2021年1月29日金曜日

#みんなでふりかえる福岡市博物館の思い出 エッセー まるい さん

 自分は福岡市内在住ではないのに、この博物館の事は「市博」とまるで自分の市の博物館のように言ってしまいますが、もうまもなくでしばしのお別れとの事。
 本当に寂しい限りですが、来年の開館を心待ちにしております!

 私の市博での思い出といえば、相当数の特別展や常設展を見に来ましたが(『侍展』本当に素晴らしかったです…ありがとうございました!!)忘れられないのは、2012年の特別展『能のかたち』でのとある能面との出会いです。

 なぜその特別展を見に行こうと思ったのかは、もう思い出せません。多分、歌舞伎は好きだけど能は知らないし良い機会かな、くらいの軽い気持ちだったのでしょう。なんせこの特別展に行くまでは、かの有名な般若が女性面であることも知りませんでした。


 そのくらい、知らない・わからないのを良い事に、能面を見て自分がどんな感情を受け取るかを考え、その答え合わせで説明を読む、という楽しみ方をしながら展示を見進めていたのですが、初めて、はっきりと言葉で感情を受け取った能面がありました。
 「もうダメ」
 と言ってると感じた、そしてそれが正解だったその面は、この市博所蔵の生成です。
 生涯でただ一度きりの、訪れてしまったその一瞬を、何も知らない者にもあんなにも的確に熾烈にわからせる、生成の面。


 彼女に出会ってから、能面とは彼女ほどの感情を持ち、表し、届ける…というかぶつけてくるものなんだと知ってから、私は能面沼に嵌まりました。

 あれから色々見たり調べたりで、生成の面も複数ある事を知りましたが、私の推し面はやはり、この市博の生成です。


 「能のかたち」展の図録と市博の能面クリアファイルはいくつも持ってます。推しの生写真みたいな感覚で、宝物です。


 新生市博になったらいつかまた、こちらの秘蔵っ子の生成ちゃんに会わせてくださいね。


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