総館長就任にあたって
有馬学前総館長の跡をうけ、今年4月1日付で福岡市博物館総館長に就任いたしました。専門は戦国時代から江戸時代の日本史で、特に豊臣政権を中心に研究をおこなってきました。現在の福岡市域に関する研究成果として、戦国時代の末期に立花山城に拠って島津氏と戦った立花宗茂や、福岡藩黒田家の家祖黒田孝高(官兵衛・如水)の伝記などを著しています。また、九州大学の定年退職を機に、豊臣秀吉による九州平定の過程を単著にまとめ、薩摩から凱旋した秀吉が博多・箱崎で様々な重要政策を打ち出したことを論じました(『関白秀吉の九州一統』)。
私が研究している秀吉の時代に限らず、原始・古代から現代に至るまで、現在の福岡市域は日本列島の歴史上とても大きな役割を果たしてきました。このような地に設けられた福岡市博物館の総館長という仕事はとても魅力的なものです。しかし、同時に大きな責任を感じざるを得ません。さまざまなデジタルコンテンツが開発され、加速度的に普及していったことで、我が国はいうまでもなく世界中のおそらくすべての博物館(美術館や動植物園、水族館などを含む)が大きな岐路に立たされています。コロナ禍という未曾有の事態は、これに拍車をかけるものでした。さまざまな技術革新を伴いつつ驚異的なスピードで変化していく現実を前に、未来志向の博物館像を模索し、提示していくことは相当にハードな営みとなります。
加えて、福岡市博物館は開館から三十余年を経た、リニューアル事業という喫緊の課題も抱えております。もちろん、これは老朽化した設備の改修などにとどまるものではありません。上記の課題を踏まえた、より根本的・本質的な構造改革が求められているといってよいと思います。
このように、「やるべきこと」「やらなければないないこと」は山積ですが、であるが故に「文化都市」福岡にふさわしい博物館という原点に立ち帰ることも必要ではないでしょうか。就任して間もないこともあり、不案内なことばかりですが、しばらくはこの原点に視座を据えつつ、楽しみながら福岡市博物館の近未来像を模索したいと考えております。以上、簡単ではありますが、総館長就任の挨拶に代えさせていただきます。
0 件のコメント:
コメントを投稿