毎日毎日暑い日が続きます。福岡市博物館総館長の中野です。前々回(5月24日)の「楽史の集い」が終わったあとに更新の予定だったのですが、すっかりサボってしまいました。申し訳ありません。
さて、「総館長の歴史講座」と冠をつけてリ・スタートした「楽史の集い」は5月・7月と「花押」をテーマに話をしました。事前の広報をご覧になった方から「博物館で押し花の講習をやるのか?」といった問い合わせがいくつかあったそうです。確かに「花押」をひっくり返すと「押し花」にはなりますが、残念ながら当方は「押し花」に関する蘊蓄は持ち合わせておりません。
「花押」というのは自署によるサインの様なもので、手紙を出す場合などに用いられました。一般の古文書講座などでは、さらっと流されるテーマですが、今回はこれをすこし深掘りしていきました。「花押とは何か?」からはじめ、その歴史や様々なかたち、「花押」の機能や歴史研究に果たす役割などなどを二回に分けてお話いたしました。
講座当日の様子 |
「花押」というものをより身近に感じていただきたいと考え、講座の締めくくりとして、参加者みなさんにご自身の「花押」をデザインしていただく時間を設けました。近世(江戸時代)になると、花押の作成にもいろいろな流派がうまれ、難しい約束事がつくられていきます。たとえば、生まれ年の干支によって、花押の線で囲まれた部分(「空穴」と書いて「めど」とよみます)の数に吉凶が生じるといったものです。子年うまれの場合は、「空穴」の数をいくつにすると運勢が開けるが、いくつだと凶運にみまわれるといった具合です。
こういったことを一々気にし出すと、中々うまくいきませんので、当日は『くずし字辞典』などを利用していただき、お好きな字(漢字に限らず仮名やアルファベット)を基に思い思いに「花押」をデザインしていただきました。限られた時間でしたが、参加されたみなさん大変楽しく、ご自身の「花押」づくりに挑まれていたようです。作品のなかには秀逸なものもいくつかありましたので、折々にこの場で紹介していきたいと思っています。当日参加された方々のご協力をお願いします。
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「長」の字をモチーフとした受講者の花押 |
さて、次回の「総館長の歴史講座・楽史の集い」は9月27日(土)の午後を予定しております。内容は「関ヶ原合戦」にちなんだものを考えています。7月26日の予告と全く違うものになってしまいましたが、実は9月9日(火)から当館の企画展示室(黒田家名宝展示)で「関ヶ原戦陣図屏風」を展示します。折角の機会ですので、その紹介を兼ねて「関ヶ原合戦」の話をしようかということになりました。ご関心の向きには、是非とも博物館に足をお運びいただければと存じます。開催の時間帯については、博物館のHPや市政だよりなどでご確認いただきたく存じます、併せてよろしくお願いいたします。
福岡市博物館総館長 中野 等