休館中の福岡市博物館から、休館中ならではの話題を不定期でお届けします。
今回は、「博物館が休館する理由」です。
福岡市博物館は、2020年11月30日から、2021年年3月31日(水、予定)まで、工事のため全館休館しています。4か月におよぶ長期休館中に、受変電設備・非常用発電機の更新工事と、トイレの改修工事をします。福岡市博物館の建物は、1989年3月に「アジア太平洋博覧会─福岡’89」のテーマ館として開館、博覧会閉幕後に改装を行い、改めて1990年10月に福岡市博物館として開館した施設です。長い期間、使い続けていると、施設や設備も老朽化してきます。平成24年度に導入したESCO事業(エスコじぎょう、Energy Service Company事業の略)により、一部設備を省エネルギー型に更新していますが、おおもとの電気設備は、30年以上使用してきました。今回は、その電気設備=受変電設備・非常用発電機を更新するための長期休館です。併せて、来館者の皆さまからのご要望が多かった、トイレの改修工事も行います。
博物館では、非常に高圧な電気を電気事業者から受け取り、館内で使用するのに適切な電圧に変換しています。電気の用途で一番重要なのが、館内の温湿度管理です。来館者の皆さまに快適に過ごしていただくのは勿論ですが、博物館の場合は、展示室や収蔵庫にある貴重な資料を守るために温湿度管理が非常に重要です。ご家庭で、漆塗りの食器などが、乾燥しすぎて、傷ついてしまうことがありませんか。温湿度管理が適切に行われていないと、博物館が収蔵している資料にも、同様なことが起きてしまうのです。貴重な資料を後世に伝えるため、博物館では、資料を保存する環境に細心の注意を払っています。(資料には、「光」も大敵です。日焼けによる退色や劣化を防ぐため、展示室の照明は紫外線をカットし、明るさも抑えています。)
資料を保管している収蔵庫や展示室の空調に不具合が起きるのは、博物館にとっては、まさに死活問題といえます。空調を支える安定した電気の供給が、非常に重要な理由です。そのため、停電が起きた時には、わずか40秒後には非常用発電機が稼働して、収蔵庫や展示室の空調のための電力を最優先で一定時間、確保できるようになっています。
バックヤードツアーで、受変電設備について説明している様子(2018年) |
さて、30年以上にわたってメンテナンスを繰り返しながら使い続けてきた受変電設備も、さすがにそろそろ限界…ということで、今回、設備を入れ替えることになりました。とはいえ、資料保存のため、空調設備を止めることはできません。①仮設の受変電設備を設置、②使用中の受変電設備から仮設電源設備への切り替え、③現在の設備を撤去して新しい設備を設置、④仮設電源設備から新しい受変電設備への切り替え、⑤仮設電源設備の撤去、という手順を経て、やっと設備の更新が完了です。そのため、4か月という工事期間が必要なのです。
長い休館も、大切な資料を守るため。来年4月に、見えないところが若返って、開館する福岡市博物館を、あたたかく見守っていただければ幸いです。
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