あるとき都で、美しい女房の失踪事件が相次いだ。人々は怒り悲しみ、武家の棟梁(とうりょう)・源頼光に「悪鬼を滅」せと勅命(ちょくめい)が下った。頼光は家臣とともに山奥へ分け入り、鬼のボス・酒呑童子(しゅてんどうじ)を毒酒で弱らせ、見事、首を斬り落とした。首だけとなった童子は頼光の兜(かぶと)に噛みついて力尽き、「童子滅て後ハ」鬼の住処も、他の鬼たちの神通力も消え失せた―――(※「 」の中は絵巻詞書からの引用)
これが酒呑童子退治の大筋です。
「鬼は滅ぼすものではなくて祓うもの」という言説を時々耳にしますが、大江山絵巻では「鬼を滅ぼせ」と命令が下りますし、討伐隊も「鬼を滅ぼしてやろう」と豪語しますし、酒呑童子は滅びたと記されます。
その滅ぼし方は、一見「刀で首を斬る」ことであるかのように読めますが、よく読むと、毒がなければ童子は弱らず、その首は斬れなかったことがわかります。
また最後にひと噛みされた時、相討ちとならずに無傷で済んだのは特別な兜をかぶっていたおかげなのですが、実はこの兜、人の心を読む酒呑童子の神通力を無効化できる不思議アイテムでもあり、これがなければ、そもそも肝心の毒を盛ることも、鬼のアジトに潜入することもできなかったのです。
童子討伐の鍵となった毒酒と兜は、山奥で出会った「大切な人を鬼にとられた」方々からもらったものでした。彼らは鬼の住処に関する情報も色々と教えてくれ、道に迷ったときも助けてくれました。
つまり鬼のボスを滅ぼせたのは、毒と協力者あってこそ! 刀だけでは滅ぼせなかったと言ってよいかもしれません。
ちなみに、横で上司が「それだけ鬼が強いってことやろ?」などと言っております。
いやいやここは「似たような話をどこかで読んだ気が…(すっとぼけ)」って反応してほしいところですよ!とりあえず、机に漫画23冊置いときましょう。ドンッ
次週「鬼は朝日が苦手?!」は4月19日公開です。つづく!
(学芸課鬼殺係・ささき)
■企画展「鬼は滅びない」は2021年6月13日(日)まで開催中。
言われて初めて気がつきました!
返信削除あの漫画と酒呑童子にそんな繋がりがあったとは…!