2026年2月7日土曜日

「魔法の歴史スコープ」観賞ガイド 第4回 ドングリの話

  福岡市博物館では、2026221日(土)から412日(日)まで、特別展「魔法の歴史スコープ~見つめてみよう福岡の今~」を開催します。「人と環境の関わりの歴史」に焦点をあわせて、「今」そして「未来」を考える展覧会です。

このブログでは、展覧会を楽しむためのアレコレを紹介したいと思います。


福岡市博物館の常設展示室 縄文時代の資料がならぶケースのなかに土器に山盛りになったドングリがあります。

 実はコレ、4000年前のドングリなのです。福岡市南区野多目の遺跡で発掘されました。水漬けになっていたために、奇跡的に4000年前の形を保った状態で見つかったのです。

 

ところで、福岡に人がくらし始めたのは、3万年以上前のことです。その頃は、地球全体が寒冷な氷期で、平均気温は今より7℃ほど低かったようです。人びとは獲物を追って移動するくらしをしていました。

1万5000年くらい前になると、氷期は終わり温暖化がはじまります。このあと1万年以上つづく縄文時代のはじまりです。温暖化によって海面が上昇し、対馬海峡は広くなり、日本海側には南から暖流が流れ込むようになりました。変化は、植生にもおよび、西日本では常緑広葉樹の森が広がりました。

そこで、ドングリです。ドングリは、ブナ科の木の実の総称です。多くのドングリは、アク抜きをしないと食べられないのですが、イチイガシのドングリはアク抜き不要!!食料に適したスグレモノです。先程の4000年前のドングリは、まさにこのイチイガシの実なのです。

イチイガシは常緑の高木。伐採して材木として使いたくなるところですが、大事な食料になる実をつける木を簡単に切り倒すわけにはいきません。縄文時代の人びとは、毎年たくさんのドングリがなるイチイガシの木を大切しながらくらしていました。

ところが、ドングリよりステキな食料が手に入るようになると、状況は一変。縄文時代の終わりごろに稲作が伝来すると、人びとはドングリよりコメを好んで食べるようになります。コメを作るためには、農具が必要になります。その農具の材料として適していたのが、イチイガシなどの堅くて丈夫な木でした。

それまで大事にしてきた木を伐採して農具をつくり、せっせとコメ作りを始めたのです。そして、弥生時代の初め頃には、福岡平野のドングリの木は伐りつくされてしまったようなのです。

 

このドングリの話は、縄文時代から弥生時代の福岡で、人びとの営みが、環境の変化につながった一例です。

特別展「魔法の歴史スコープ」では、「人と環境の関わりの歴史」を紹介します。

(byおーた)

2026年2月3日火曜日

「魔法の歴史スコープ」観賞ガイド 第3回 2月28日(土)がスゴイらしい

  福岡市博物館では、2026221日(土)から412日(日)まで、特別展「魔法の歴史スコープ~見つめてみよう福岡の今~」を開催します。「人と環境の関わりの歴史」に焦点をあわせて、「今」そして「未来」を考える展覧会です。

このブログでは、展覧会を楽しむためのアレコレを紹介したいと思います。


 特別展「魔法の歴史スコープ」の会期中は、毎週土曜日の午後2時から担当学芸員による展示解説があるなど、イベント盛りだくさんなのですが、特に、

228日(土)がスゴイ!!

担当学芸員による展示解説はもちろんのこと、

10:3011:30 キッズ向けのギャラリートーク「スコープを展覧会探検forキッズ」

13:3015:00 ワークショップ「2000年後の福岡を発掘しよう!」

 

そして、きわめつけは「古代フェスin福岡市博物館」(10:0016:00



「九州の考古は楽しい!」をモットーに活動されている「コダイプレス」さんの人気イベントが、福岡市博物館で初開催なのです。

「古代フェス」ならではの魅力的なグッズの販売や、ユニークなメニューのキッチンカー、「魔法の歴史スコープ」担当学芸員Aが登場する「古代トーク」などなど

ワクワクするイベントがてんこ盛りです。

※「古代トーク」のみ、事前予約(2/7から受付開始)が必要です

詳しくは「古代フェス」で検索を!

