2018年7月23日月曜日

浄土九州展ブログ 西方に極楽あり その10

鬼を知り、悟りに至る。

展覧会の開催まであと2ヶ月を切りました。この時期になると、担当学芸員は様々な業務に追い立てられ、完全にお尻に火が付いた状態になります。お尻の火が熱すぎて、近頃の暑さなんてまったく気にならいぜ、ヒャッハー。

ほんと、毎日ヤバイあついですよね。さて、その最大の原因は何かというと・・図録(カタログ)の執筆です。カタログ(Catalogue)の語源は「分類する」という意味の古代ギリシャ語「カタロゴス」である、と何かの本で読んだことがあります。しかしそんなCoolなことを言っている場合ではなく、一日も早く写真を集め、作品解説の原稿を書いて入稿しなければなりません。

今回は140件(200点)の作品・資料を展示しますが、そのうち約100件を自分で執筆します。1日10件書けば10日で出来るモン、なんてうそぶいてみても輸送や会場設営の打ち合わせ、様々な事務処理や雑用に追われて1日5件が精いっぱいです。作品解説というのは簡単なようで実は非常にしんどい作業です。先行研究を読み込んだうえで作品を正しく理解せねばならず、例えるなら相撲を一番一番とるような感じでしょうか。

そんなことをしていると「鉄人デザイナー」ことH氏からは、連日のように容赦ない督促のメールや電話が来ます。H氏とはこれまで何度も仕事をしてお互い〝体育会系〟な感じで気心は知れているのですが、今回も絶対試合に勝たせる鬼コーチのように「オラオラ~!」とやられています(アザース!)。たぶん「こんなブログ書いている暇があったら原稿出さんかい」と思っていることでしょうが、どうかご勘弁を。

ところで、鬼といえば今回展示する飯塚市・西光寺の「五趣生死輪図(ごしゅしょうじりんず)」を紹介しておきましょう。

西光寺 五諏生死輪図
「無明」の鬼

仏教で説かれる「輪廻(りんね)」をあらわした江戸時代の仏画ですが、その中に「無明(むみょう)」(無知)という人間の苦悩の根源を象徴する鬼が描かれています。金棒を持つポーズがなかなかきまっていますが、この鬼はすべての人の中にいて、それを知ることが苦悩の世界を脱する第一歩だということを教えているのだそうです。

鬼を知り、悟りに至る。図録もまたしかり。

Posted by 末吉(浄土九州展担当学芸員)

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