2023年8月4日金曜日

【別冊シーサイドももち】〈048〉〔世界水泳2023福岡大会応援企画③〕世界水泳観戦記録 in シーサイドももち

         

埋め立て地にできたニュータウン「シーサイドももち」の、前史から現代までをマニアックに深掘りした『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』(発行:福岡市/販売:梓書院)。


この本は、博多・天神とは違う歴史をたどってきた「シーサイドももち」を見ることで福岡が見えてくるという、これまでにない一冊です。


本についてはコチラ


この連載では「別冊 シーサイドももち」と題して、本には載らなかった蔵出し記事やこぼれ話などを紹介しています。ぜひ本とあわせてお楽しみいただければ、うれしいです。



過去の記事はコチラからご覧ください。

1(「よかトピアに男闘呼組がやってきた!」)
2(「ダンスフロアでボンダンス」)
3(「よかトピアの「パオパオ・ロック」とは。」)
4(「開局! よかトピアFM(その1)KBC岸川均さんが育てた音のパビリオン」)
5(「思い出のマッスル夏の陣 in 百道」)
6(「最も危険な〝遊具〟」)
7(「開局! よかトピアFM(その2)1週間の全番組とパーソナリティー」)
8(「ビルの谷間のアート空間へようこそ」)
9(「グルメワールド よかトピア」)
10(「元寇防塁と幻の護国神社」)
11(「よかトピアのストリートパフォーマーたち」)
12(「百道地蔵に込められた祈り」)
第13回(「よかトピアのパンドールはアジアへの入り口」)
第14回(「あゝ、あこがれの旧制高校」)
第15回(「よかトピアが終わると、キングギドラに襲われた」)
第16回(「百道にできた「村」(大阪むだせぬ編)」)
第17回(「百道にできた「村」(村の生活編)」)
第18回(「天神に引っ越したよかトピア 天神中央公園の「飛翔」」)
第19回(「西新と愛宕の競馬場の話。」)
第20回(「よかトピア爆破事件 「警視庁捜査第8班(ゴリラ)」現る」)
第21回(「博多湾もよかトピア オーシャンライナーでようこそ」)
第22回(「福岡市のリゾート開発はじまりの地?」)
第23回(「ヤップカヌーの大冒険 よかトピアへ向けて太平洋5000キロの旅」)
第24回(「戦後の水事情と海水浴場の浅からぬ関係」)
第25回(「よかトピアへセーリング! オークランド~福岡・ヤマハカップヨットレース1989」)
第26回(「本づくりの裏側 ~『シーサイドももち』大解剖~」)
第27回(「開局!よかトピアFM(その3)今日のゲスト 3~4月」)
第28回(「まだまだあった! 幻の百道開発史」)
第29回(「開局!よかトピアFM(その4)今日のゲスト 5~6月」)
第30回(「百道の浜に舞いあがれ! 九州初の伝書鳩大会」)
第31回(「開局! よかトピアFM(その5)今日のゲスト 7月」)
第32回(「聞き書きの迫力~西新小学校100周年記念誌を読む~」)
第33回(「開局!よかトピアFM(その6)今日のゲスト 8~9月」)
第34回(「百道を駆け抜けていった夢の水上飛行機」)
第35回(「開局!よかトピアFM(その7)ここでも聴けたよかトピア」)
第36回(「幻の「百道女子学院」と須磨さんの夢」)
第37回(「開局!よかトピアFM(その8)『今日もリスナーさんからおたよりが届いています』」)
第38回(「西新町209の謎を解け!~建物からたどるまちの歴史~」)
第39回(「「地球をころがせ」を踊ってみた ―「よかトピア」オリジナル音頭―」)
第40回(「映える写真が撮りたい!~百道とカメラとモデルの雑史~」)
第41回(「よかトピアでアジア旅 ― 三和みどり・エスニックワールドのスタンプラリー ―」)
第42回(「〔世界水泳2023福岡大会応援企画①〕スリルを楽しむ~百道の飛込台とハイダイビング~」)
第43回(「〔世界水泳2023福岡大会応援企画②〕大海を泳ごう~かつての遠泳、いまはオープンウォータースイミング~」)
第44回(「百道海水浴場はどこにある?」
第45回(「2100年のパナコロニーからPAF522便に乗船したら、こうなった―よかトピアの松下館(1)―」
第46回(「百道テント村100年 大解剖スペシャル!」)
第47回(「トラジャのアランとコーヒーと ―よかトピアのウェルカムゲートはまるで宙に浮かんだ船―」)






