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2024年10月30日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その25(最終回かも) まだまだ成長していきます

 

ただいま開催中
いよいよ11月4日(月・振休)まで

会場:福岡市博物館 特別展示室

特別展「大灯籠絵」、いよいよ最終日が近づいてきました。

早いものです。

このブログも25回目。長かったような、瞬く間だったような……


さて、ブログその23では、成長する展示についてお伝えしました。

実は、その後も「成長」がとまらないのです。


先日は、福岡市東区の方から、

「むかしお地蔵様のお祭りで飾っていたかもしれない大灯籠絵みたいなのがでてきました」

とご連絡をいただき、担当学芸員Kが小躍りしながら調査に出かけました。

拝見したところ、まさに「大灯籠絵」だと判明し、

あらためて詳しく調査するお約束もでき、

担当学芸員Kはよく分からない歌をくちずさみながら、大興奮で帰ってきました。


また、三大「大灯籠絵」絵師(一得斎高清、海老﨑雪渓、白水耕雲。筆者が勝手に選定。)の一人、海老﨑雪渓の子孫の方からもご連絡をいただきました。

なんと「雪渓の遺品の羽織がある」とのこと。

みせていただくと、羽織の裏には、龍が描かれています。

雪渓のサインはないものの、

ブログ23で紹介した子ども用の山笠法被の龍とも雰囲気が似ていて、

「雪渓が自分で描いた絵かも?!」と、期待が膨らんでいます。


このように、この特別展「大灯籠絵」、まれにみる成長を続けています。

成長は展覧会閉幕後も続いていきそうです。

成長の成果は、また改めて、何らかの形でご報告ができるのではないかと思います。

どうぞ、お楽しみに!!


その前に、「大灯籠絵」が一堂に集まる希少な機会ですので、

ぜひぜひ、特別展「大灯籠絵」の会場へもお越しください。

11月4日(月・振休)まで開催中です

(by おーた)

2024年10月24日木曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その24 「大灯籠絵」の飾り方

 

ただいま開催中
11月4日(月・振休)まで

会場:福岡市博物館 特別展示室

特別展「大灯籠絵」の会期も2週間をきりました。

みなさま、ご覧いただけたでしょうか?


さて、この展覧会には、

①「大灯籠」を飾る行事や「大灯籠絵」について多くの人に知ってもらうこと

②「大灯籠」を飾る行事を継承していくためのさまざまな課題の解決策をさぐること

というねらいがあるのです。


①の「多くの人に知ってもらう」については、

プレイベントのワークショップの参加者や展覧会にご来場いただいた方から、

「初めて知った」ということばをよくお聞きすることができ、

担当学芸員Kはニンマリしています。


②の「課題の解決策を探る」について、いろいろな試みをしてみました。

ブログのその14で紹介したワークショップもその一つで、

「大灯籠」を飾る行事の未来の担い手へのアプローチでした。


その他、地味に反響が大きかったのが、

「大灯籠絵」をどうやって飾るか?についての試みです。

通常、「大灯籠絵」を飾るときは、木枠に釘でうちつけて灯籠にしたてます。

これだと、飾るたびに穴があいてしまい、

大事にしたいのに、使うと傷んでしまう……

という悩みを、担い手のみなさんは抱えていました。

担当学芸員Kは、この課題を解決すべく、

これまでの福岡市博物館の展示のノウハウを活用しつつ、

最新アイテムを探索し、1年間試行錯誤を繰り返して、

文化財でもある「大灯籠絵」を傷つけることなく安全に飾る手法を開発しました!!

釘を使わずに巨大な「大灯籠絵」を飾る手法は、

「大灯籠」を飾る地域の方々にも歓迎され、

今年、早速、取り入れてくださった町もあります。

また、ほかの博物館や美術館からの問い合わせや視察も相次ぎました。


特別展「大灯籠絵」もそろそろ終盤

どうぞ会場で、担当学芸員Kのさまざまな試みをご覧ください。

(by おーた)

2024年10月16日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その23 成長する展示

 

