2019年11月26日火曜日

「江戸」と「博多」のつくられたイメージ ―福岡市史講演会を開催しました

 さる10月5日(土)、講堂において、第15回福岡市史講演会を開催しました。
 市史講演会には年に一回、だいたい秋ごろの開催で、毎年多くの聴講者の方がお越しくださいますが、今回はとくに早々の満席となりました。

写真:講演会中の講堂。館長による最初の挨拶
まずは恒例、館長からのごあいさつ

 「近世都市の記憶―江戸と博多、そのイメージを問う―」と題した今回の講演会では、おふたりの先生を講師にお招きし、それぞれのご専門から、江戸と博多について語っていただきました。

 まず岩淵令治先生によるご講演「幸せな江戸像を問う」。
 現在のイメージの「江戸」と、近世期の江戸の実態との乖離を、当時の資料をふんだんに、たくさんの事例からお話しいただきました。

岩淵令治先生
写真:登壇する岩淵令治先生
江戸はリサイクル都市? 豊かで清潔? それってホント?

 次に中野等先生によるご講演「近世における「博多」ブランドの消長」。
 近世期、「博多」ブランドとして台頭する工芸品や食品について、どのようにその由緒が語られてきたのか、資料を追って詳しくお話しいただきました。

中野等先生
写真:登壇する中野等先生
唐織物、博多練酒、博多素麺、博多こま…

「江戸って世界でも先進的な都市だったんだよね」「博多は昔から貿易都市だったから、こういう品が生まれたんだよね」という具合に、つい前提としてしまいがちな、固定化されたイメージについて、もう一度問い直す講演会。どなたにとっても新しい発見があったのではないでしょうか。

 ご講演くださった講師の先生方、講演会にお越しくださったみなさま、ありがとうございました。

 なおこの講演会の様子は、来年の春ごろに発行される研究誌『市史研究 ふくおか』第15号に掲載される予定です。『市史研究 ふくおか』は非売品ですが、福岡市内をはじめとする自治体の図書館などでご覧いただけます。

 発行までしばらくお時間をいただきますが、行きたいけど行けなかった! という方は、どうぞお楽しみに。


 ちなみに…、
 シリーズ『新修 福岡市史』の「資料編 近世3 町と寺社」では、福岡・博多の町人や城下の寺社に関する資料を掲載しています。


『新修 福岡市史』「資料編 近世3 町と寺社」

博多商人である神屋宗湛・伊藤小左衛門に関する資料、挿し絵と文で福博のニュースを面白おかしく描いた「旧稀集」や、松囃子・山笠といった祭りに関する資料、神社や寺院の由緒書など、近世期の城下町の暮らしがうかがえる資料集になっています。

 (「資料編 近世3」概要・目次
  https://www.city.fukuoka.lg.jp/shishi/kankou15.html )

 今回の講演会で、江戸期の福岡に関心が深まったという方にもぜひおすすめしたい一冊。古文書の翻刻ですが、挿し絵も多くわかりやすい内容になっています。

 当博物館ミュージアムショップをはじめ、ジュンク堂書店福岡店さん、丸善博多店さんなどで販売されていますので、よかったらお手に取ってみて下さい。

●「新修 福岡市史」HP https://www.city.fukuoka.lg.jp/shishi/

(Posted by たに)

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