私の名前は金印ちゃん。今からだいたい2000年前、中国の都だった洛陽で生まれ………って自己紹介はもういいわよね〈註1〉。福岡市博物館の看板娘!みんな私のこと知ってるでしょう?
註1 金印ちゃんの自己紹介はこちら↓
http://fcmuseum.blogspot.com/2020/11/blog-post_13.html
普段は博物館の常設展示室ってところでお仕事してるんだけど、しばらくの間、福岡市美術館ってところにお出かけしてたの〈註2〉。昔のお友達がたくさんいるのよ。何もせずに居候ってわけにもいかないから、こっちでもお仕事したわ。私が来てること、どこで聞いたのか知らないけど、いくつか取材も来たんだから。どこにいても注目の的ね。
お客さんの中には博物館にいるのは私のそっくりさんで、今回初めて本物が見れたって思った人もいるみたいよ〈註3〉。博物館でも頑張ってるのに、失礼しちゃうわ。いつも私の美しさをうまく表現できていないってことなんじゃない?もうちょっと頑張ってほしいわね。
註2 金印ちゃんの家出編はこちら↓
http://fcmuseum.blogspot.com/2020/12/blog-post_17.html
註3 博物館で常設展示している金印は、レプリカと間違われることが多い。
そうそう、博物館から出て行って何か月も経ったんだけど、こないだやっと連絡が来たのよ。「そろそろ戻って来てほしい。」って。“そろそろ”じゃないわよ、まったくもう。出ていくときに引き留めなさい。乙女心のわからない人たちね。
まあ、いいわ。私がいない間に、お部屋もきれいにしてくれたみたいだし、お休みのとき用のベッドも新しく買ってくれたそうよ。前のベッドも50年以上使ってて、気に入ってたんだけど、ちょっとあちこちガタがきてて・・・。もし寝てる間に壊れて落っこちちゃったら痛いじゃない?少し丈夫になったのよ。
そんなこんなで、また博物館でのお仕事することにしたわ。今はいろいろと暗い世の中だけど、私の輝きで明るく照らしていきたいわね。きっとまた活気が戻ることを信じて、頑張っていきましょう!
これからもよろしくね。会いたくなったら、私はいつでも待ってるわ。じゃあ、またね。
コクホー「漢委奴国王」金印ちゃん ―完―
(学芸課 あさおか)