ただいま開催中
11月4日(月・振休)まで

会場:福岡市博物館 特別展示室

特別展「大灯籠絵」の会期も半ばを過ぎました。

時として、博物館の展示は、会期の途中で「成長」することがあります。

展覧会が始まると、展示をご覧いただいた方から、新たな情報が寄せられ、

その新情報を展示に加えることを、「成長」と学芸員の仲間内で言ったりするのです。


3年間も調査をつづけて、開催にこぎつけたこの特別展「大灯籠絵」にも、

会期が始まってから、さまざまな情報が寄せられています。

ということで、毎週水曜日の担当学芸員によるギャラリートークも、

新情報も加えながら、毎回少し「成長」しています。


ところで、この度、とびきりの新情報が、担当学芸員Kのもとに舞い込みました。

「海老﨑雪渓が絵を描いた子ども用の山笠の法被があるよ」

海老﨑雪渓(1876~1941)は、このブログのその18で紹介したように、

福岡県指定有形民俗文化財「大浜流灌頂大燈籠」の絵を描いた人物です。

その彼が手掛けた法被があるなんて、初耳でした。

博多にお住まいの方が、博多町家ふるさと館に寄贈された資料のなかに、

その法被があるというのです!!


担当学芸員Kは、大興奮で、博多町家ふるさと館に連絡をとり、

ご理解とご協力を得て、急遽、特別展「大灯籠絵」への追加出品がかないました。


上の写真がその法被です。

生まれたばかりの子どもが、初めて博多祇園山笠に参加するときに着る法被です。

背中には、子どもの幸せを願ってネズミの背守りがつけられています。

この法被は、本日10月16日から、特別展「大灯籠絵」の会場で展示しています。

海老﨑雪渓の画業を紹介しているコーナーですので、お見逃しなく!!

(by おーた)

2024年10月9日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その22 総館長のギャラリートークのご案内

 

ただいま開催中
11月4日(月・振休)まで

会場:福岡市博物館 特別展示室

特別展「大灯籠絵」、会期も半ばまできました。
オープンしたころは残暑厳しいなかでしたが、今はもうすっかり秋ですね。

特別展「大灯籠絵」の会場内の様子を少しだけ見ることができる動画をご用意しました。
コチラからご視聴ください。

さて、10月12日(土)、
当館 中野総館長のギャラリートークを開催します。
福岡市博物館 総館長 中野 等

テーマ:絵解き戦国合戦
日時:10月12日(土) 午後2時~午後3時
集合場所:福岡市博物館2階 特別展示室入口
※事前申込不要
※参加費は無料ですが、特別展「大灯籠絵」の観覧券が必要です

9月28日の総館長の講演会「大灯籠絵にみる娯楽としての”歴史”」にいらした方も、そうでない方も、
歴史学者である総館長の絵解きで、「大灯籠絵」を鑑賞する最後?の機会です。

展示中の「太閤記山崎大合戦之図」/筥崎宮

例えば、豊臣秀吉が明智光秀を討った「山崎の戦い」を題材にした「大灯籠絵」は、どのように絵解きされるのか?
乞うご期待!!

(by おーた)

2024年10月2日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その21 展覧会の会場の中は……

 

ただいま開催中
11月4日(月・振休)まで

会場:福岡市博物館 特別展示室

このブログ その3では、小型の灯籠をつくるワークショップ

その7では、厳かな供養の現場の再現を目指している担当学芸員Kが描いたイメージスケッチを紹介しました。


さて、これらが、実際の展覧会の会場でどのようになっているのか?

施餓鬼供養の祭壇を再現したコーナー

ワークショップでつくった灯籠と博多提灯

ワークショップでつくった灯籠と住吉提灯

少し暗めの会場の中で、灯りが入った灯籠や提灯がならび、

なかなかいい感じになっていると思うのですが、いかがでしょう?


ところで、特別展「大灯籠絵」をご覧になるなら、オススメは水曜日の午後です。

会期中の毎週水曜日は午後2時から担当学芸員のギャラリートークがあります。

会場内の解説文やパネルでは語り切れないことを、担当者がお話しします。

時間は1時間程度です。

より特別展「大灯籠絵」をお楽しみいただくために、

ぜひ、水曜日のギャラリートークもご参加ください。

水曜日のギャラリートークは、事前の申し込みは不要です。

観覧券をお持ちになって、水曜日の午後2時に会場入り口にお集まりください。

(by おーた)

2024年9月25日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その20 娯楽としての”歴史”とは? 講演会のご案内

 

ただいま開催中
11月4日(月・振休)まで

会場:福岡市博物館 特別展示室

特別展「大灯籠絵」、大好評開催中です。


さて、今週末の9月28日(土)には、

福岡市博物館 中野 等 総館長による講演会があります。


テーマ:大灯籠絵にみる娯楽としての”歴史”