〈048〉〔世界水泳2023福岡大会応援企画③〕世界水泳観戦記録 in シーサイドももち


7月14日に開幕した世界水泳2023福岡大会も、30日の競泳決勝と閉会式をもって無事閉幕。現在は8月2日から世界マスターズ水泳選手権2023九州大会が始まっています。

シーサイドももち地区では、以前こちらのブログでもご紹介した世界水泳2023福岡の「オープンウォータースイミング」と「ハイダイビング」に続き、マスターズでも8月2日と3日に「オープンウォータースイミング」(男女3㎞)が行われました。


【別冊シーサイドももち】では過去2回、〔世界水泳2023福岡大会応援企画〕と題して、今回の世界水泳とシーサイドももちの歴史についてご紹介しています。


※〔世界水泳2023福岡大会応援企画〕についてはコチラをご覧ください。


今回はこれらを踏まえて、実際に地行浜で行われた競技の様子を「シーサイドももちの最新の歴史の一部」としてお伝えできればと思います!

※ 今回はあまりお古いお話はありませんので、あしからず…。




オープンウォータースイミングを観戦する

オープンウォータースイミング(OWS)は前回の2001(平成13)年世界水泳でも行われた競技です(→〈043〉

今回は一般の観戦エリアがないため、なんとか見られるところはないかと探した結果、会場の近く、地行浜と百道浜をつなぐなぎさ橋と向かい側の百道浜から観戦することに

7月18日(火)、朝8時スタートに合わせて早朝からカメラをスタンバイして出かけました。


ここから観戦します!(早すぎて誰もいなかった)


この日はまず女子5㎞のレースから。この距離でもカメラのおかげで思いのほかちゃんと観戦できそうです。よかった!

8時に一斉にスタート!
赤い「スイムブイ」が各所にあり、これを目印に回ります。

スタート直後はまだ一線。ここから徐々に縦長になっていきます。
そんなところもマラソンと似ています。


鵜来島をバックに泳ぐ選手たち。本当に博多湾内なんだと実感。
奥に薄ーく見えるのは香椎かもめ橋、右に見切れる山は立花山です。


なんというか、漠然と想像していたよりもかなり速い…。

観戦しているなぎさ橋から選手たちまで距離はあるのですが、そのスピード感はしっかり感じる事ができました。


女子の結果は、ドイツのレオニー・ベック選手59分31秒7の記録で優勝。これが世界水泳2023福岡大会初の金メダルとなりました(1時間以上いましたよ、橋と浜に…)。


OWSと鵜来島と立花山と撮影用ドローンと飛行機(情報多)。




続く男子の部(同じく5㎞)までは1時間ほど時間が空いたので、もしかしたら上から見えるのでは? と思い立ち、福岡タワーへと移動。優雅に?地上123mから観戦することにしました。


心霊写真みたいになってますが、ガラスの反射です…。

上(タワー)から見てみると、案の定コースが分かりやすい!(そして涼しい!)

軽い気持ちでのぼってみましたが、結果はかなり良い観戦ポイントでした(観光客の皆さんのお邪魔にならないよう、ひっそりと観戦&撮影させていただきました)。


選手が続々と集まって来ました。間もなくスタートです。


そして一斉にスタート!
(音など聞こえないので突然始まってビックリする)


博多湾に向かって浜を出て行く選手たち(見えますかね…?)。
鵜来島との距離感もこんな感じです。


目印のスイムブイを回ります。直角!


レースの距離に応じて同じコースを何周かして、
ようやくゴールへと向かいます(スタートと同じ地点)。


選手が通過するスイムブイの周辺はもちろんですが、選手が通るルートの周辺にはいくつもの救護船サップボード水上バイクなどが控えていて、選手たちを守っていたのが印象的でした。自然を相手にしている以上、何が起こるか分かりません。選手の安全が第一です。

筆者も何の力にもなれませんが、上(タワー)から1時間、選手たちをひっそりと見守らせていただきました。


男子の結果は、こちらも女子と同じくドイツのフロリアン・ウェルブロック選手53分58秒で金メダルでした。




レースとは関係ないのですが、上から見てみて個人的に感激したのは、OWSで選手たちが泳ぐ姿が、書籍『シーサイドももち』制作時にピー・アンド・エルさんに描いていただいた「遠泳するこどもたち」のイラストと一致したこと!


