埋め立て地にできたニュータウン「シーサイドももち」の、前史から現代までをマニアックに深掘りした『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』(発行:福岡市/販売:梓書院)。
この本は、博多・天神とは違う歴史をたどってきた「シーサイドももち」を見ることで福岡が見えてくるという、これまでにない一冊です。
本についてはコチラ。
この連載では「別冊 シーサイドももち」と題して、本には載らなかった蔵出し記事やこぼれ話などを紹介しています。ぜひ本とあわせてお楽しみいただければ、うれしいです。
過去の記事はコチラ。
第1回(「よかトピアに男闘呼組がやってきた!」)
第2回(「ダンスフロアでボンダンス」)
第3回(「よかトピアの「パオパオ・ロック」とは。」)
第4回(「開局! よかトピアFM(その1)KBC岸川均さんが育てた音のパビリオン」)
第5回(「思い出のマッスル夏の陣 in 百道」)
第6回(「最も危険な〝遊具〟」)
※ 2023.4.28 一部タイトルを変更しました。
〈007〉開局! よかトピアFM(その2)1週間の全番組とパーソナリティー
(その1)はよかトピアFM(MOMO)の放送開始前までのお話でした(その1はコチラ)。
今回はオンエアが始まってからのプログラムとパーソナリティー編です。
よかトピアFMは毎日8時から22時までの放送。
博覧会は9時30分~18時(夜間開場の期間は21時まで)でしたが、行き帰りにもラジオでよかトピアを楽しむことができました。
会場周辺の交通情報も1時間に1~3回流していましたので、時間外の放送は車での来場者には特に役に立っていたようです。
福岡市博物館には当時の番組のタイムテーブルが残っています。
番組はシーズンごとに改編されて、タイムテーブルは3~4月、5~6月、7~9月の全部で3種類。
改編では、番組自体に変わりはないのですが、曜日が変わったり、パーソナリティーに入れ替わりがあったりしました。
(福岡市博物館所蔵) 「よかトピアFM」のタイムテーブル(5~6月)。 |
では、朝から放送を聞いているような気分で、このタイムテーブルを順に眺めてみようかなと思います。
8:00~10:00
よかトピア Today"ピアピアMorning"
3~9月(月~日曜)
(歴代パーソナリティー)清水千晴さん、東美穂さん、的場英利さん、林田真穂さん、安武優子さん
よかトピアFMで唯一の月~日曜を通した帯番組。
おはようコールに始まって、今日の博覧会のメニューを紹介しながら、オールディーズやロックのスタンダード曲をかけていました。
パーソナリティーの東さん・林田さんは、博覧会終了後はKBCラジオでパーソナリティーを続けられ人気でした(KBC-INPAXの時代ですねー、懐かしい)。
林田さんは「またどこかでお耳に掛かったらよろしく」と閉幕の際のインタビューで話されていたのですが(『アジア太平洋博ニュース
夢かわら版'89保存版』)、その言葉の通り、博覧会終了後によかトピアFMからスライドして、KBCで東さん・林田さんの番組を聴いた方も多かったのだとか。
安武さんは、この時のスタッフ最年少。
のちに、ここでの経験を活かして、「第8回 全国都市緑化北九州フェア(グリーンルネッサンス北九州'91)」のイベントFM局「グリーンルネッサンスFM」でもパーソナリティーを担当されました。
的場さんも当時大学に在学しながらの参加でした。
若いスタッフばかりで放送されていたことにあらためてびっくりです…。
10:00~13:00
Music Channel 76.3MHz
3~6月(月~金曜) 7~9月(月~木曜)
(パーソナリティー)ロッカトピア
ロッカトピアが送るお昼の人気番組。
ロッカトピアは、ダグさん(カナダ)、ローラさん(アメリカ)、マークさん(アメリカ)、マークさん(オランダ)、ニックさん(アメリカ)、ロンさん(アメリカ)、デイブさん(イギリス)、フランクさん(オランダ)、ケリーさん(アメリカ)のグループです。
番組企画・選曲・パーソナリティーまでご自身たちでやっていました。
曲がかかっている間に、パーソナリティーのローラさんが立ち上がって踊り出して、それにあわせてミキサーのロンさんやほかパーソナリティーもステップを踏むような、とてもにぎやかな番組(『西日本新聞』1989年4月22日)。