 

老若男女問わず楽しめる1日になること間違いなしです。

また、「魔法の歴史スコープ」の観覧券には、常設展・企画展の観覧券もついているので、

常設展示室で国宝 金印「漢委奴国王」、

企画展示室で期間限定公開中(2/13/1)の国宝 太刀 名物「日光一文字」を

じっくり鑑賞することもできます。

みなさんのお越しをお待ちしています。

(by おーた)

2026年1月13日火曜日

「魔法の歴史スコープ」観賞ガイド 第2回 弥生時代の「人と環境」

福岡市博物館では、2026221日(土)から412日(日)まで、特別展「魔法の歴史スコープ~見つめてみよう福岡の今~」を開催します。「人と環境の関わりの歴史」にスポットをあて、「今」そして「未来」を考える展覧会です。

このブログでは、展覧会を楽しむためのアレコレを紹介したいと思います。



「縄文時代は狩猟・採集の時代、弥生時代からはコメ作りがはじまり農耕の時代になる」

こんな風に学校で習いましたよね。

では、弥生時代の「人と環境の関わり」はどのようなものだったのでしょう?

常設展示室の板付遺跡のジオラマから考えてみましょう。


板付遺跡(福岡市博多区板付)は、日本で最も古い農耕集落遺跡のひとつです。このジオラマは、2500年くらい昔の様子を再現したものです。堀で囲まれた集落、コメ作りをする水田、集落がある高台と水田の間には水路がみえます。

集落のなかでは、太い木材をつかって、竪穴住居を建築中の人たちがいます。木材は近くの森から切り出してきたのでしょう。


 水路には堰がつくられ、水田に水を引き入れます。水田をつくるために集落の人たちは協力して土地を切り開いたことでしょう。コメ作りや日々の暮らしが便利になるように、土木工事をして川の自然な流れに手を加えていたのですね。


 集落を取り囲む堀は環濠とよばれます。外敵から集落を守るためのものだったといわれています。

本格的な農耕がはじまった弥生時代、人びとは大規模な土木工事をして、集落をつくり、水田をつくっていたことが分かります。まわりの環境に積極的にはたらきかけて、自分たちが暮らしやすいように環境を整える時代が幕を開けたといえるでしょう。

さて、特別展「魔法の歴史スコープ」の核心にせまる「テーマでめぐる常設展ギャラリートーク」は、特別展の担当学芸員Aが皆さまをご案内します。是非、お越しください。

            「テーマでめぐる常設展ギャラリートーク」~大地を拓く~

            開催日時:2026年1月17日(土) 午後2時~3

   集合場所:福岡市博物館2階 常設展示室入口

   参加費:無料 ※常設展・企画展の共通観覧券が必要(中学生以下は無料)

   参加方法:事前申込不要、時間にあわせて上記集合場所にお集まりください

(by おーた)

2026年1月8日木曜日

「魔法の歴史スコープ」鑑賞ガイド   第1回 手始めは「テーマでめぐる常設展ギャラリートーク」

 


福岡市博物館では、2026221日(土)から412日(日)まで、特別展「魔法の歴史スコープ~見つめてみよう福岡の今~」を開催します。「人と環境の関わりの歴史」にスポットをあて、「今」そして「未来」を考える展覧会です。

このブログでは、展覧会を楽しむためのアレコレを紹介したいと思います。

福岡市博物館では、博物館だより『Facata(ファカタ)』を発行しています。『Facata』には、「テーマでめぐる常設展」という特集ページがあり、2,121㎡もの広さがある常設展示室を楽しむヒントを掲載しています。2025年春号は「顔」、夏号は「海」、秋号は「まじない」をテーマにして常設展をご案内しました。『Facata』の特集を片手に、学芸員が常設展をご案内するギャラリートークも毎号開催しています。

そして、12月25日に発行した最新号は、「大地を拓く」特集!! 展示室の各所に設置しているジオラマにスポットをあて、「人と環境の関わりの歴史」を紹介しています。

「あれっ? 同じフレーズを見たぞ」

そうです、まさに特別展「魔法の歴史スコープ」のテーマです。特別展の担当者Aの渾身の書下ろし特集なのです。……ということで、特別展「魔法の歴史スコープ」の核心にせまる「テーマでめぐる常設展ギャラリートーク」も開催します。

開催日時:2026年1月17日(土) 午後2時~3

集合場所:福岡市博物館2階 常設展示室入口

参加費:無料 ※常設展・企画展の共通観覧券が必要(中学生以下は無料)

