この秋、福岡市博物館では、特別展「大灯籠絵」を開催します。
展覧会の開催に向けて、「大灯籠絵」にまつわる話題をお届けします。
昭和10(1935)年に発行された『博多年中行事』という本があります。
福岡市とその周辺地域の祭りや行事を収録しています。編者は佐々木滋寛(1899~1976)さん。松源寺(博多区千代)の10代目住職で、福岡の郷土文化、とりわけ習俗や伝承を研究し、貴重な資料を収集していた人物です。
一月から順にさまざまな行事を簡潔に紹介した『博多年中行事』の内容は、博多の民俗研究には欠かせないものです。
試しに、7月・8月のあたりを開いてみると、個別の行事の解説に加え、「夏祭風景」という項目がありました。引用すると……
宵の博多の夏祭景趣をかざるものに大灯籠がある。之は路に交叉して路上に高く吊るされた大きい長方形の灯籠で、その両側には極彩色の武者絵が描かれてゐて、中に火を入れて之を見るのである。その最も代表的なものは八月二十四日の大浜の流灌頂のもので一得斎の大徳寺焼香の図などは傑作である。炎帝の暴威から解放された人々が浴衣がけで美しい大灯籠の絵を見てそゞろ歩くのも南国の夜にふさはしい風情である。……(後略)……
なんと、博多の夏祭りの風景として、一番にあげているのが「大灯籠」なのです!!
そして、滋寛さん絶賛の一得斎高清が描いた「大徳寺焼香之図」も、特別展「大灯籠絵」で展示予定です。縦290cm×横543cmというサイズのこの絵は、展覧会で展示する大灯籠絵のなかで最大です。お楽しみに!!
『博多年中行事』掲載の「大徳寺焼香之図」の写真(福岡市博物館蔵) |
ちなみに、夏祭りの風景の2番目は「千灯明」、3番目は「造り物」。これらについては、またの機会に……。
ところで、『博多年中行事』は90年近くまえの本なので、出版当時の現物を手に取るのは難しいですが、『新修 福岡市史』民俗編一(平成24年発行)に全文が再録されています。
夏祭風景の記述は524頁にあります。
『新修 福岡市史』は、福岡市総合図書館など市内の図書館でも閲覧できますが、博物館1階のミュージアムショップなどで購入することもできます。
(by おーた)
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