日 時:令和6年9月28日(土) 午後1時30分~午後3時

会 場:福岡市博物館 2階 喫茶・談話室   定員:50名

事前申込・参加費は不要です。

※特別展の観覧券もしくは半券の提示が必要です。

※当日は午後1時に開場し、先着順でご入場いただきます。


今回の講演会は、普段と少し趣向をかえて、

講師との距離をぐんと縮めた会場を準備しています。

テーマも「娯楽としての”歴史”」

大灯籠絵を通して、”歴史”を思う存分楽しんだ人びとの様子を覗いてみませんか?

ご来場をお待ちしています。

(by おーた)

2024年9月18日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その19 常設展示室もお見逃しなく!!

 

ただいま開催中
11月4日(月・振休)まで

会場:福岡市博物館 特別展示室

とうとう特別展「大灯籠絵」が開幕しました!!

会場は福岡市博物館の特別展示室なのですが、

実は、常設展示室にも見逃してはならない展示があります。


① 多くの大灯籠絵を描いた絵師・海老﨑雪渓の名前がある長寿番付



② 箱崎(福岡市東区)で飾られていた大灯籠絵の再現展示



③ 千灯明と流灌頂についての解説映像


④ 特別展「大灯籠絵」のなかのキーワード「無縁をまつる」の展示


特別展「大灯籠絵」の観覧券には、常設展・企画展の観覧券がついています。

もちろん、国宝 金印「漢委奴国王」も常設展示室で観覧できます。

企画展示室では、企画展はもちろん、黒田家名宝展示も観覧できます。

どうぞ、おでかけください。

(by おーた

2024年9月11日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その18 福岡県指定有形民俗文化財「大浜流灌頂大燈籠」すべて展示

THE ASTONISHING WORLD OF GIANT LANTERN PAINTINGS
会期:2024年9月13日(金)~11月4日(月・振休)  会場:福岡市博物館

 この秋、福岡市博物館では、特別展「(おお)(とう)(ろう)()」を開催します。

展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。


いよいよ特別展「大灯籠絵」の開幕が近づいてきました。

この展覧会では、福岡市内の「大灯籠絵」が初めてすべて集まります。

そして、福岡県指定有形民俗文化財の9点の「大灯籠絵」はすべて実物で展示です!!

(ほかの「大灯籠絵」は一部、資料保護のため写真や複製での展示があります)


県指定文化財の「大灯籠絵」は、いずれも海老﨑雪渓(1876~1941)が描き、

大浜の皆さんが守り伝えてきたものです。

9点すべて、幅4メートルを超える「大灯籠絵」のなかでも特に大きなサイズ。

大画面に力強い武者絵の迫力は、実際に見てみないとなかなか体感できません。

さらに、9点のうち6点は、3基の「大灯籠」にしたて、灯籠の内側からの灯りでご覧いただくという趣向です。

福岡県指定有形民俗文化財 海老﨑雪渓「尼ケ崎大合戦」/大浜流灌頂継承保存会

今年の大浜流灌頂で飾られている「尼ケ崎大合戦」(2024年8月24日撮影)

展覧会では、現役を退いた「大灯籠絵」も展示しますが、
大浜流灌頂のように現役の「大灯籠絵」も多数集結します。
是非、会場にお越しください。

(by おーた)

2024年9月4日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その17 講演会のご案内

THE ASTONISHING WORLD OF GIANT LANTERN PAINTINGS
会期:2024年9月13日(金)~11月4日(月・振休)  会場:福岡市博物館

この秋、福岡市博物館では、特別展「(おお)(とう)(ろう)()」を開催します。

展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。


さて、9月に入り、特別展「大灯籠絵」の開幕まで10日をきりました(汗)

担当学芸員Kは、もちろん、Kの補佐役の学芸員Nや学芸員Sも追いつめられつつある今日この頃です。

ところで、展覧会オープンの翌日9月14日には、

開催記念講演会を福岡市博物館で開催します。


演題:仏教と民俗─”十三塚”考をめぐる貝原益軒と柳田国男を中心に

講師:佐野賢治氏  神奈川大学名誉教授・(公財)農村文化研究所長

日時:令和6年9月14日(土)  13時30分~15時

会場:福岡市博物館1階 講堂   定員:240名

事前申込・参加費は不要です。

※特別展の観覧券もしくは半券の提示が必要です。

※当日は13時に開場し、先着順でご入場いただきます。


講演会をお聴きいただければ、「大灯籠」を飾る行事の背景について、

理解が深まること間違いなし!!

