詳しくはフレッシュな学芸員たちによる連載ブログを見ていただきたいのですが、どうやら今回の展示のイメージキャラクターが「鍾馗(しょうき)」だとされているようです。
鍾馗は中国・唐時代の人物で、熱病に苦しむ玄宗(げんそう)皇帝の夢に現れて悪い鬼を喰ったと伝えられています。こうした説話が日本にも伝えられ、江戸時代には疫病退散のシンボルとなりました。
実は、
「疱瘡絵(ほうそうえ)」と題されたこの作品、江戸の人々を悩ました疱瘡(天然痘)を退ける効能があるとされる図柄を赤い絵の具で刷った、いわゆる「赤絵(あかえ)」というやつです。
図柄を見てみると、鍾馗と達磨、源為朝(みなもとのためとも:平安時代末期に活躍した豪傑)、富士山が描かれているのがわかります。なぜ、この図柄なのか?その答えは賛文の中に隠されていました。
「ほうそうの、みをふじほどに山をあげ、しょうきも寄らずだるま為とも」
読んだだけでは何のことかわかりませんが、超意訳すると「疱瘡の身を封じ(富士)る間に、山(やまい)を上げて、しょうき(鍾馗)を寄せつけない達磨と為朝」というふうに解釈できます。
絵柄をよく見ると、一番手前にいる〝元祖ウイルスバスター〟こと鍾馗が達磨と為朝の剣幕を恐れて、すごすごと退散しているようにも見えます。
このへんがいかにも江戸っぽいのですが、おそらく鍾馗を「瘴気(疫病)」にかけて、達磨と為朝がこれまでのスタンダードだった鍾馗よりも強いのだという、一種の洒落(しゃれ)なのでしょう。
疫病を退けるはずの鍾馗が疫病扱いされているのは何だか可哀そうですが、裏を返せばそれだけ江戸の人々は疫病の流行に手を焼き、苛立ちを覚えていたということかもしれません。
鍾馗も逃げ出す達磨かな・・
ということで特設展示のあとはぜひ、「ダルマさん大集合」もご覧ください。
仏像学芸員末吉
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