2026年2月22日日曜日

「魔法の歴史スコープ」鑑賞ガイド 第5回 大土木工事の末に”福岡”が誕生

   福岡市博物館では、2026221日(土)から412日(日)まで、特別展「魔法の歴史スコープ~見つめてみよう福岡の今~」を開催しています。「人と環境の関わりの歴史」に焦点をあわせて、「今」そして「未来」を考える展覧会です。

このブログでは、展覧会を楽しむためのアレコレを紹介したいと思います。

前回、「福岡に人がくらし始めたのは3万年以上前」という話をしました。

 ところが「“福岡”に人がくらし始めたのは400年前」なのです!!

 ここでいう“福岡”は城下町・福岡のことです。

 1600年の関ケ原の戦の後、黒田家が福岡を治めることになり、福岡城と城下町を築き上げました。発掘調査によると、城下町・福岡には、それ以前に、人びとがくらしていた痕跡がほとんどないのだそうです。

この写真は、江戸時代前期の福岡・博多の様子を描いた「正保福博惣図」です。福岡城から海側に広がる町が城下町・福岡です。城下町・福岡の右上には、那珂川と中洲を挟んで博多の町があります。さらに博多の町の右上には、御笠川を挟んで松林が広がっています。

城下町が築かれたのは、もともとは砂地や湿地で、人がくらすには不向きな場所でした。20cmから1mほど盛り土をして町を整備していたことが分かっています。大土木工事の末に、城下町・福岡は築かれていたのです。

さて、この「正保福博惣図」、普段は博物館の常設展示室で、壁面に出力したものをご覧いただいていますが、特別展「魔法の歴史スコープ」では、久々に本物を展示しています。巨大すぎて、なかなか展示する機会に恵まれず、2002年の特別展「福岡築城400年記念 黒田家 その歴史と名宝展」以来、24年ぶりの大公開です。次の公開はいつになることやら……。

 ところで、常設展示室壁面の「正保福博惣図」と本物の「正保福博惣図」には大きな違いが一つあります。それは……。常設展示室と特別展示室の「魔法の歴史スコープ」を両方みて、お確かめください。
 特別展「魔法の歴史スコープ」の観覧券には、常設展・企画展の観覧券がセットになっています。

(by おーた)

2026年2月18日水曜日

Do history! 「歴史」をやろう!

 こんにちは、博物館総館長の中野です。前回の総館長歴史講座「楽史の集い」は「ネタばれ大河ドラマ 豊臣秀長について」と題して、123日に実施しました。折から特別展「ディズニーアニメーション・イマーシブエクスペリエンス」の開催中で、2階のミュージアム・モールは入場待ちのお客様が周回するほどの、まさに長蛇の列でした。講座をやる喫茶・談話室は、一転閑古鳥が鳴いているかと思いきや、なんとこちらも70大盛況で、参加者数の新記録達成ということになりました。さすがにNHKの大河ドラマ人気は大したものです。ありがとうございました。

講座の様子

 講座は、豊臣秀吉・秀長兄弟が歴史の表舞台に登場する前の、いわば「有史以前」をとりあげました。歴史学の立場からすると、「この時期の豊臣兄弟については何も分かりません」ということになります。秀吉は自身の権威に見合った出生のストーリーを新たに描こうとして、殊更に父親の存在を打ち消そうとしていようにも思えます。確実な史料もないなかで、闇雲に進んでいけば道に迷うだけのような気がしています。とはいえ、だからというべきかもしれませんが、ドラマでは二人の前半生がとても面白く描かれているようです。

 大学に象徴されるアカデミックの世界は、このような歴史ドラマとの間に距離をおいていた頃もありましたが、最近はどうでしょう。ある調査での「歴史に興味をもったきっかけは?」との問いに、実写ドラマや映画などという回答が最も多かったそうです。米国における「SHOGUN 将軍」の大成功などを考えると、こうした傾向はさらに高まっていくものと想像されます。もはや「いい加減なつくり話」といったレッテルを貼って、孤高を気取っているような時代ではないのです。

講座の様子

 大河ドラマの例をあげるまでもなく、「歴史」や「文化」は、実は市民生活の身近にあるものなのです。私見にはなりますが、博物館も一緒になって歴史ドラマを楽しんでいいのではないでしょうか。すこし難しい表現になりますが、こういう姿勢を歴史実践(do history)と言います。今回のタイトルです。前回の講座は「有史以前」を取り上げましたが、大河ドラマの進行にあわせて、引き続き(断続的に)豊臣兄弟をテーマとして取り上げていこうと思っています。よろしくおつきあいください。

 さて、次回はすこし視点を変えて「おなまえ」の歴史に迫っていきます。講座でも触れましたが、最近は「豊臣秀吉」ではなく「羽柴秀吉」というのが正しいという説も唱えられています。「豊臣」は氏(うじ)ないし姓(かばね)で、「羽柴」は苗字(名字)です。現在では苗字(名字)も氏も姓も同じものを指しますが、歴史的にみるとこれらは全然別のものになります。ここが整理できないと、「豊臣秀吉」と「羽柴秀吉」の違いもわかりません。次回は、こんなところから、身近な「歴史」に迫ってみたいと考えています。乞うご期待!!