仏教民俗学の視点から、貝原益軒の死生観についてもふれる内容だそうです。

是非、ご来場ください。


この講演会のほかにも、会期中には、

ギャラリートークなども開催予定です。

福岡市博物館の公式X(旧Twitter)などでもお知らせしますので、

お見逃しなく!!

(by おーた)

2024年8月28日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その16 源頼光(みなもとのよりみつ)

THE ASTONISHING WORLD OF GIANT LANTERN PAINTINGS
会期:2024年9月13日(金)~11月4日(月・振休)  会場:福岡市博物館

この秋、福岡市博物館では、特別展「(おお)(とう)(ろう)()」を開催します。

展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。


「大灯籠絵」にはヒーローが活躍する物語の一場面が多くあります。

酒呑童子(しゅてんどうじ)退治や土蜘蛛(つちぐも)退治の伝説で有名な源頼光は、

複数の「大灯籠絵」に登場しています。

酒呑童子退治/大浜流灌頂継承保存会
大江山(京都府)に住み、都の姫君をさらっていた鬼=酒呑童子を
源頼光とその配下の四天王が退治し、酒呑童子の首をはねた場面

大江山土蜘蛛退治図/福岡市漁業協同組合箱崎支所
病床にありながら、配下の四天王とともに
巨大なクモの妖怪=土蜘蛛を退治する場面

大江山鬼神退治之図/福岡市漁業協同組合箱崎支所
酒呑童子退治の様子

「伝説」で有名ではありますが、源頼光(948~1021)は実在した人物です。

今年2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主要登場人物である

藤原道長(966~1027)密接なかかわりがあります。

988年に藤原道長の父で関白の藤原兼家(929~990)が

新邸を造った際の祝宴で、馬30頭を贈ったといいます。

また、1016年に藤原道長の土御門殿(つちみかどどの)が焼失し、

1018年に新造されたとき、

源頼光は家具・調度いっさいを献上したのだそうです。


8月25日放送の第32話は、1005年という設定でしたから、

この先、源頼光が「光る君へ」に登場することもあるかもしれませんね。

(by おーた)

2024年8月21日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その15 現存最古の「大灯籠絵」

 

THE ASTONISHING WORLD OF GIANT LANTERN PAINTINGS

会期:2024913日(金)~114日(月・休)  会場:福岡市博物館


この秋、福岡市博物館では、特別展「(おお)(とう)(ろう)()」を開催します。

展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。


さて、このブログで何度か紹介している一番大きな「大灯籠絵」▼

昭和10年(1935)発行の『博多年中行事』で、

著者の佐々木滋寛が、

宵の博多の夏祭景趣をかざるものに大灯籠がある。之は路に交叉して路上に高く吊るされた大きい長方形の灯籠で、その両側には極彩色の武者絵が描かれてゐて、中に火を入れて之を見るのである。その最も代表的なものは八月二十四日の大浜の流灌頂のもので一得斎の大徳寺焼香の図などは傑作である。炎帝の暴威から解放された人々が浴衣がけで美しい大灯籠の絵を見てそゞろ歩くのも南国の夜にふさはしい風情である。……(後略)……

と絶賛した 一得斎高清(いっとくさいたかきよ)の「大徳寺焼香之図」ですが、

実は大きいだけではなく、どうやら現存する「大灯籠絵」のなかで一番古いらしいのです!!

はっきりと制作年が分かるわけではありませんが、

作者の一得斎高清は、明治20年代を中心に活動していたことが分かっています。

ということは、おそらくこの「大灯籠絵」の制作も明治時代の中頃のはず。

制作は130年くらい前ということになります。

一得斎高清 大灯籠絵「大徳寺焼香之図」/大浜流灌頂継承保存会

さすがに、時を経て劣化はしていますが、前々回のブログで紹介したように、

「大灯籠」調査の過程で、「再発見」されたことで、

今回の特別展「大灯籠絵」にめでたく出品のはこびとなりました。

是非、展覧会の会場で、この「大灯籠絵」がへてきた歴史と大きさを体感してください。

(by おーた

2024年8月14日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その14「大灯籠絵」をつくりました


                           THE ASTONISHING WORLD OF GIANT LANTERN PAINTINGS
会期:2024年9月13日(金)~11月4日(月・振休)  会場:福岡市博物館