スタジオの前で、入場者を巻き込んでの真昼のディスコパーティーを開いたこともあったそうです。
途中、ニックさんが怪我で入院してしまったり(無事に2か月半後に松葉杖で番組に復帰されました)、フランクさんがよかトピアのイベント「オークランド~福岡ヤマハカップヨットレース1989」に参加したりと、番組外でも話題が満載。
ロッカトピアは、よかトピアFMの顔ともいえるグループでした。
※オークランド~福岡ヤマハカップヨットレース1989:ニュージーランドのオークランドから福岡までのヨットレース(1万200キロ)。9か国・37艇が参加。4/22にオークランドを出発して、最初に博多港に船が到着したのは6/15。
13:00~16:00
NAGISA MUSIC PAVILION
3~6月(月~金曜) 7~9月(月~木曜)
(歴代パーソナリティー)古賀香織さん、田中ゆきさん
オールジャンルの音楽番組。
よかトピアを訪れたミュージシャン・タレントをゲストに迎えたり、博覧会参加国を紹介したりしていました。
パーソナリティーの古賀さん・田中さんは、ともに博覧会終了後も福岡の放送業界で活躍された方々。
古賀さんは番組制作に関わられ、田中さんは、安武さんと同じく「グリーンルネッサンス北九州'91」のイベントFM局「グリーンルネッサンスFM」でパーソナリティーを担当されたり、その後にはCROSS FMのナビゲーターやディレクターなどをつとめられたりしています。
16:00~19:00
よかトピア Music Sky Walker
3~6月(月~金曜) 7~9月(月~木曜)
(歴代パーソナリティー)田中ゆきさん、木村匡也さん、古賀香織さん
番組では前半はJポップ、後半はアメリカのヒットチャートから選曲。
番組内ではコンパニオンさんを迎えて、パビリオン情報なども紹介してました。
木村さんは、今もテレビのナレーションでご活躍ですので、ご存知の方が多いのではないでしょうか(『電波少年』『めちゃ×2イケてるッ!』『芸能人格付けチェック』『ちびまる子ちゃん』などなど)。
西南学院大学の4年生のときによかトピアFMに参加されて、流ちょうな英語を交えた放送が大変人気でした。
博覧会期間中の7月16日に、FM東京「アメリカンTOP40 イングリッシュDJコンテスト」でグランプリを受賞したことで、今のキャリアをスタートされましたが、そのオーディションの音源は、よかトピアFMを使ったものだったそうです(→その1)。
19:00~22:00
Fukuoka Night ピア
3~6月(月~金曜) 7~9月(月~木曜)
(歴代パーソナリティー)クレッグさん(アメリカ)、キャロンさん(イギリス)、ジャニスさん(カナダ)、トムさん(アメリカ)、的場英利さん、木村匡也さん
夜の雰囲気にあった音楽はもちろん、博覧会の明日の見どころも紹介する番組でした。
クレッグさんはアメリカでラジオパーソナリティーを経験し、来日後は福岡の情報誌に記事も書かれていたのだとか。
惜しまれながら6/26の放送を最後に、大学院での勉強のために帰国されました。
トムさんもパーソナリティーの経験者。
トムさんのお名前はトーマス・ハッチさんなのですが、福岡に住んでいればおなじみの福さ屋のテレビCM(ぴしゃっと時刻を伝えてくれる、あれです)の初代出演者さんと同じお名前です。
CMで見たお姿もよく似ていらっしゃいます(ちなみに現在のCMは2代目のマイケル・ロドリゲスさん)。
はたしてよかトピアFMのトムさんなのか、まだ確認がとれていないのですが、もしご存知の方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。
(福岡市博物館所蔵『よかトピアFMタイムテーブル』VOL2より) 「よかトピアFM」のスタジオ(南側から)。 |
ここまでが平日のプログラム。
8:00~10:00だけは変わらず、よかトピア Today"ピアピアMorning"でスタート。
10:00~13:00
よかトピア Music Brunch
3~6月(土~日曜) 7~9月(金~日曜)
(パーソナリティー)ロッカトピア
平日に続いて、この時間のパーソナリティーはロッカトピア。