2026年2月7日土曜日

「魔法の歴史スコープ」観賞ガイド 第4回 ドングリの話

  福岡市博物館では、2026221日(土)から412日(日)まで、特別展「魔法の歴史スコープ~見つめてみよう福岡の今~」を開催します。「人と環境の関わりの歴史」に焦点をあわせて、「今」そして「未来」を考える展覧会です。

このブログでは、展覧会を楽しむためのアレコレを紹介したいと思います。


福岡市博物館の常設展示室 縄文時代の資料がならぶケースのなかに土器に山盛りになったドングリがあります。

 実はコレ、4000年前のドングリなのです。福岡市南区野多目の遺跡で発掘されました。水漬けになっていたために、奇跡的に4000年前の形を保った状態で見つかったのです。

 

ところで、福岡に人がくらし始めたのは、3万年以上前のことです。その頃は、地球全体が寒冷な氷期で、平均気温は今より7℃ほど低かったようです。人びとは獲物を追って移動するくらしをしていました。

1万5000年くらい前になると、氷期は終わり温暖化がはじまります。このあと1万年以上つづく縄文時代のはじまりです。温暖化によって海面が上昇し、対馬海峡は広くなり、日本海側には南から暖流が流れ込むようになりました。変化は、植生にもおよび、西日本では常緑広葉樹の森が広がりました。

そこで、ドングリです。ドングリは、ブナ科の木の実の総称です。多くのドングリは、アク抜きをしないと食べられないのですが、イチイガシのドングリはアク抜き不要!!食料に適したスグレモノです。先程の4000年前のドングリは、まさにこのイチイガシの実なのです。

イチイガシは常緑の高木。伐採して材木として使いたくなるところですが、大事な食料になる実をつける木を簡単に切り倒すわけにはいきません。縄文時代の人びとは、毎年たくさんのドングリがなるイチイガシの木を大切しながらくらしていました。

ところが、ドングリよりステキな食料が手に入るようになると、状況は一変。縄文時代の終わりごろに稲作が伝来すると、人びとはドングリよりコメを好んで食べるようになります。コメを作るためには、農具が必要になります。その農具の材料として適していたのが、イチイガシなどの堅くて丈夫な木でした。

それまで大事にしてきた木を伐採して農具をつくり、せっせとコメ作りを始めたのです。そして、弥生時代の初め頃には、福岡平野のドングリの木は伐りつくされてしまったようなのです。

 

このドングリの話は、縄文時代から弥生時代の福岡で、人びとの営みが、環境の変化につながった一例です。

特別展「魔法の歴史スコープ」では、「人と環境の関わりの歴史」を紹介します。

(byおーた)

2026年2月3日火曜日

「魔法の歴史スコープ」観賞ガイド 第3回 2月28日(土)がスゴイらしい

  福岡市博物館では、2026221日(土)から412日(日)まで、特別展「魔法の歴史スコープ~見つめてみよう福岡の今~」を開催します。「人と環境の関わりの歴史」に焦点をあわせて、「今」そして「未来」を考える展覧会です。

このブログでは、展覧会を楽しむためのアレコレを紹介したいと思います。


 特別展「魔法の歴史スコープ」の会期中は、毎週土曜日の午後2時から担当学芸員による展示解説があるなど、イベント盛りだくさんなのですが、特に、

228日(土)がスゴイ!!

担当学芸員による展示解説はもちろんのこと、

10:3011:30 キッズ向けのギャラリートーク「スコープを展覧会探検forキッズ」

13:3015:00 ワークショップ「2000年後の福岡を発掘しよう!」

 

そして、きわめつけは「古代フェスin福岡市博物館」(10:0016:00



「九州の考古は楽しい!」をモットーに活動されている「コダイプレス」さんの人気イベントが、福岡市博物館で初開催なのです。

「古代フェス」ならではの魅力的なグッズの販売や、ユニークなメニューのキッチンカー、「魔法の歴史スコープ」担当学芸員Aが登場する「古代トーク」などなど

ワクワクするイベントがてんこ盛りです。

※「古代トーク」のみ、事前予約(2/7から受付開始)が必要です

詳しくは「古代フェス」で検索を!

 

老若男女問わず楽しめる1日になること間違いなしです。

また、「魔法の歴史スコープ」の観覧券には、常設展・企画展の観覧券もついているので、

常設展示室で国宝 金印「漢委奴国王」、

企画展示室で期間限定公開中(2/13/1)の国宝 太刀 名物「日光一文字」を

じっくり鑑賞することもできます。

みなさんのお越しをお待ちしています。

(by おーた)