こんにちは。市史編さん室です。
9月の特別コーナーとして、Love FMで毎週月~木の21:30~23:00まで放送中の「月下虫音」内で放送されておりますゲストコーナー「縄文時代よりの使者」。
こちらは、福岡市史が発行する『新修 福岡市史ブックレット・シリーズ ④ 縄文時代のタネとムシ』の著者である小畑弘己先生(熊本大学名誉教授/福岡市史編集委員会考古専門部会専門委員)と、ラジオパーソナリティの大田こぞうさんとの対談企画です。
いよいよ今回が最終回…! 第4回は、縄文時代の「土器」と「ムシ」にまつわるお話です。
土器から出たムシ
前回、お米が日本に来る前からコクゾウムシは日本にいたんだ!という話題になりました。
それではそのコクゾウムシはどうやって、どこから見つかったのでしょう??
コクゾウムシが見つかったのは、なんと「土器の中」。
とはいえ土器を作るためには500~800度ほどの高温で焼く必要があります。すると、もし土器の中にムシを入れたとしても、間違いなく焼けて消えてしまいます。
ではどうしてそこにムシがいたことが分かったのか?
それは、土器の表面や内部に焼けてしまったムシの「形」だけがスタンプのように残されていたのです。
このスタンプにシリコンゴムを流し込んで型を取ると、元の形を立体的に復元することができます。この残されたスタンプのことを「圧痕(あっこん)」と言い、そこから型を取る方法を「圧痕レプリカ法」と言います。
イメージとしては、チョコレートを溶かして型に流し込んだり、鋳物を鋳造するときに溶かした鉄を型に流し込んだりするような感じですね(伝わりますか…?)。
こうした研究方法は20世紀に入ってから行われるようになったものですが、その後技術が発達してX線やCTなどの電子器機で土器の内部を見てみると、実はムシたちは土器の表面だけでなく内部にも埋め込まれていたことが分かりました。
こうした事例は北海道から沖縄まで、日本各地で見られるのだそうで、中には500匹以上ものコクゾウムシが練り込まれた例も見つかっています(館崎遺跡/北海道福島町)。
それにしても、なぜ人々は土器の中にコクゾウムシを練り込んだのでしょうか??
ムシに託した願い?
その理由は、はっきりとは分かっていません。
そこで小畑先生がまず考えたのは、「彼らはコクゾウムシを単なる害虫だと思っていたのだろうか?」ということ。
そこで先生は、前回のお話にもあったようにコクゾウムシがクリを好むムシだったことから、もしかしたらタネと同じようにコクゾウムシをクリなどの収穫物の化身として、やはり豊穣を願って土器に練り込んだのではないかと考えているのだそうです。
生活者としての縄文人
これに対して大田こぞうさんの説はちょっと視点が違っています。
もちろん豊穣の意味を込めてムシを土器に練り込んだというのも納得ですが、500匹ものコクゾウムシを1から手で集めるのは大変だし、何よりもムシの動きは速いので簡単には集められないのではないか…。
そこでこぞうさんが「自分ならどうするだろう…」と考えたところ、思いついたのはなんとコロコロローラー説!
ムシがたくさん集まって来てしまうけども、動き回るムシを手で集めるのは難しい…。
そこで、粘土をカーペットを掃除するコロコロローラーのように利用して、粘土を使って食事や食料に集まるコクゾウムシを捕まえたのではないか、というのです。
斬新!!
でもわたしはこの説を聞いたとき、視点がとてもリアルで、ハッとさせられました。まさに目から鱗。
行動原理に何かしら願いが込められていたとしても、その一つ一つが必ずしも特別だったわけではなく、いまのわたしたちと同じように、縄文人も生きていくためにさまざまな工夫をして暮らしている「生活者」だった。
この視点は意外と盲点となる見方かもしれないなと感じました。
単に「何千年も昔から人が住んでいた」という教科書的な記述だけでは漠然としていて、何だか遠い世界の話に感じるかもしれません。
ですが、ちょっと肩の力を抜いてこの視点から見てみると、人々は何千年も昔からわたしたちと同じように生活者として日々を過ごしていた、さらにその営みは現代のわたしたちまで地続きの日常として続いているという姿が浮かび上がってきませんか?
もちろん「これが真実だ!」という証拠もありませんし、それは今のところ誰にも分かりませんが、こんな風に少しだけ彼らの生活を自分に近づけて想像してみると、それまで自分とは関係のない遠い存在だった縄文人が、なんだかちょっと身近に感じられるかもしれませんね。
* * * * * * *
さて、4回にわたってお送りした特別対談「縄文時代よりの使者」はいかがだったでしょうか?
実は当初、この対談はもっとコクゾウムシに焦点を当てた内容になる予定でした。
ところがホストである大田こぞうさんが事前に本書をかなり読み込んでくださっていて、打ち合わせの段階で「もっと縄文人(あるいはその前の旧石器人)の生活に注目した構成にしたい」とのご提案があり、おかげでより深く本書の内容に迫った対談となりました。
本のタイトルは「縄文時代のタネとムシ」ですが、実は旧石器と縄文時代の「人々の生活」こそが本書のもう一つのテーマでしたので、ムシが主役とはいえ、かなり核心の部分を深掘りしていただけたんじゃないかと思います。
大田こぞうさん、小畑先生、本当にありがとうございました。
またいつか、お二人のふかーーい対談をゆっくりじっくり聞いてみたいです!
9月24日(木)の放送は、スマートフォンやパソコンのアプリでラジオが聴ける無料サービスradikoでも、放送から1週間以内であればタイムフリー機能で聞くことができます。
すでに聞いてくださった方も聞き逃した方も、ぜひ聞いてみてくださいね!
