2018年9月3日月曜日

浄土九州展ブログ 西方に極楽あり その16:窮鼠猫を拝むの巻

むかしむかし、筑前は博多の萬行寺(まんぎょうじ)という大きなお寺であったお話。

ある夏の日暮れのことじゃった。住職が飼っていた三毛猫のところに急に鼠が一匹出てきて、猫とばったり鉢合わせしたそうじゃ。

萬行寺蔵「猫鼠之図」(見つめ合ったまま動かない二匹)
二匹はしばらく互いに見つめあったままじっとしていたそうじゃが、そのうち鼠が猫に近寄って何かを話すように口を動かし、中腰になって片手で拝むような仕草をしたそうじゃ。すると猫は一声鳴き、鼠は頭を地に着けてまた片手で三度まで猫を拝んだそうじゃ。


萬行寺蔵「猫鼠之図」(片手で猫を拝む鼠)
そして今度は、鼠が両手を合わせて二度猫を拝み、また猫は一声鳴いたそうじゃ。そのあと二匹は別れてどこかへ行ってしまい、二度と帰らなかったそうじゃ。

昔から子を身ごもった鼠は猫といえども喰わずというが、それにしても珍しいことなので、住職はその出来事を絵師に頼んで残すことにしたそうじゃ。

以上は、萬行寺に伝わる宝永6年(1709)の「猫鼠之図(ねこねずみのず)」に描かれたお話です。今ならとりあえずスマホで動画撮影というところですが、300年前の何気ない日常の出来事が見られるのは博物館だけって、皆さん知っていましたか?

あ、それから浄土九州展の出品一覧(展示替え予定付)をアップしましたので、ご来場の際は確認してお越し下さいね。
http://museum.city.fukuoka.jp/exhibition/pure_land.html

Posted by 末吉(浄土九州展担当学芸員)

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