2020年7月23日木曜日

〔連載ブログ5〕外出自粛「しなかった」モノ

こんにちは

今年の夏はなかなか旅行や帰省の計画が立てられないですね。
当館でも、今年度はお出かけだ!と準備を進めていたのに、計画変更になってしまったモノが色々と出てきてしまいました。(これについてはぜひ連載ブログ4をご覧ください。)
一方で、この状況でも無事に出張をして、お仕事(展示)中の資料もあります。今回は特設展示「やまいとくらし」の中の第2部「『外出自粛』したモノたち」番外編!ということで、外出自粛「しなかった」モノについて書いてみたいと思います。

臨時休館中のある日、机の上に「常設展でタイムリーな顔、展示してなかったっけ?」というような伝言が先輩(在宅勤務期間ですれ違い出勤中)から残されていました。その「顔」、というのが、まさに外出中のモノ2点、人形(ひとがた)と人面墨書土器です。

人形(ひとがた)と人面墨書土器は、古代の出土品として奈良や京都を中心に全国的に発掘されるもので、漫画のようなタッチで描かれる顔は1点1点がとても個性的です。先の伝言で出てきた「顔」も、しかめ顔や目尻が下がったちょっと困ったような顔、

土器に描かれた顔。眉をぐっと寄せて、への字の口……にらみ顔にもみえます。

一方で表情が読み取れない朴訥(ぼくとつ)な雰囲気の顔となかなかに親しみが持てる表情をしています。

こちらは人形のお顔。顔に対して遠慮がちな鼻と口。

さて、タイムリーというのも、これらは奈良・平安時代に災厄を除けるために使われたものだからです。悪いことをこの人形(ひとがた)や土器に移して川に流し、捨てることで、お祓いするという使われた方がされたと考えられています。このふたつも高畑遺跡(博多区)の、奈良時代の歴史書に使われた大きな溝の跡から見つかっていますので、何かの災厄除けとして役目を果たしたものでしょう。
また同じく奈良時代、『続日本紀』の天平7年(735)、同9年(737)の記録には、九州で疫病が蔓延し、それが全国的に広がっていった様子が残されています。

「この頃、大宰府では疫病で亡くなる人が多い」「大宰府が管轄する国々に疫瘡(天然痘)が大流行して、(人々が多く病床についた)」と書かれています。(『続日本紀』天平七年八月の記事より)


福岡の古代に関する病とお祓い、それに関係するモノにスポットをあてるチャンスだと先輩はメモを残してくれたわけです。

とある日の常設展示室。コレとコレのことですよね……!
「そうなんですよ、でも……!」このふたつは「タイムリーな(のに今だけ常設展示室にいない)顔」なのです。

さて、当館から電車で1時間と少し、九州国立博物館で8月30日まで開催中の特集展示「筑紫の神と仏」には、この顔たちが出張しています。

チラシには見たことのある顔が……!(画像は上記HPよりお借りしました。)

資料を出張させるのは、多くの人にそのモノを知ってもらい、興味を持ってもらうチャンスにもなります。昨年の段階から、「古代の人々が祈りを捧げた痕跡」としてこのふたつのモノに着目をしていただいて、この春、展示の準備にあわせて当館の常設展示室から姿を消していたところでした。なんとタイムリー……。

というわけで、タイミングを逃してきていましたが、今回の特設展示「やまいとくらし」につながっているぞということで、思い切ってご紹介してみました。いつもはお出かけするモノはそっと見送り、そっと注目するのが常ですので、このように紹介させてもらうというのはちょっとした冒険です。きゅーはくさん、どうもありがとうございます。

ところで、日々見慣れている資料が違うところで展示されている姿は、とても新鮮に映るものです。どのような展示内容の中でどのようなモノたちに囲まれて展示されているのか、という点はもちろんのこと、置かれている向き、高さ、ライトの当て方が、次に自身で展示するときのイメージに組み込まれていきます。
このブログで、外出中のモノたちにちょっとでも興味を持っていただけましたら、そして展示中の九州国立博物館へ、秋以降は常設展示室で(きっとアップデートして)展示されている当館へ本物を見に足を運んでみようかなと、ちょっとでも思っていただけましたら嬉しいです。

現在の展示室。外出中の「顔」は秋になると、ここに戻ってくる予定です。
(学芸課 佐藤)
福岡市博物館は今年で30周年

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