福岡市博物館総館長を仰せつかって、あっという間に半年が経ちました。まだまだ不案内なことばかりですが、新しい環境にもだいぶ慣れてきました。
さて、既に終了してしまいましたが、9月28日(土)に「大灯籠絵にみる娯楽としての“歴史”」という演題で講演会を開催いたしました。特別展「大灯籠絵」関連事業の一環をなすものでした。
講演会「大灯籠絵にみる娯楽としての“歴史”」の様子 |
ようやく総館長として市民の皆さんの前に立つことができ、ささやかなデビュー戦となりました。「講演会」とはいいながら、会場は当館二階の喫茶・談話室でしたので、気軽な感じの会となりました。事前に配られたものには「歴史学の視点から、「大灯籠絵」に描かれた“歴史”の魅力を深く掘り下げる」という概要が語られていましたが、実際にはそこまで大仰なものとはなりませんでした。
「大灯籠絵」の画題となっているのは史実そのものというより、お芝居や講談などからの取材されたものが大半です。これらが人気の「飾り物」として受け容れられたことを考えると、興行される芝居や講釈などを通じて、民衆社会ならではの“歴史”リテラシーが涵養されていたとみるべきであり、芸所・芝居所としての博多・福岡という視点を抜きに「大灯籠絵」は語れないのではないか・・・。講演の骨子はこうしたところです。
ただの歌舞伎好き・寄席好きが自分の趣味に引き寄せて、話をこしらえたと言えなくもありませんが、大学教師とは違うスタンスで“歴史”を考えるきっかけにもなり、準備の段階から楽しい時間を過ごすことができました。関係者の皆様に篤くお礼を申し上げます。
講演会「大灯籠絵にみる娯楽としての“歴史”」の様子 |
さて、前振りが長くなりましたが、実はここからが本題です。この講演会でも館蔵の「大灯籠絵」はもちろんですが、少し珍しいものとして博多・福岡で開催されたお芝居の番付などを紹介してみました。福岡市博物館は、平成2(1990)年の開館以来、多様かつ膨大な質量の資料を収集してまいりました。いうまでもなく、それらの収蔵資料のすべてが展示の対象となる訳ではありません。今後、展示に限らず資料を公開・活用する術をいろいろと考えていく必要がありますが、まずはこうした館蔵資料を積極的に紹介する場を設けていきたいと考えています。今回の芝居番付はその先駆けのような位置づけとなります。具体的にどういうかたちを採るかまだ確定はしておりませんが、なるだけ早い時期に実現したいと考えています。今回はその予告ということでご理解いただければと存じます。
令和6(2024)年10月
福岡市博物館総館長 中野 等
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