この秋、福岡市博物館では、特別展「(おお)(とう)(ろう)()」を開催します。

展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。

 

展覧会開幕まであと1ヶ月……

担当学芸員Kは、追い込まれつつある今日この頃です。

 

さて、この大灯籠絵ブログのその3で、

「福岡ミュージアムウィーク2024」期間中の525日に、

小型の灯籠をつくるワークショップを開催したことを報告しました。

 

小学校の夏休みが入った7月・8月に、「大灯籠絵」をつくるワークショップを行いました。

ご協力いただいたのは、箱崎・大浜・当仁公民館。

それぞれ「箱崎人形飾り」「大浜流灌頂」「八兵衛地蔵尊夏祭り」で大灯籠を飾っている地域の皆さんです。

事前に、絵柄についても相談し、3公民館それぞれのデザインが決まりました。


箱崎公民館(福岡市東区箱崎)では、

特別展「大灯籠絵」のポスターにもつかった大灯籠絵「伊賀越敵討之図」


大浜公民館(福岡市博多区大博町)では、大浜の町のシンボルであるあやめの幔幕の図柄


当仁公民館(福岡市中央区唐人町)では、八兵衛地蔵尊や町のシンボルの唐団扇などのデザイン


和紙に印刷した下絵に水彩パステルをつかって、思い思いに色をぬってもらいました。

「伊賀越敵討之図」を下絵にした箱崎の「大絵灯籠」

町のシンボル「あやめ図」の幔幕を下絵にした大浜の「大灯籠絵」

八兵衛地蔵や町のシンボルの火消しのまといや唐団扇をデザインした唐人町の「大灯籠絵」


この3つの大灯籠絵は、展覧会の会場入り口横に、展示する予定です。

ご来館の際は、是非、令和の大灯籠絵にもご注目ください。

(by おーた)


2024年8月7日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その13「大灯籠絵」再発見の物語

 

THE ASTONISHING WORLD OF GIANT LANTERN PAINTINGS

会期:2024913日(金)~114日(月・休)  会場:福岡市博物館


この秋、福岡市博物館では、特別展「(おお)(とう)(ろう)()」を開催します。

展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。

 

福岡県指定有形民俗文化財に「(おお)(はま)(ながれ)(かん)(じょう)(おお)(とう)(ろう)」が指定されたのは

昭和33年(1958)のことです。

しかし、地域で聞き取り調査をしてみると、昭和30年代から40年代ころから、

徐々に「大灯籠」を飾る行事は低調になっていっていたようです。

「大灯籠」を飾る道路の交通量増加、担い手の不足などが

共通して語られる原因です。

「大灯籠」を飾ることを中止してしまった町もあり、

「大灯籠絵」は倉庫などにしまい込まれているうちに、

朽ちてしまったり、忘れられてしまったり……

 

昭和の終わりから平成にかけて、

かつて「大灯籠」を飾る行事を子ども時代に楽しんでいた世代から、

「大灯籠」の話を聞いて育った若手が中心となって、

町や町内の夏祭りを盛り上げるために、「大灯籠」を復活させるプロジェクトが動き出します。

 

しかし、「大灯籠」の復活から30年余り、そろそろ世代交代の時期にさしかかり、

「大灯籠」を飾る行事は、再び岐路にたたされています。

 

文化財としての「大灯籠」の調査は、

令和3年(2021)に、

福岡県文化財保護課・福岡市文化財活用課・福岡市博物館が共同で、

「大浜流灌頂大灯籠」の現状調査というかたちでスタートしました。

この調査によって、

大浜流灌頂継承保存会が、県指定有形民俗文化財のリストには入っていない、

「大灯籠絵」を複数点伝えていることが確認できました。

最大の大灯籠絵 一得斎高清「大徳寺焼香之図」を「発見」した日(2021年)


さらに、福岡市文化財活用課と協力し、

地域の皆さんの力も借りながら、調査をすすめたところ、

福岡市内に60点余りの「大灯籠絵」が現存していることを確認できました。

今宿の神社の倉庫から「発見」された大灯籠絵 白水耕雲「加藤清正朝鮮国蔚山に勇戦之図」(2021年)

