2018年8月14日火曜日

浄土九州展ブログ 西方に極楽あり その13:してしま王

この時期になると「展覧会の準備もいよいよ佳境(かきょう)ですな」と、よく同業者に言われます。この場合の佳境はお盆とか夏休みとか関係ない〝世間とは隔絶した別世界〟という意味かもしれません。

それはさておき(正気に戻って)、今回は展示図面の話をしましょう。

集めた作品をいかに適切に配置し、展示するかは展覧会の成否を左右する大きな問題です。そう、いい作品を工夫もなく展示してあるのを見ると怒りと悲しみがこみあげてきて、心の中で「作品を生かすも殺すも学芸員の腕次第ィィィィィィ!!」 (ジョジョ風)と叫んでしまいますね。

そうならないために、造作業者さんと何度も打ち合わせを重ねて展示図面を作り上げていくのですが、実は展覧会の準備でいちばん夢があって楽しいのがこの仕事だと思います。例えるなら、まっさらの土地に自分の家を建てるような感じです(もちろん予算の制約があってのことですが)。

福岡市博物館は1フロアで1500㎡という全国屈指の広い展示室を持っています。だから仮設の壁やケースを作ったりして、かなり自由度の高い演出が可能です(もちろん予算の・・以下略)。

今回も展示室の天井ぎりぎりの大きさの当麻曼荼羅(たいままんだら/京都・禅林寺蔵)をいかに展示するかが最大の課題でしたが、「この際、福岡市博物館を当麻寺の曼荼羅堂にしてしまおう!」という仏像学芸員の無茶な要求に設計側がみごとに応えてくれました(ぜひ会場でご覧下さい)。

ところで、僕がこれまで関わった展示設計の中でダントツに思い出深いのは2003年に開催した「大倉集古館の名品」展ですね。何せこの頃は若かったし、いろんな展示手法を試したくてウズウズしていました。

国宝「普賢菩薩騎象像(ふげんぼさつきしょうぞう)」という平安後期の名品があります。

「仏はつねにいませども、うつつならぬぞあわれなる・・」という今様(いまよう)のイメージにしてしまおう!と、こんな風に展示しました。何と、菩薩像の周囲には造花の蓮華が散らされています。


国宝「普賢菩薩騎象像(ふげんぼさつきしょうぞう)」

ああ、当時の大人たちはよくこんな過剰演出を認めてくれたものだと思いますが、当時の僕は文化財の展示として許されるギリギリのところを攻めていたのだと思います。

ちなみに、九州国立博物館では10月2日から「オークラコレクション展」としてまた再び大倉集古館の名品が公開されます。

普賢菩薩像と横山大観の「夜桜」は素晴らしいのでぜひ見に行ってくださいね❤️

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