コチラがそのイラストで、海側(北)から見た様子を描いてもらっています(本当にこんな感じの写真が新聞に載ってるんですよ)。



そしてコチラが今回実際に見たOWSの風景。当然、陸側(南)からの様子です。




視点を合わせるためにイラストを反転させて並べてみると…。


一致! 完全に一致!! しかも船上にはためく旗まで一致!!(筆者の心の目で見れば)

時空を超えたシンクロ率に一人感動しながら、タワーを後にしました。




ハイダイビングを観戦する

7月25日~27日に行われたハイダイビングでは25日(火)のチケットをゲットし、ついに会場での観戦が叶いました。

ハイダイビングに関しては前回の福岡大会ではまだ競技になく、つまりこれが記念すべき日本で初めて開催されたハイダイビングの国際大会となりました(クリフダイビングの世界大会は和歌山県などでも開催されています)。


朝10時の開始に向け、少し早めに出発したのですが、ここで問題が発生

地行浜の会場まで向かうルートは何となくのイメージしかなく(「まあ、行けば分かるだろう」と高をくくっていた)、結果実際に行ってみると普段ドームの周辺を車以外で通ることがあまりないことに気づき(遅い)、恥ずかしながらちょっと迷ってしまいました

筆者は家の近くからシェアサイクル「チャリチャリ」を利用して移動してみたのですが(臨時でポートができていました)、中途半端に行き慣れた道という油断もあって、予定より時間がかかってしまったんですね。なんでも勘で動いてはいけないと反省しながら、まあこれも経験と気を取り直して会場に向かいました。


途中、若干不安になりながら進みます…。


さらにちょっと分かりづらかったのは、飛び込み台とともによく事前紹介映像でも目にしていた観覧席。実はこれは関係者席で、われら一般客はよりプールに近いエリアでの観戦でした。イメージとしては、ライブ会場の関係者席(2階スタンド)とアリーナ席みたいな感じでしょうか。

暑さは覚悟していたので、万全の日焼けと日除け対策をしていったものの、スタンディングだったのは予想外。ですが、その代わりにとてつもない迫力と臨場感を心ゆくまで満喫することができました(ちゃんと事前に調べていた方は小さなイスを持参されていました…。勘だけで動いてはいけないパート2)。

とはいえ、1週間前にOWSの遠距離&スタンディング観戦を経験した筆者の前には無問題です。


ここがテレビやネットでよく目にしていた憧れの観覧スタンド。


こちらが一般観戦エリア。
座ると着水が見えないので、意地でも立ってました。



しかしこの飛び込み台、やっぱり間近で見ると迫力が違う!!

遠目で見ても規模の大きさは一目瞭然でしたが、真下から見上げるとさらにその異常なまでの高さを実感し、恐怖と緊張感が伝わってきます。

しかも風速17mまでなら競技を続行するのだとか。怖いよ!!!


このくらいの近さ。想像以上に高い!
海辺なので風もけっこう吹いています。


ハイダイビングは各選手が4回飛んで、その合計点数を競います。

その内容も、1・3回目のジャンプでは技の難易度に制限がありますが、2・4回目は制限ナシ(ある意味「何でもアリ」)といった具合に区別されます。難易度が低→高→低→高という順で飛ぶんですね。制限ナシの演技では、男子なら落ちながら5回転くらいしてしまいます

選手側はフィギュアスケートのように自分が飛ぶ技を事前申告するので、審査員は内容を承知した上で審査します。また、難易度が回転数や体勢(「ひねり」や「抱え込み」、「まっすぐ」など)の組み合わせによって点数化され、これが得点に大きく影響します。

得点は、7名の審査員が付けた点のうち、上位2名と下位2名を外した中間3名の合計点×難易度で算出されます。

今回筆者は、1・2回目が行われた予選の様子を観戦することになりました。



ところでハイダイビングは飛び込み台からプールに飛び込みますが、プールには必ず救護ダイバーの方々が待機しています。飛ぶ前には選手が上から救護ダイバーさんたちが待機する位置を確認し、飛び込みの邪魔にならないよう指示を出していました。


救護ダイバーさんたち。競技前なので、まだリラックスムードです。
競技が始まる際には必ずプールに入って待機します。



女子は20mの高さから飛び込みます。もちろん男子と比べると低い位置ですが、それでもビルの5階くらいの高さ…。

20mからダイブ!

拡大するとこんな感じ。美しいフォーム!


