新聞社編『アジア太平洋博覧会―福岡'89公式記録』
〈アジア太平洋博覧会協会、1990年〉より)


ブルース・ジーン・スミス さん(7/6・19・26)

アメリカ出身のスミスさんのパフォーマンスは、1人でギター・ドラム・ハーモニカなどを同時に演奏する「ひとりオーケストラ」。3日間だけのパフォーマンスでしたが、独自のスタイルで記憶に残るショーになりました。



ラジャスタンの人形劇(7/13~9/3)

書籍『シーサイドももち』の「誌上よかトピア体験」でも紹介したラジャスタンの人形劇(124ページ)は、インドのラージャスターン地方に伝わる操り人形の演劇です。ナトゥ・ラム・ボーパさんが演奏する民族楽器「ラーヴァナハッタ(ラヴァンハッタ)」の音と、テジャ・ボーピさん(ナトゥさんのお母さん)の歌にあわせて、ラジ・クマール・バットさんが、糸を使って人形を動かしました。踊り子・蛇使い・音楽師の人形が登場して、かつての宮廷の宴の様子をユーモラスに演じました。

(西日本新聞社編『アジア太平洋博覧会―福岡'89公式記録』
〈アジア太平洋博覧会協会、1990年〉より)


ジョン・リー さん(8/10~8/20)

イギリス出身のリーさんは、よかトピアの3年前くらいから世界中を旅してパフォーマンスをしていたのだとか。綱渡り・背の高い一輪車・はしご歩きなど、見ていてドキドキするような技を、覚えたての日本語でのおしゃべりやジョークで楽しく見せてくれました。



「東広場」「であいの広場」は、オープンスペースのパビリオンとして毎日こうした楽しいショーを披露し、会場を行きかう人びとは、それに思わず足を止めました。

開催にあたっての基本構想は、よかトピアをいろいろな「みち」を通って人や物が「であい」、未来をつくるエネルギーを生みだす場所(「ひろば」)とうたっています。

会場内のオープンスペースでかわされるパフォーマーと観客との会話や笑顔や拍手は、そういうよかトピアの構想を象徴する光景になっていました。




【参考文献】

・『アジア太平洋博ニュース 夢かわら版'89保存版』((株)西日本新聞社・秀巧社印刷(株)・(株)プランニング秀巧社企画編集、(財)アジア太平洋博覧会協会発行、1989年)

・『アジア太平洋博覧会―福岡'89 公式記録』((株)西日本新聞社編集製作、(財)アジア太平洋博覧会協会発行、1990年)


#シーサイドももち #アジア太平洋博覧会 #よかトピア #ストリートパフォーマンス #ジャグラー

 

Written by はらださとしillustration by ピー・アンド・エル]


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