邦楽・洋楽のヒットチャートから選曲しながら、土曜日には電話リクエストも受け付けていました(電リク! ラジオの電リクってなかなか繋がらない分、リクエストできたときのうれしさが忘れられないのですよね…)。
13:00~17:00
よかトピア Music Heat Wave
3~6月(土~日曜) 7~9月(金~日曜)
(歴代パーソナリティー)トムさん、スティーブさん(アメリカ)、キャサリンさん(イギリス)、木村匡也さん
スティーブさんはアメリカの大学で日本語を4年間専攻して、長年空手もやっている日本通。
キャサリンさんはジャズや演劇が大好きな明るい方でした。
1人のパーソナリティーが番組を担当することが多いよかトピアFMでしたが、日曜のこの時間は、スティーブさん・キャサリンさん・木村さんの3人が担当していました。
番組は、リゾートシアターからの中継や会場内でのインタビューがあったりして、入場者との一体感がある内容。
ハガキ・FAXで、曲のリクエストも受け付けていました。
17:00~19:30
よかトピア Seaside Walker
3~6月(土~日曜) 7~9月(金~日曜)
(歴代パーソナリティー)トムさん、東美穂さん、KBCアナウンサーさんほか
ブラックコンテンポラリー(なつかしい響きですよね。ブラコン!)なども選曲するおしゃれな時間帯。
よかトピアが開催された1989年のブラコンだと、ボビー・ブラウンやジャネット・ジャクソンなどがよく聴かれていたころでしょうか。
近年はダンス人気もあって、このころのニュージャックスウィングを思い起こす曲が流行っていますよねー(ブルーノ・マーズは言うまでもなく、アイドルの曲にも多いですよね)。
今こそ聴きたい番組です。
パーソナリティーには、放送局の運営に協力していたKBC九州朝日放送のアナウンサーさんも参加されていました。
現在も放送されているKBCラジオ「PAO~N」のなかで、たびたびパーソナリティーの沢田幸二さんが、よかトピア会場に行ってラジオの放送をしたことがあると話されているのですが(その話題の流れで出てくる、太平くん・洋子ちゃんの声を聞いたという話が最高なのですが、それは置いておいて)、もしかすると、この番組だったのかなと思っているところです。
19:30~22:00
よかトピア Sound Sailing
3~6月(土~日曜) 7~9月(金~日曜)
(歴代パーソナリティー)スティーブさん、福山智美さん、田中ゆきさん、古賀香織さん
人気アーティストを特集しながら、博覧会の明日のおすすめや見どころも紹介していました。
福山さんはバイリンガルだそうで、よかトピアの国際的な雰囲気にぴったりですよね。
(福岡市博物館所蔵) 「よかトピアFM」のシール。 |
ざざっとプログラムを眺めてきましたが、各番組のなかでは、ニュース・天気予報・交通情報に加えて、博覧会のリアルタイムの情報や会場内での中継もやっていました。
会場にいるリスナーには、番組を通して今どこで面白いことがおこっているのかがすぐに分かり、会場の外のリスナーにとっては、まるで会場にいるかのようによかトピアを楽しめる番組ばかりです。
さらには、豪華なゲストの登場や、既存のラジオ局に負けないパーソナリティーのキャラクター・選曲は、ラジオファンにとっても、番組として魅力だったようです。
こうなると、ゲストのラインナップや、ラジオには欠かせないリスナーの反応なども気になってきます…。
ゲスト編・リスナー編は、また追々。
#シーサイドももち #アジア太平洋博覧会 #よかトピア #よかトピアFM #木村匡也 #KBC #CROSS FM #福さ屋 #ぴしゃっと
【参考文献】
・『アジア太平洋博ニュース 夢かわら版'89保存版』((株)西日本新聞社・秀巧社印刷(株)・(株)プランニング秀巧社企画編集、(財)アジア太平洋博覧会協会発行、1989年)
・『アジア太平洋博覧会―福岡'89 公式記録』((株)西日本新聞社編集製作、(財)アジア太平洋博覧会協会発行、1990年)
・『radio MOMO よかトピアFMの記録』(FMよかトピア事務局、1989年)
・『よかトピアFMタイムテーブル』VOL1~3((財)アジア太平洋博覧会協会)
[Written by はらださとし/illustration by ピー・アンド・エル]」
※ 2023.4.28 タイトルを変更しました。