逆立ちスタートもアリ!!(体幹つよ…)
しかも逆立ちの場合はこの体勢で3秒静止がルールです。








唯一の日本人選手、荒田恭兵選手の姿もありました。荒田選手は現在日本人でただ一人のハイダイバーです。

緊張もあるでしょうが、楽しげな様子の荒田選手。
ガンバレ!!!


男子は女子よりもさらに7m上からのダイブ。当然ですが、この塔のてっぺんから飛び込むわけで…。

飛んだーーー!!!


バク転状態から飛ぶのもアリ!(意味不明)







大きな事故もなく、選手の素晴らしい演技には会場からも惜しみない拍手が送られましたが、とくに荒田選手が登場すると観客も増え、大きな歓声が上がっていました。


ハイダイビングは「高い所から飛び込む」ということに目が行きがちですが、実際に観戦してみると「着水」が見所だということにも気づきました。あれだけ高いところから飛び込んでも技術があれば水しぶきが出ないことも。

そして飛び込んだ時の音がすごい!! 音が大きいほどまっすぐ水に入った証拠で、水しぶきなく着水できているそうです。


結果は、女子はオーストラリアのリアンナ・イフランド選手が357.40点で優勝(このインフランドさんは女子ハイダイビングでは女王的存在なのだそうです)。

そして男子は、ルーマニアのコンスタンティン・ポポビッチ選手が472.80点での優勝となりました。


ちなみに男子金メダリストとなったポポビッチ選手の4回目(制限ナシ)の技は、「逆立ち後ろ宙返り3回半3回ひねり」。

筆者は決勝の様子をCSの中継で見たのですが、解説していた飛び込みの寺内健選手(オリンピック6大会出場)も「なんだこれ…」と絶句するレベルの技でした(逆立ちして飛んでから着水までずーっと回転している)。




ハイダイビングは高所から水に飛び込んでその技を競うのが目的ではあるのですが、まずは生きて帰ってくることが何よりもまず大事

なので、ダイブ後には水面に顔を出し、救護ダイバーに必ず「大丈夫!」のサインを出さなければなりません。調べてみると、今回の大会でも着水の影響で腹部を打撲、呼吸困難になったケースが1件あったそうです。


そんな危険な競技ということもあってか、競技後には別の国の代表選手でもそれぞれが演技を称え、生還を喜んでいたのが本当に印象的でした。そのくらい危険と隣り合わせの競技ということなんですね。


このようなハイレベルな競技ができるのも、選手の日頃の技の訓練と努力、そして身につけた筋肉が身体を守ってくれているからなのだそうです。

当たり前ですが、素人が一朝一夕に真似できるものではないですよね。


ダメ! ぜったい!!


* * * * * * *


これまでもシーサイドももちは、ヨットのアメリカズカップ・ワールドシリーズインターナショナル ライフセービングカップ2019、また数多くのアクアスロントライアスロン大会など、さまざまな国際スポーツ大会が行われ、世界のトップ選手たちがその技を競い合う舞台となってきました。

今回の世界水泳2023福岡大会も、とくにハイダイビングでは日本で初めての国際大会が開催された場所として「シーサイドももち」の名が刻まれたことは、このまちにとっても大きな意味があることでしょう。それが最終的にどういう評価をされるかはまた別の話としても、この状況をリアルタイムで記録し、実際に体験することができたのは幸運だったと思います。



余談ですがこの数日後、通勤中に昭和通りを通って福岡タワーに行くバスに乗っていたところ、ドーム西側の「九州医療センター前」バス停でハイダイビング会場に行くために迷っているボランティアの方と遭遇

「九州医療センター前」といえば会場とはドームを挟んで反対側になるため、道を聞かれた西鉄バスの運転手さんもどうにも案内できずにいたため案内役を買って出まして、そこから会場までスムーズにエスコート。「これは迷いながら現地まで行った成果が試される時か?!」ということで、無事伏線回収となりました。





【参考文献】

・ウェブサイト
 ・世界水泳2023福岡大会公式サイト(https://www.fina-fukuoka2022.org/)
 ・テレビ朝日 テレ朝水泳 世界水泳2023(https://www.tv-asahi.co.jp/swimming/sekaisuiei2023/)
 ・世界水泳2023福岡大会 救護業務参加のご報告[千葉大学大学院 医学研究院 整形外科学](http://www.ortho.m.chiba-u.jp/sports_drs_col/5032)


※ 写真はすべて筆者撮影。



#シーサイドももち #百道海水浴場 #世界水泳 #オープンウォータースイミング #ハイダイビング


Written by かみねillustration by ピー・アンド・エル

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