※ radikoについてはコチラをご覧ください。
月下虫音 (げっかちゅうね) | LOVE FM | 月~木 21:30-23:00
9月のゲストコーナー「縄文時代からの使者」
第1回 縄文時代の定住革命(9月3日放送)>>> 放送後の記事はコチラをクリック(本ブログ内の記事「【連続レポ】縄文時代よりの使者① ギャートルズ的時代のくらしが激変した定住革命とは?」が開きます)
第2回 縄文人たちが直面した新たな大問題(9月10日放送)>>> 放送後の記事はコチラをクリック(本ブログ内の記事「【連続レポ】縄文時代よりの使者② 縄文人たちが直面した新たな大問題」が開きます)
第3回 コクゾウムシは米より先に栗やドングリを食べていた?(9月17日放送)>>> 放送後の記事はコチラをクリック(本ブログ内の記事「【連続レポ】縄文時代よりの使者③ 米喰い虫は"栗"喰い虫? ―人と共に変化したムシたちの食生活―」が開きます)
第4回 X線で見えた、土器に練り込まれた約500匹の虫(9月24日放送)>>> コチラをクリック(radikoのサイトが開きます)
はじめに
第1章 狩猟と遊動の旧石器時代1-1 旧石器時代のくらしと家
項目情報
旧石器時代とは/旧石器時代の環境/世界の旧石器時代のイエ/旧石器時代の囲炉裏はどこ?/石器ブロックは男性が残したのか?項目情報
道具を進化させた旧石器人/福岡市最古の旧石器/朝鮮半島から来た石器/今山で採集された角錐状石器/最初の組み合わせ槍/遊動生活に最適な石器・細石刃/究極の組み合わせ道具・植刃器/週游生活と石材原産地の「埋め込み戦略」/北部九州の旧石器時代遺跡と生活圏/移動生活の必須アイテム・水筒/狩猟場に残された狩猟具/解説コラム① 姶良Tn火山灰の降灰/解説コラム② 繊維と結びの歴史
Column 1 「害虫」が語る衣服の歴史と人類の拡散
Column
2 楽器を奏でた旧石器人
Column
3 考古学の真実とは~発掘者の心得~
2-1 縄文人のくらし
項目情報
縄文人の一生/骨に残る縄文人の病理と生活習慣/墓地の発生/縄文人の利き手/イヌと仲良し縄文人/土偶と祈り/解説コラム① ひっつきむしと縄文人項目情報
平底土器と尖底土器/土器発明の意義/多様な生活材、籠・網・衣類/土器が教える縄文の布と衣/縄文時代の網/福岡市内の編組製品/縄文時代と旧石器時代の道具立ての違いとその意味/罠猟の発達/解説コラム② 見よう見まねの大切さ/解説コラム③ 年代を知る~放射性炭素年代IntCal20~項目情報
定住という生活スタイル/遊動生活から定住生活への動機の変化(定住革命)/縄文時代の家比べ/屋外の調理施設項目情報
縄文時代のトイレはどこ?/貝塚から出た食べものとゴミ/ゴミ処理問題の発生と森林への負荷/解説コラム① 縄文時代の環境変化①~縄文海進~項目情報
ヒトが動く→モノが動く/交易による資源調達システムの確立/石斧の生産と交易/縄文人のアクセサリー/クロム白雲母と九州ブランドの拡散項目情報
韓国最古の穀物発見/対馬越高遺跡の発掘調査/アカホヤを遡らない隆器文土器/石器石材とクジラ漁/解説コラム② 縄文時代の環境変化②~鬼界カルデラの噴火~項目情報
コクゾウムシの意味するもの/コクゾウムシの起源と害虫化/ムギ害虫とイネ害虫(コクゾウムシの拡散)/イネを食べなかった縄文コクゾウムシ/海峡を越えたコクゾウムシ(食料運搬)/中国初の新石器時代コクゾウムシの発見/解説コラム① 土器圧痕と土器圧痕法項目情報
土器に練り込まれたコクゾウムシ/冷蔵庫と食器棚の中身―コクゾウムシの居場所―/土器はおうちの中で作られた/土器作りと混和材/土器作りともう一つの混和材/土器圧痕として発見されるタネやムシの特性/解説コラム② 「雑草」を食べた縄文人/解説コラム③ 大原D遺跡は「80%コクゾウムシ」?項目情報
「ガイチュウ」って何?/縄文時代の防虫剤?/縄文時代の害虫たち/縄文人の家に侵入したゴキブリ/ネズミだらけだった縄文ハウスColumn 2 ムシ食はあったのか?
項目情報
四箇遺跡の栽培植物の謎/縄文時代の栽培植物/イネ・ヒエ・オオムギは別時代のもの/解説コラム① ダイズとアズキの見分け方項目情報
考古学の「栽培化」と新たな理論/「縄文農耕論」とは?/縄文時代の真の栽培植物とは?/アク抜きか中長期貯蔵か/福岡市内にも縄文晩期の雑穀農耕はあったのか?/樹木を育てた縄文人/植物性資源利用の増大/南九州縄文にヒエ栽培はあったのか/定住化と濃厚開始による人口増加のメカニズム/解説コラム② AIは遺跡出土のタネを同定できるかColumn 2 土器にタネをまいた縄文人
項目情報
時代区分の基準とは/土器圧痕を用いた新たな手法/稲作の始まり=弥生時代の始まりではない?項目情報
土器圧痕のタネとムシからみえてきたもの/新たな縄文時代・縄文人Column 1 X線が見つけた大発見~日本最古の貝殻入り土器~
おわりに




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