参加方法:事前申込不要、時間にあわせて上記集合場所にお集まりください

221日からの特別展の核心に、一足先にふれることができるギャラリートークです。ご案内するのは、もちろん特別展の担当者A。皆さまのお越しをお待ちしています。

by おーた


2026年1月7日水曜日

丙午(ひのえうま)のお正月

  新年明けましておめでとうございます。総館長の中野です...大変お久しぶりです。なんとなくはじめたこのコーナーですが、昨年の8月以来更新を怠っておりました。総館長の歴史講座「楽史の集い」を終えた後、その報告を兼ねて、都度都度更新していたのですが、昨年の後半にやった「関ケ原戦陣図屏風によせて」のあとは、そのままになっていました。お正月ということで気分一新、徒然(つれづれ)なるままに再開すべく、キーボードをたたいております。よろしくお付き合いください。

 表題にもあげたように、今年は丙午(ひのえうま)の年にあたります。かつては「丙午生まれの女性は気性が激しい」などという非科学的な言い伝えもあって、この年の出産を嫌うという、ほかの年にはない特別の意味合いがありました。さすがに少子高齢化社会となった現在では、そうした迷信や呪縛に関わってもいられないというところでしょうか。 時間(年)の数え方には紀元や元号など、ある年を起点に経過年を重ねていく、いわば直線的なシステムとともに、一定の年数で繰り返される循環的な、すなわち円環的なシステムがあります。西暦2026年や元号による令和8年などは前者で、丙午(ひのえうま)など干支(えと)による紀年法は後者となります。

 干支による紀年法とは、甲乙丙丁から始まる十干(じっかん)と、おなじみの子丑寅卯の十二支(じゅうにし)の組み合わせで年を表す方法です。ただし、その組み合わせは120通り(10×12)ではなく、60通りとなります。十干と十二支にはそれぞれ陽と陰とがあって一つおきになっており、陽同士・陰同士は結びますが、陽と陰との組み合わせはありません。ちなみに昨年は乙巳(きのとみ)で、乙(きのと)も巳(み)も陰の干支ですが、今年の丙(ひのえ)は陽干、午(うま)も陽支となります。したがって、組み合わせも陽の方が5×6、陰の方も5×6で、合わせて60通りとなります。逆に言えば、60年で干支がひとまわりしますから、今年は60年ぶりにめぐってきた丙午(ひのえうま)に当たるわけです。数え歳60のお祝いを還暦(生まれた年の干支に還る)と称するのも、この紀年法に由来します。

 ちなみに、十干十二支の漢字は元々万物(とりわけ植物)の栄枯盛衰の有様(象・しょう)を表したもので、十二支も動物(十二獣)を意味するものではありませんでした。十二支を親しみ易いようにするため、動物の意味を後付けしたものと考えられています。「馬」ではなく「午」、「羊」ではなく「未」など、普通に動物を示す漢字が用いられていないのはこうした事情に因ります。丙午(ひのえうま)の丙(ひのえ)は「火の兄」で、草木が伸長しその形体が著明になった状態、すなわち炳(あき)らかな様を表しています。一方の午(うま)は始まりの子(ね)の真反対に位置することから、万物が繁盛の極を迎え初めて衰微の傾向が起こりはじめた様を意味します。丙(ひのえ)の方はまだいいとして、年明け早々に飛び込んでくるニュースなどからは、なかなかに明るい未来は想像しにくく、午(うま)の方には妙な現実感を覚えてしまいます。

  さて、新年早々あらぬ方向に話が進んでしまいました。今年も博物館として市民のみなさまのご期待に添えるよう、微力ながらつとめてまいりますので、よろしくお願い致します。恒例の総館長の歴史講座「楽史の集い」は124日(土)午後に開催の予定です。年末からの番宣や「大河本」の洪水で、早くもいささか食傷気味ではありますが、秀吉の弟・豊臣秀長を取り上げたいと考えております。よろしくお願いします。


2025年11月に開催した総館長の歴史講座「楽史の集い」の様子


2025年12月18日木曜日

博物館おたのしみオンラインツアーを開催しました!

