2020年7月29日水曜日

実存主義的ダルマ

博物館では7月21日(火)から企画展示「ダルマさん大集合」を開催しています。

館蔵の達磨図など達磨に関係する作品を紹介する展示ですが、なかなかクセのある作品が並んでいて地味に楽しんでいただけるのではないかと思います。

久留米藩の御用絵師・三谷等哲(みたにとうてつ)が描いた達磨図〔写真〕もそんなクセ者作品。ご覧のとおり、なんだか胡散(うさん)臭いものでも見るような顔の達磨さんです。


賛文は達筆すぎて完全には読めませんが(スミマセン)、どうやら「ダルマさんおつかれさま、頭が寒そうですね、赤い衣をかぶせて差し上げましょうか」というような意味(超意訳)のようです。

作者の三谷は雪舟の画風を継承した雲谷派(うんこくは)の絵師で、同派の祖・雲谷等顔(とうがん)もこんな顔の達磨図を残しています。だから当然といえば当然なのですが、ではなぜ彼らが達磨をこんな風に描いたのかが疑問として残ります。

ジロリとこちらを覗き込むような視線を向けていて、なんだかアヤしげなものを見るような顔だなあ、視線の先には何があるのだろうか?

そんなことを考えながらふと思い出したのは、今では仲良しの同業者と初めて会ったときの彼の眼差しでした。「こいつは仏像学芸員(プロ)として信用できるのか?」と言わんばかりのあの視線―

そのときようやく気が付きました。

自分が達磨を見るのではなく、達磨が自分を見ているのだと。

(達 磨)「あんた誰やねん?」

(学芸員)「えーとボクはですね、モゴモゴ・・」

(達 磨)「ボクって何やねん?」

(学芸員)「え?」

(達 磨)「そんなええかげんな自分なんかドブにでも捨ててしまえー!」

(学芸員)「そんな崖っぷちから手を放すようなことムリですー」

(達 磨)「喝―!」

こんな会話が収蔵庫の中で交わされたかどうかは定かではありません。

でも少し作品に近づけたので〇。

仏像学芸員末吉



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