まだ菌やウイルスの存在が知られていない時代、人々は「鬼」や「虫」や「悪い風」が病を引き起こすのだと考えました。なかでも鬼は、「鬼やらい」や「疫鬼」の語のとおり、病の元としてひろく認知されていました。
すると、病が祓われる、というのは、團十郎の睨みによって鬼が祓われるようなイメージに近いかもしれません。
でも、祓われるって……どんな感じなのでしょうか。
一瞥(いちべつ)でジュワッ…と焼き切れるようなイメージ?
それとも、神仏の徳に当てられてポワァ~ンと浄化されるイメージ?
鋭い閃光のような視線に、ズバーンと刺し貫かれるようなイメージでしょうか?
ところで「飲食養生鑒(いんしょくようじょうかがみ)」という絵では、体の中にたくさんの働く細胞のような存在が描き込まれています。
こんな絵をみていると、「疫鬼(病を起こす鬼)」も案外小さかったのでは?なんて想像してしまいます。
実際、病をはじめとする悪いものは、親指や背中から入り込んでくるそうですし…(参考:過去ブログ)。
とかなんとか空想していたら、こんな絵がありました。
豆まきをする團十郎の左上に、転げるように逃げてゆく鬼がいます。あまりの慌てぶりに、気の毒やら可笑しいやら。
きっと團十郎ににらまれた鬼(病)も、こんな風に追い払われていたんだろうなと妙に納得できました。
逃げた鬼はまたどこかで悪さをするかもしれませんが、「祓う」ときいて「退治・根絶」しかイメージできなかった私は、ちょっと反省です。優しくなろう…
浮世絵ににらまれて、常設展示室から「ワァァァァ」「ヤメテー」と逃げ出す小さな鬼たちを想像しながら、ごゆっくりお楽しみください。
(文・学芸課佐々木 画・みすみ)
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