2022年4月29日金曜日

古代エジプト展 ウラ話~その4~ ミイラづくりの技術

2022619日(日)まで開催中の「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」。

展示作業中に担当者が感じたことや、監修の中野智章先生にうかがったお話などから、資料に関するウラ話をご紹介します。

 

今回ご紹介するのは、コチラ!

No.191 センサオスのミイラ

 

このミイラ、ほかのミイラとなんか違うと感じませんでしたか?

なんというか・・・太くてゴツイ。



 

 

 

 

 

 

 

 

復元された顔は、こんなに美人なのに。



 

 

 

 

 

 

 

 

このミイラは1990年代にスキャン調査されています。

その結果、大量の包帯と樹脂が使われ、中に砂が入っていたとのこと!!!

そのせいで、めちゃくちゃ重いんです。

どうしてそういうことに?

 

監修の中野先生によると、

このミイラがつくられたのは、グレコ・ローマン時代のローマ時代109年。

ミイラ作りの技術は廃れかけており、おそらく見よう見まねでミイラを作ったのではないか、とのこと。

 

アレクサンドロス大王のエジプト征服、クレオパトラ7世の死に伴うプトレマイオス朝の滅亡後のローマによる支配を経て、古代エジプト文明がそれまで築き上げ、受け継いできたものが失われつつあった時代。

ミイラそのものよりも、ミイラを飾るマスク等の外観の美しさが重視されていたとも言われています。

 

ミイラづくりという技術の衰退とともに、文明の終焉が見えた気がしました。

 

(古代エジプト展担当)

2022年4月22日金曜日

古代エジプト展 ウラ話~その3~ 棺をリサイクル?!

2022619日(日)まで開催中の「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」。

展示作業中に、担当者が感じたことや、監修の中野智章先生にうかがったお話などから、資料に関するウラ話をご紹介します。

 

今回ご紹介するのは、コチラ!

No.148 ホルの外棺



 

 

 

 

 

 

 

 

  

今回の展覧会のメインビジュアルでよく使われているので、

みなさんも一度は目にされているのではないでしょうか?

 

監修の中野先生から「この棺はここが特徴的なんですよ」と教えていただいた部分を、よーく見ると・・・



 







あれれ。

死者の書でのメインイベントである、心臓を真実の羽と重さ比べするシーンに、心臓がない!!

  

そして、足元の、おそらく死者の名前に関連する場所は、一部が空白・・・。

いったい、どういうことでしょう?



 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回(「古代エジプト展ウラ話その3」参照)、ちょっと触れたように、

エジプトでは棺にするほどの大木の木材は貴重品でした。

棺を作るにも、めちゃくちゃお金がかかる。

そこで、古代エジプト人は考えた。

「そうだ!この棺、別の人にも使っちゃおう!」

 

中野先生によると、こういった棺の再利用が行われていたからか、棺が男性を表現していても、中のミイラが女性の場合もあったり、またその逆もあるとのこと。

 

棺に描かれているのは、死後の世界へ旅立つために必要な「死者の書」。

古代エジプト人にとっては、時に人の棺を借りてまで、とにかく、死後の世界で復活・再生するためにきちんと葬儀を行うことが最重要事項だったのでしょう。

 

古代エジプト人のたくましさと死後の世界への強い想いを垣間見たような気がしました。

 

(古代エジプト展担当)

2022年4月15日金曜日

古代エジプト展 ウラ話~その2~ 重い?軽い?

2022619日(日)まで開催中の「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」。

展示作業中に、担当者が感じたことや、監修の中野智章先生にうかがったお話などから、資料に関するウラ話をご紹介します。

 

今回ご紹介するのは、コチラ!

No.152 金彩のミイラマスク

グレコローマン時代、プトレマイオス朝(前30430年頃)のものです。

 



 

 

 

 

 

 

 

 

  

とても立体的で重厚感のあるこのマスク。

でも、実際は見た目よりもずっと軽いんです。

これは、カルトナージュといって、亜麻布、にかわ、漆喰を重ね合わせてつくられたもの。

福岡の伝統工芸で例えれば、博多張子のようなものでしょうか。

 

エジプトは砂漠地帯が多くを占め、棺等に使う材木は大変貴重なものでした。

今回展示している棺の中にも、カルトナージュで作られたものもあります。

実は他の木棺が重いため、展示をする際に持ち上げた、カルトナージュでできた棺にはあまりの軽さにびっくり。

ひょっとすると、古代の人びとも「軽いなぁ・・・」と思いながら持っていたのかもしれませんね。

(古代エジプト展担当)

2022年4月1日金曜日

古代エジプト展 ウラ話~その1~ 不機嫌な顔の理由

 

2022619日(日)まで開催中の「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」。

展示作業中に、担当者が感じたことや、監修の中野智章先生にうかがったお話などから、資料に関するウラ話をご紹介します。

 

今回ご紹介するのは、コチラ!

No.96 黄金の顔を持つパヘルペンエスの像



 

 

 

 

 

 

って、あれ?

なんだか不機嫌そうな顔してませんか?(注:担当者の主観です。)

 

別の角度からは・・・やっぱり。(再注:担当者の主観です。)



 

 

 

 

 

 

なんかあったのかな?

 

ちょっと失礼して後ろも拝見。

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

えっ?あれっ?!

銘文が刻まれているはずの背中部分が空白!!

何やら下書きらしき線はあるのに。

よく見ると、台座側面のヒエログリフも途中までの書きかけ。

まさかの未完成?!

 

中野先生によると、もともとこの台座はプタハという神の像につけられるタイプで、本当にパヘルペンエスの像に付属していたものかは今後研究の余地があるとのこと。

 

もしかしたら、ちがう台にのせられているから、ちょっと不機嫌な顔なのかぁ・・・(再々注:担当者の主観です。)

(古代エジプト展担当)