2021年12月9日木曜日

緊張の瞬間~金印の取り扱い~

 

福岡市博物館では現在、NHK福岡放送局が金印を8Kカメラで撮影し、制作した『国宝へようこそプチ「漢委奴國王」金印』を8Kモニターで上映中です。また、これに合わせ、常設展示室にてミニ企画展示『「金印」旧国宝指定90年』を開催中。この期間中、本ブログでは金印にまつわるちょっとしたお話を紹介していきます。

 

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福岡市博物館で金印のことを担当していると、お客様から「本物の金印に触ってみたい。」というお話を聞くことがよくあります。そんなとき、私たちは心の中で「いやいや、金印を触るのって、ものすごい精神的ストレスですから!!」と言いたくなる。今日はそんなお話です。

 

国宝 金印「漢委奴國王」は、平成2年の福岡市博物館の開館以来、常設展示室の目玉のひとつとして展示されてきました。数年に一度、他館に貸し出すとき以外は基本的に本物を展示しており、動かすことは稀ですが、調査や撮影などの際に動かさなければならないことがあります。その手順は以下のようになります。

 ①厳重な警備のスイッチを切る(詳細は秘密です)

 ②展示ケースを開ける(やはり、詳細は内緒です)

 ③金印を手で持ち上げ、専用の箱に収納する

(この箱は常設展示内ミニ企画展示『「金印」旧国宝指定90年』で初公開中です!)

④運ぶ

 

まず緊張するのは持ち上げるとき。息を止め、ゆっくりと持ち上げます。もし落としたり、どこかにぶつけでもしたら、どうなることか……想像したくもありません。高さは2.2㎝で、印面幅は2.3㎝。単独の指定としては最も小さい国宝である金印は、非常に持ちづらく、おまけに見た目よりも重い(金なので)。2000年前の製作時には、ツマミの部分に紫色の帯紐がつけられ、それ無しで持ち上げることなんて想定されていません。しかも、近年はマイクロスコープによる詳細な観察・記録がなされており、少しでも新しい傷がつこうものなら、すぐにわかってしまいます。

さらに、ほぼ純金ということで、意外と傷つきやすい金印。すでにいくつかある目立つ傷のうち、いくつかは弥生時代や江戸時代のおっちょこちょいな人が落としてつけた傷かもしれません。

 

さて、箱にいれた後も緊張は続きます。運ぶ作業は必ず複数人で行い、箱を持つ人とサポートする人に分かれます。持つ人は箱を両手でしっかりと持ち、絶対に転んではいけません。階段は使いません。絶対エレベーターです。絶対です。作業中もひとときも目が離せません。

 

そんな感じで、意外と楽しいものではない金印を扱う作業。

最新の8Kカメラは、そんな金印を扱う学芸員の手の緊張まで捉えることができたのか!?

NHK制作『国宝へようこそプチ「漢委奴國王」金印』は、1226日(日)まで福岡市博物館2階にて、8Kモニターで上映中です。 

 


                    

                                                                                                                       (学芸課 朝岡)

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