文字で茶席を彩る
茶室の中心をなすのは床(とこ)であり、そこに飾られる掛物(かけもの)は茶道具のなかでもっとも珍重されます。茶会の趣向に即して、もっともふさわしい絵や和歌や書が選ばれました。ことに禅僧の手になる墨(ぼく)蹟(せき)は、一(いち)座(ざ)建(こん)立(りゅう)の本(ほん)尊(ぞん)として、亭主と客を取り結ぶ精神的象徴となりました。
本展では、福岡市博物館が所蔵する書跡・古文書コレクションの中から、禅僧の墨蹟や博多ゆかりの茶人の書を紹介します。
古来、様々な外国文化流入の窓口として栄えた博(はか)多(た)は、全国に先駆けて抹(まっ)茶(ちゃ)式喫(きっ)茶(さ)法(ほう)が中国から持ち込まれ、日本に喫茶文化を普及させた栄(よう)西(さい)の由緒の地としてもよく知られています。十六世紀後半、上(かみ)方(がた)で侘(わび)茶(ちゃ)が流行するのと同じ頃、博多において嶋(しま)井(い)宗(そう)室(しつ)・神(かみ)屋(や)宗(そう)湛(たん)という二人の豪(ごう)商(しょう)茶人が登場し、天(てん)下(か)人(びと)や当代を代表する茶人たちと親しく交流しました。また、福(ふく)岡(おか)藩(はん)祖(そ)・黒(くろ)田(だ)如(じょ)水(すい)(孝(よし)高(たか))は豊(とよ)臣(とみ)秀(ひで)吉(よし)から茶の湯の政治的効用を教えられ、利休(りきゅう)流の侘茶に傾倒しました。
墨蹟とともに、桃山時代を代表する千(せん)利(のり)休(きゅう)・古(ふる)田(た)織(おり)部(べ)・小(こ)堀(ぼり)遠(えん)州(しゅう)の消息や、彼らと親交のあった黒田如水・嶋井宗室など博多ゆかりの茶人の書を通して、茶の湯の精神性の一端に親しんでいただければと思います。
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