2019年12月18日水曜日

なつかしい活版印刷を体験 文林堂見学会&活版印刷ワークショップを開催しました


先月、このブログでもお知らせしましたとおり、11月18日(月)から23日(土・祝)まで、城南区鳥飼の印刷所・文林堂さんで、見学会とワークショップを開催いたしました。


城南区鳥飼の文林堂さん

 期間中、文林堂さんでは、ふだんのお仕事のかたわら、店内で印刷機や金属活字、印刷された作品などに、手書きの解説を付して展示いただきました。


店内には所せましと展示物が。でも置かれている機械も活字もバリバリ現役

 お昼からは、山田さんのお話をうかがいつつ、実際に活版印刷でカードを作成するワークショップが開催され、毎日10人前後、最終日は祝日だったこともあって20人近くの方がお越しくださいました。




文林堂店主・山田善之さんのお話。みなさん熱心に聞いておられました

 お話の内容はなんと毎日異なり、お仕事に携わってきた長く豊かな経験から、さまざまなエピソードが飛び出してきます。
 幼いころから印刷所だったご実家の手伝いとして活字を拾っていたお話や、印刷技術の移り変わりと仕事内容の変化、仕事を通じて出会った忘れがたい人々の思い出などなど、本当にたくさんのことを語ってくださいました。

 アーティストと二人三脚で印刷物を作りあげたエピソードも多く、自分の作品を印刷して発信しようとする人々にとって、印刷所は単なる発注先ではなく、いっしょに作品を生み出す相棒のような存在だったことがうかがえました。


最終日は子供たちもたくさん!
奥さんの山田美代子さんから針も糸も使わない「組み継ぎ製本」を伝授してもらい、
それぞれ自分だけの小冊子を作りました

 さて、お話がひと段落してからは、実際に金属活字を棚から拾ってみます。
 ひらがな・カタカナは比較的まとまった位置にあるものの、なんと並びはいろは順。え、「ふ」っていろは順では何番目? いろはにほへと、ちりぬるを、わかよたれそ、つねならむ…、うう、まだ出てこない…。
 漢字は漢字で部種別だったり、頻出字は別のところにあったりと、なんとなく規則がわかってきても全然探し出せません。福…福の字はどこ…?

活字棚から文字を探すのは本当にたいへん
この作業を「文選(ぶんせん)」といい、活字組版が主流だった時代には、
スピードと正確さを要求される職人の仕事でした

漢字はけっきょく発見できず。ひらがなで行きましょう。なんとか活字がそろったら…

スタッフが組版。向きに気をつけてセットして…、

「手フート機」という手押しの印刷機で印刷

できあがり!

他にも、謄写版(ガリ版)のお試しもできました
インクの乗せ加減がなかなか難しいですが、わぁ~刷ってる!感があって楽しい

デザインがなんともステキなアルビオン型手引き印刷機
明治期のもので、山田さんいわく「普通なら博物館に置いてあるようなもの」とのことですが、
これも自由に触れて、実際に印刷してみることができました

 そんな感じで盛りだくさんだった本イベント、おかげさまで多くの方にお越しいただきました。
 参加者の皆さん、そして文林堂さん、本当にありがとうございました!

 さて今回のイベントは、『新修 福岡市史』の一冊、『特別編 活字メディアの時代』で文林堂さんを取りあげさせていただいたことをきっかけに開催されました。

だもので、こそっとフライヤーなど置かせていただいていました

 この『活字メディアの時代』、384頁オールカラー・上製本(ハードカバー)・クリアケース付き・税込3,600円とたいへんオトク。

カストリ雑誌のコーナーもあるよ

 印刷技術をはじめ、戦前からの福岡出版界の来歴に興味がおありの方には、ぜひオススメの一冊。福岡市博物館ミュージアムショップ・ジュンク堂書店福岡店・丸善博多店さんなどで好評販売中です。

 『新修 福岡市史 特別編 活字メディアの時代』
  (「新修 福岡市史」HP https://www.city.fukuoka.lg.jp/shishi/ )



 あとは余談なのですが。
 イベント担当のスタッフKに、手フート機で名刺を作ってもらったところ……

私が心をこめて作りました

あ、あれ。字が転んでいる…
 ちょっと昔の書籍などで、よくあったコレ、横向き・逆向きなどバリエーションはありますが、いずれにしても誤植の部類です。
 それで、こういう記号が校正記号表などに載っています。

くるくるっとね(字の転倒を直してください、という校正記号)

 データ入稿・デジタルプリプレスという工程では、文字の向きが誤っているということはほとんど起こりえないので、校正作業において使う機会もありませんでしたが、今回のことで、なるほど~、と実感。でもなんとなく、字が転んでいるのも味わいがあるように思えます。

きちんとできました!わーい!
この字のにじみ、かすれ、インクだまりがほんといいですよね
 そんな感じで、市史編さん室のスタッフにとっても、非常に勉強になるイベントでした。


(Posted by たに)

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