 先週、博物館では、「博物館おたのしみオンラインツアー」を開催しました✨

 このツアーは、対面での体験学習や出前学習が困難な福岡市立の小・中学校の児童・生徒の皆さんを対象としたもので、これまで様々なテーマのもと、常設展示室やみたいけんラボの展示資料を紹介してきました。

今回のテーマは、「福岡城の大きさ比べをしよう」

常設展示室に展示している「正保福博惣図」(江戸時代描かれた福岡の地図)の前からスタートしました。

福岡城のあった場所や、城下町「福岡」と商業都市として栄えた「博多」が「双子都市」と呼ばれていることなどが紹介されました👯


その後、黒田家に関する資料や甲冑などをご紹介。


⬇️常設展示室の甲冑のコーナー。

ここは、定期的に甲冑を入れ替えて展示しています。

 


最後に、福岡城下町の模型を使い、福岡城がどれくらいの大きさなのか、皆さんにイメージを膨らませていただきました。

例えば、大きさくらべ。

Q. 福岡城と熊本城は、どちらが大きいでしょうか

皆さん、どちらだと思われますか?🤔


続いて、

Q. 福岡城と大阪城ではどちらが大きいでしょうか❓

Q. 福岡城と中国の故宮では❓

Q. 福岡城とピラミッドでは

 (答えを知りたい方は、ぜひ展示室でご覧ください😉)


ツアーに参加されている皆さんにも、ご意見をお聞きしました。

なかなか難しい質問に、皆さんの意見も割れ、クイズを出す私たちも楽しいひと時となりました。

オンラインツアーを通して、当館の展示をお楽しみいただき、福岡の歴史や文化、文化財に興味を持っていただけたら大変嬉しく思います。

本ツアーは、福岡市立の小・中学校の児童・生徒の皆さんを対象に行っています。ご興味のある方は、ぜひ福岡市博物館までご連絡ください😊

2025年8月26日火曜日

残暑お見舞い申し上げます


 毎日毎日暑い日が続きます。福岡市博物館総館長の中野です。前々回(5月24日)の「楽史の集い」が終わったあとに更新の予定だったのですが、すっかりサボってしまいました。申し訳ありません。

 さて、「総館長の歴史講座」と冠をつけてリ・スタートした「楽史の集い」は5月・7月と「花押」をテーマに話をしました。事前の広報をご覧になった方から「博物館で押し花の講習をやるのか?」といった問い合わせがいくつかあったそうです。確かに「花押」をひっくり返すと「押し花」にはなりますが、残念ながら当方は「押し花」に関する蘊蓄は持ち合わせておりません。

 「花押」というのは自署によるサインの様なもので、手紙を出す場合などに用いられました。一般の古文書講座などでは、さらっと流されるテーマですが、今回はこれをすこし深掘りしていきました。「花押とは何か?」からはじめ、その歴史や様々なかたち、「花押」の機能や歴史研究に果たす役割などなどを二回に分けてお話いたしました。

講座当日の様子

 「花押」というものをより身近に感じていただきたいと考え、講座の締めくくりとして、参加者みなさんにご自身の「花押」をデザインしていただく時間を設けました。近世(江戸時代)になると、花押の作成にもいろいろな流派がうまれ、難しい約束事がつくられていきます。たとえば、生まれ年の干支によって、花押の線で囲まれた部分(「空穴」と書いて「めど」とよみます)の数に吉凶が生じるといったものです。子年うまれの場合は、「空穴」の数をいくつにすると運勢が開けるが、いくつだと凶運にみまわれるといった具合です。

 こういったことを一々気にし出すと、中々うまくいきませんので、当日は『くずし字辞典』などを利用していただき、お好きな字(漢字に限らず仮名やアルファベット)を基に思い思いに「花押」をデザインしていただきました。限られた時間でしたが、参加されたみなさん大変楽しく、ご自身の「花押」づくりに挑まれていたようです。作品のなかには秀逸なものもいくつかありましたので、折々にこの場で紹介していきたいと思っています。当日参加された方々のご協力をお願いします。

「長」の字をモチーフとした受講者の花押

 さて、次回の「総館長の歴史講座・楽史の集い」は9月27日(土)の午後を予定しております。内容は「関ヶ原合戦」にちなんだものを考えています。7月26日の予告と全く違うものになってしまいましたが、実は9月9日(火)から当館の企画展示室(黒田家名宝展示)で「関ヶ原戦陣図屏風」を展示します。折角の機会ですので、その紹介を兼ねて「関ヶ原合戦」の話をしようかということになりました。ご関心の向きには、是非とも博物館に足をお運びいただければと存じます。開催の時間帯については、博物館のHPや市政だよりなどでご確認いただきたく存じます、併せてよろしくお願いいたします。

福岡市博物館総館長 中野 等