2020年11月24日火曜日

〔連載ブログ12〕團十郎と俳句(1)

歌舞伎役者は、「名跡(みょうせき)」という役者としての名前のほかに、俳句を詠む際に使用する「俳名(はいみょう)」を持っています。

例えば、一般によく知られる「市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)」という名前は名跡で、初代團十郎の「才牛」、2代目團十郎の「栢莚」などは俳名です。名跡も俳名も同じ名を襲名することがありますが、名跡が代々全く同じ名前であるのに対して、俳名は代ごとに微妙な変化や工夫がみられます。

 

例えば、今年5月に、13代目市川團十郎白猿の襲名予定が発表されました。※現在、襲名披露公演は延期されていますが、ちょうどいま博多座では市川團十郎を襲名する予定の市川海老蔵特別公演が上演されています。新型コロナウイルスの影響で惜しくも中止された2月公演から半年以上、ようやく再開・再会できる舞台ですね。25()まで。 この13代目の襲名する俳名が「白猿」です。

 

「白猿」は5代目團十郎の俳名ですが、元は2代目が名乗った「栢莚」という俳名に対して、4代目が遠慮して一画減らした「柏莚」を使用したことを踏まえているのでしょう。

すなわち、栢莚・柏莚・白猿はいずれも「はくえん」という同じ読みでありながら、画数を減らしたり猿を自称したりすることで、先代の名を受け継ぎながらも敬意を表して自分を一歩後ろに据えているのです。

歴史と矜持を感じさせる、よき名ですね。

 

 それでは、代々の團十郎はどんな俳句を詠んだのでしょうか?


まずは、「やまいとくらし」後期展示で現在初公開されている資料から。

二代目市川團十郎図

 

「喰つみや かち栗ほとの 力昆布  栢莚」

 

  

さて、一体どんな意味なのでしょうか? 次回へつづきます。

※「やまいとくらし」後期展示「疫病と歌舞伎」の会期は29日㈰までです。 


(学芸課・佐々木)

0 件のコメント:

コメントを投稿