福岡市博物館ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
前回に引き玄界島と博物館の活動のこれまでのあゆみをご紹介します。
前回のブログはこちら → 福岡市博物館ブログ: 博物館出前学習 玄界小学校編 その1 (fcmuseum.blogspot.com))
玄界島の皆さんと博物館とのお付き合いは、昭和47(1972)年に開館した福岡市立歴史資料館時代まで遡ります。同資料館は、昭和53年に玄界島の考古・歴史・民俗資料の所在確認調査を行い、昭和60年に企画展「海に生きる」を開催しました。
これらと並行して、玄界島の皆さんのご協力をいただき、くらしの聞き書き調査や付近の海底調査を行う中で、漁具や生活道具などの民俗資料が福岡市に寄贈されました。
これらの資料は平成2年の福岡市博物館の開館に伴い引き継がれ、さらに新たな寄贈資料も加わって、今日に至るまで玄界島の歴史と文化を伝える資料が少しずつながらも拡充されてきました。
それまでの取組みに大きな変化が起こったのは、平成28(2016)~29年度に博物館が実施した「博多湾岸《金印ロード》プロジェクト」がきっかけでした。この事業では、島の皆さん特に子どもたちと博物館が協同して、市内の島しょ部の歴史・文化を博物館から、あるいは現地から発信する取り組みを行いました。
そこで翌年3月には、福岡市博物館として初めて、寄贈された資料を里帰りさせる取り組み「おでかけ博物館in玄界島『玄界島の記憶と記録』」を行いました。
玄界島の集会所を会場に、2日間にわたって里帰り資料の展示、福岡市立歴史資料館時代に海底調査を行った当時の職員らを招いての水中考古学講座、小学生よる高齢者への聞き書きワークショップなどを行いました。
里帰り展示の時間は、漁師さんの生活リズムに合わせて初日は午後2時から夜の9時までに設定し、2日目は午前9時から午後3時までとしました(両日ともに開場前から玄関で待機されていた方も!)。会場では、かつて実際に道具を使っていた皆さんが、それらの道具の使い方を子どもたちに身振り手振りを交えながら熱心に語る姿がみられました。
またこの時、地震の被害から免れた古文書や武具、あるいはかつてのくらしの道具をお持ちいただいた方々もあって、それら貴重な資料が博物館へ新たに収蔵されることになりました。
こうした事業を通して、玄界島の皆さんと博物館は、着実に新たな関係を深めてきました。
もうひとつのエポックは、令和3(2021)年8月15日に行った玄界島の盆綱引き調査でした。折しもコロナ禍にあって、博物館職員にとっては久しぶりの玄界島でした。
偶然お会いした玄界中学校の校長先生とお話しをするうち、博物館資料の特別観覧制度の話題になりました。これは博物館に保管されている現物の資料を、調査研究等のために特別に見ることのできる制度です。玄界中学校ではさっそくこの制度を利用し、10月に生徒さんたちが、恒例の博物館体験学習に来館された際に、玄界島沖の海から引き揚げられた磁器や、島の生活資料を見ていただきました。
この日は、玄界島にいらっしゃる先生方にも参加していただくために、オンラインで中学校とつなぎ、ハイブリッドの閲覧形式をとりました。資料の中には生徒さんたちが初めて見るものもありますが、素材を変えて今も使用されている漁具もあります。生徒さんが道具を手に取り「ウニの中身をこうして分けるための道具です」と引率の先生方に説明する場面もあって、普段とはまた違う生徒の一面を見て先生方が驚かれる場面もありました。
その1でご紹介した玄界小学校への出前学習は、これまでの博物館との交流のなかで形となったものでした。
私たち博物館職員にとっては、資料や聞き書きの情報などを活用した新たな交流を通して研究につながるヒントを得られています。それらの集まった情報は、地域の歴史文化の財として形になることもあります。
地域の課題に、博物館が持つ文化財や知財などをどのように役立てることができるか。玄界島の皆さんとの交流をさまざまな形で続けながら、博物館ができることをこれからも一緒に考えていきたいと思います。
玄界島についてはこちらから 玄界島自治協議会ホームページ http://genkaijima.com/
玄界島に関係する展示のアーカイブはこちらから 企画展示「島とくらし-玄界島-」http://museum.city.fukuoka.jp/archives/leaflet/512/index.html
(文責:河口綾香 補助:松尾奈緒子)
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