黒門で地域の皆さんと一緒にすすめた調査(2021年)

福岡市博物館では、古い写真の調査もすすめ、現存は確認できないながらも、

かつてあったことが写真でわかる「大灯籠絵」を10点余り見つけました。

 

ともに調査をすることで、あらためて「大灯籠」に注目するようになった地域の動きと、

福岡市内の「大灯籠絵」についての調査の成果が結びつき、

特別展「大灯籠絵」に結実しようとしています。

 (by おーた)

 

 


2024年7月31日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その12 大きな灯籠の呼び名はいろいろ

 

THE ASTONISHING WORLD OF GIANT LANTERN PAINTINGS
会期:2024年9月13日(金)~11月4日(月・振休)  会場:福岡市博物館

この秋、福岡市博物館では、特別展「大灯籠絵」を開催します。

展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。


博多沿岸の町で、夏祭りのときに飾る大きな灯りを「大灯籠」と呼びます。

そして、そこに描かれている絵が「大灯籠絵」です。


このブログでは、ずっとこんな説明をしてきました。


実は、これは正確ではないのです。

地域や世代によって、微妙に「大灯籠」の呼び名がちがうのです。

「おおとうろう」「おおどうろう」「だいとうろう」

「おおえとうろう」「おおえどうろう」

「とうろうえま」「えま」

実にいろいろな呼び方があります。

木箱/唐人町中年会蔵

上の写真は、「大灯籠」を飾っていた旧西唐人町(福岡市中央区黒門)につたわった「大灯籠絵」を収納していた木箱です。
大正13年(1924)につくられた箱で、「大燈籠繪」と墨で書かれています。

網屋天満宮の鳥居にかけられた灯籠

こちらは、「箱崎人形飾り」にあわせて「大灯籠」を飾る網屋天満宮(福岡市東区箱崎二丁目)で撮影した写真です。
鳥居には「大絵灯篭」と書かれた灯籠がつられています。

展覧会では、分かりやすく「大灯籠」と「大灯籠絵」ということばを使っています。
しかし、似ているけれど少しちがう「大灯籠」の呼び名は、
地域によってバリエーションがあり、また、時代とともに緩やかに変化しています。
こうした地域や時代によって生まれる多様性も、
大切に伝えていきたい地域の文化のひとつです。
(by おーた)



2024年7月24日水曜日

特別展「大灯籠絵」を楽しむために その11 お祭り会場の背景にも注目

 

THE ASTONISHING WORLD OF GIANT LANTERN PAINTINGS

会期:2024913日(金)~114日(月・休)  会場:福岡市博物館


この秋、福岡市博物館では、特別展「(おお)(とう)(ろう)()」を開催します。

展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。

 

お祭りや祝い事のときに、家の入り口に張る長い幕(長さ10メートル以上のものもある)「(まん)(まく)」をご存じですか?

武家が陣営に張った陣幕や、お祝いの際に張る紅白幕も「幔幕」です。

 

博多では、100年くらい前、大正時代頃まで、

(はこ)(ざき)(ぐう)(福岡市東区箱崎一丁目)の秋のお祭り・(ほう)(じょう)()の際に、

お参りがてら家族や町内のひとたちと筥崎宮近くの松原にでかけ、幔幕を張って、

飲食などを楽しむ「まくし」という習慣がありました。

 

幔幕の意匠はいろいろありますが、

博多では、「このデザインはあの町」という意匠があります。

「金魚」「雀踊り」「角力取り」「七福神」などが、その代表格でしょうか。

 

「大灯籠」を飾る町のなかでは、

大浜(福岡市博多区大博町)の「あやめ」の幔幕があります。

▲明治2年(1869)製作

▲明治28年(1895)製作

▲明治32年(1899)製作

いずれも水辺に咲くあやめが画面いっぱいに描かれています。

(いずれも福岡県指定有形民俗文化財)

大浜では、大灯籠を飾る「(おお)(はま)(ながれ)(かん)(じょう)」のときにも、

これらのあやめの幔幕を使ってきました。

 


▲上下とも、2023年8月の大浜流灌頂の様子
明治時代のものを復元した「あやめ」の幔幕が使われています

地域のお祭りに出かけてみると、さまざまなデザインの幔幕を見ることができます。

お祭り会場の「背景」になっていることが多い幔幕ですが、

その「背景」に注目してみると発見があるかもしれません。

(by おーた)